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悪役令嬢は死ぬことにした  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
 

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24/122

今だわ!

 続いては障害飛越ショージャンピング


 そのためのエリアが用意されており、馬術教官とレイモンド達は話し、バーの高さの調整が行われる。


「話し合いの結果、今回は中級レベルの高さにあわせ、バーは1.2メートルから1.3メートルの範囲で調整します」


 レイモンドのこの言葉に、アンジェリーナ王女は思わず声を上げる。


「1.3メートル! それは上級者向けの高さでは!? そのマークは……」


 レイモンドは中級レベルというが、その高さは競技大会で言うなら上位者向け。成績上位者が成功する高さだ。


 マークは先ほどの馬術で基本をきっちり押さえるレベルだった。障害飛越で1.2メートルから1.3メートルを超えられるのかと言うと……。


 ただ、競う相手がレイモンドとキルリル皇太子なのだ。この二人の実力に合わせたら、1.4メートルから1.6メートルの高さになるだろう。よって1.3メートルという高さ。レイモンドとキルリル皇太子からすると、レベルを落とした高さになる。マークにとってはチャレンジとなる高さだったが。


 それはマーク自身が一番よく分かっているようだ。彼はキリッとした表情で口を開く。


「アンジェリーナ王女様、心配いただき、ありがとうございます。今回は自分にとっても愛馬にとっても、チャレンジになるでしょう。それでも挑む必要がある戦いだと思います」


 マークの力強い声に、アンジェリーナ王女は息を呑む。インテリ枠ではあるが、それでもマークは攻略対象の男子の一人。その挑戦心に胸が熱くなる。


「本人もこう言っているので、競技を始めるのでどうですか?」


 キルリル皇太子の言葉に、マーク本人も力強く頷き、レイモンドも応じた。馬術教官も「そうしますか」と応じ、アンジェリーナ王女を見る。


「……分かりました。マーク、無茶はダメよ」

「勿論ですよ、王女様」


 こうしてこの場所が初めてとなるキルリル皇太子がコースを下見。それが終わると、今度はレイモンドからスタートとなる。


 今回は正式な競技ではないので、三つの障害に挑む。


 まずは垂直障害。高さは1.2メートル。


「これは跳躍力ですよね、お義姉様」


「そうね。バーを落とさずに飛ぶことが重要。触れても減点にはならないから」


「減点されるのは時間ですよね。みんなタイムロスを防ぐため、ギリギリの高さを飛ぶ」


「それで接触してバーが落ちたら元も子もない。時間とのせめぎ合いよね」


 アンジェリーナ王女とそんな話をしているうちに、レイモンドは位置につき、馬を走らせ始めた。


 その走りは実に軽やか。日々の練習で走り慣れ、感覚も完璧なのだろう。


 バーを認識した馬の反応を見て、レイモンドが手綱を少し緩めた。ここから先は、馬の感性を尊重することが大事になる。騎手は踏み切りのタイミングを、愛馬と共に合わせることが求められるのだ。


 今だわ!


 踏み込んだ瞬間、馬の前脚が綺麗に持ち上がった。

 後ろ脚の弾み具合もいい!

 バネのようにしなやかに馬の後ろ脚が動き、騎乗しているレイモンドはその動きに合わせる。さらにレイモンドがやや前傾姿勢になり、絶妙なバランスをとったところで……。


「お見事」「完璧ですね」


 馬術教官がそう感想をもらすと同時に、馬の肢はバーギリギリを見事に超えて行く。


 タイムロスもなし。バーへの接触もない。

 着地も無問題。


 しかしここで安堵できても、終わりではない。


 このまま次の障害に挑むことになるのだ。つまり連続で障害に挑戦するコンビネーション障害と、次の障害であるオクサー障害が同時進行になる。


 オクサー障害は高跳びと幅跳びの合わせ技を披露するようなもの。分かりやすく表現するなら、垂直障害が二つ並んでいるような状態。


 馬は高く飛びつつ、遠くへ飛ぶ必要があるので、垂直障害より当然だが、難易度が上がるのだ。しかもコンビネーション障害となるので、垂直障害が終わったと思ったら、すぐに次のオクサー障害が始まる。


「オクサー障害は、手前と奥のバーの高さは共に1.3メートル。でも二つ合わせると幅は1.7メートル。地面の蹴りが重要ですよね」


 そう言いながら、アンジェリーナ王女の目線がレイモンドの愛馬を捉える。私はアンジェリーナ王女の言葉を聞きながら、馬の動きを観察。


「蹴りは……力強いわ。推進力は十分でている」


 観察の結果、踏み込みに問題なしと判断する。

 だがオクサー障害はここからが勝負。


 垂直障害と違い、オクサー障害はギリギリの跳躍ではなく、余裕のあるフォームが求められる。きちんと馬は前脚を畳み、後ろ脚は伸ばし、バーへ当たらないように、蹴らないよう注意する必要があった。


「頂点がちゃんと中央に来ましたね」


「ええ。踏切のタイミングは早過ぎず、遅過ぎず、理想的なもの。その結果が美しいフォームを実現しています」


 馬術教官達の言う通り。レイモンドの愛馬は、二つ並んだ障害の丁度真ん中で、最も高くジャンプできていた。その結果、綺麗な姿勢でバーを越え、着地の体勢に入っている。


「ここでバランスを崩す馬もいますよね」


 アンジェリーナ王女の言葉に頷くも、レイモンドの愛馬にその心配は不要だった。


「王太子殿下の姿勢も完璧なので、馬の動きを邪魔することもない」


「いい着地でしたね。衝撃の吸収も上手かったです」


 馬術教官達が思わず拍手を送る。

 つまりレイモンドは障害飛越(ショージャンピング)を、文句なしの完成度でクリアした。

お読みいただきありがとうございます!

本日もよろしくお願いいたします☆彡

次話は19時頃公開予定です~

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