出発
「スーフェン、準備はいいか?」
「はい!いつでも大丈夫です!」
「よし、じゃあ行こう!」
パーティ結成から翌朝の7時。俺とスーフェンは薬草採取のクエストを受けていた。朝はモンスターの活動も落ち着いている。モンスターの活動が活発になる昼前には街に帰りたい。
「ところでスーフェン、その杖は?」
スーフェンは身長の2倍はある明らかに小さい子に持たせるようなものでは無い大きい杖を持っていた。
「この杖はですね、大家さんが街の外に出るなら持っていきなさいって渡してくれたんです」
ここでお母さんが出てこない事にスーフェンの生活状況を少し察したがそこはあえて突っ込まなかった。
家族が冒険者で死んだとか、冒険者になる為に家族の元を離れるとかよく聞く話だ。
「しかしその大家さんもスーフェンにそんな大きい杖を持たせるなんて心配性なのか?杖の大きさが強さに関係ないって聞くけどどうなんだろ」
俺は魔法を使えるわけじゃないから全く分からない。前居たパーティの魔法職の人に聞いただけだ。もしかしたら杖が小さいやつ子供用のより大きい大人用の杖の方が魔法の威力が出るとかあるのだろうか?
「杖本体に特別な能力が無いなら、杖が小さくても大きくても本人の魔力次第って聞いてます」
「えぇ……じゃあでかいけどただ重いだけって事?その杖俺が持とうか?」
戦闘をするつもりは無いから俺が持ってても大丈夫だろう。
「いえ、この杖見た目以上に軽いので大丈夫です!」
「ならいいけど。重くなったら持ってあげるから言ってくれ」
「はい!ありがとうこざいます!」
ニコニコと笑って言ってくれるスーフェンを見て心が洗われるようだ。今までは荷物持ちとして当たり前のように人の荷物を持っていた俺にとってありがとうって言葉自体が懐かしい響きだった。
◇◇◇◇
「よし、モンスターに会わずに着いた……。スーフェン大丈夫?」
「は、はいぃ……。なんとか……」
スーフェンの息が荒くなっている。モンスターに遭遇しないよう、他の冒険者が行くような道とは別の道を通って行ったからだ。人が踏みなれた道じゃない所を通ったから、体力的にスーフェンにはきつかったかもしれない。
「ここはモンスターが来ないからここで一旦休憩しよう」
「は、はい……」
スーフェンは息を整えると、バックからブルーシートを出した。
「よいしょ、よいしょ。ふぅ……タンザさんもどうぞ座って下さい!」
「あ、ありがとう」
採取クエストに来ているはずなのに、まるでピクニックに来てるみたいだった。
前回から更新が遅れてしまいました……!
また更新出来るよう頑張ります