轢き逃げ
僕にも両親はいた。
父さんは随分前に他に好きな人が出来たと言って僕達から離れて行った。
そしてその人と結婚して女の子が生まれたそうだ。
その奥さんと会ったことのない妹はもう亡くなっている。
その位迄の事は知っているが、それ以降父さんとは音信が途絶えて今は何処にいるかは知らない。
僕は母さんと暮らしていたが母さんも亡くなった。
僕は長年母さんと暮らした家を売った後、少しずつ南に移動しながら昨日F市に辿り着いた。H駅に近いホテルに泊まっている。
僕の妹はF市で亡くなり、M区の墓地で眠っているそうだ。
僕は朝早く起きて墓参りに出掛けた。
墓地は、小さい山の頂上にある。
バスを降りて歩いていると、少し前の方をランドセルを背負った小学生の女の子が歩いていた。
すると白いライトバンが凄いスピードで後ろから走ってきて小学生を轢いた。
そして走り去った。
女の子に駆け寄るともう亡くなっていた。
僕は全身の力を込めて時間を巻き戻し、女の子を抱き上げて宙に浮かんだ。
その間に車は走り去った。
地面に降りて、びっくりしている女の子の記憶を消そうとしていると白いライトバンが戻ってきて又こっちに向かってきた。
事故ではなかったのだ!故意に引こうとしている。
再び女の子を抱き上げて宙に浮かんだら車は反対方向に走り去った。
僕は女の子の記憶を消し、自分の姿を消してライトバンの中にテレポートした。
又女の子の所に来ないか見張るためだ。
運転席には40代位の男がいた。
車は郊外の工場で止まった。
男は工場に入っていった。
僕は姿を消したままついて行った。
男は皆に社長と呼ばれていた。
僕はそこで時間を進めて夜に行き、又車の後ろの席に乗り、男を待った。
車は一軒家で止まり、男は入って行った。
表札には南原と書かれてあった。
「お帰り。」
奥さんらしき人と女の子の声がした。
姿を消したまま付いていくと、何と女の子は男が殺そうとした子だった。
男が食卓につくと、奥さんが料理を並べて女の子も座った。食べながら男が言った。
「父さん今朝小学校の方に用事があったから望が出た後車で走ったんだけど望いなかったよね。」
「まさか。今日ちゃんと学校に行ったよ。」
「うーん、おかしいなあ。」
食事が終わり男が寝室に行ったので僕は姿を現した。
「なっ、何だね君は。
何処から入って来たんだ。」
「自分の娘を何故殺すのだ。」
「何でその事を知っているのだ。
誰にも話してないのに。」
「俺は超能力者なんだ。」
「嘘を付け。」
「そんな事はとうでもいい。
何故自分の娘を殺そうとするのだ。」
「保険金を貰うためだ。」
「何だって!」
「仕方ないのだ。
お金が無ければもう工場が立ち行かない。
このままじゃ一家心中するしかない。
結局あの子も死ななければならない。」
「嘘をつけ。
お前は自分が楽になりたいだけだ。
あの子を又殺そうとすると必ず俺が現れて阻止するからな。」
そう言って僕は立ち去った。
あれだけ言えば大丈夫だろう。
次の日又墓参りに行った。
墓の前で6歳位の男の子が先に来ていて、墓の掃除をしていた。「あの………。」「ええ。」
僕達は何も言わなくても分かり合えた。
僕は手を合わせた後言った。
「休憩所に行こうか。」「はい。」
墓石を見たら、房子享年108才、と書かれていた。
僕達は休憩所に入り、紙コップに出るタイプの自動販売機の前に立った。
「ジュースでいい?」「はい。」
その子にジュースを、自分には珈琲を買って椅子に座った。
テーブルを挟んでその子も座った。
「あそこに眠っているのは君のお母さん?」
「はい、長生きではあったけど不自然な程では無かったので助かりました。
ただ若く見えるとよく人から驚かれていましたが。」「僕の妹にあたる人だよ。」
「という事は僕のおじさんになるのですね。」
「うん。君のお父さんは普通の人だったの。」
「はい。」




