『ハンター』★★★★★☆☆
海で、仲間と話をしていた。
「う、不覚にも嘔吐してしまった……砂陰にウツボが居たとは。意表を突かれたよ」
「仕方ない。お前は、昔から、そういう体質だ」
「……全精力で回避したから、空腹だ」
仲間は、警戒しながら再び岩場に潜る。獲物を得るために。これが成功しなくては、生活が出来ない。海では常に、ハンターであり、また、襲われることもある。これは、命懸けのやり取りだ。
(カニだ……コイツを頂こう)
仲間が、囲い込むためにジェスチャーをした。そう。コイツはグルメなんだ。多くの人が羨ましいだろう。しかし、そううまくは行かない。
――――シャアアア!
「ぐああ!」
仲間は、突然現れたサメに噛みつかれて、心臓に致命傷を負った。吐きながらこちらに逃げてくる。巻き込まれた。猛スピードで逃げる。サメは気が散ったのか、追ってこない。
「はぁ……はぁ……なんとか巻いたな」
「大丈夫か。お前。あと一回しか心臓もたないぞ」
「この頭脳で、今後のことを思案する」
ボロボロになっても、冷静でいられるコイツは、凄いなぁ。なんて思っていたら、何かの糸が、足や胴に絡みついた。間違いない。
「引き上げられる!」
様々な魚たちが引き寄せられて、冷たい船の上に投げ出される。人間たちは、それぞれに言った。
「今日はまぁまぁだな。このタコは、餌にしよう」
「そうだなぁ。こっちのタコは、活きが良い。高く売れるぞ」
本物のハンターは、残酷だな。
諦めそうになった時、仲間は墨を吐いた。最後の抵抗。人間の手が黒く染まる。格好いいと思ったから、真似をした。
きっと市場に並ぶんだろうな。様々な海の生き物たちもそう言っていた。市場がどんな場所かは知らない。しかし、ハンターに掴まるというのは『死』と同じ。覚悟しなければ。
……もし、生まれ変われるとしたら、何になろうか。
(あのお日様みたいにキラキラになりたいな)
なんて思うのだった。
◇
第十八弾は、ちょっと悲しい『タコたちの話』です。
少しストーリー性を持たせました。今までの技術の複合版です。
数を誤魔化したり、主人公の存在をぼかしたりと。ハッピーエンドにしたかったのですが……バッドエンドになってしまいました。
この作品が一番文字数が多くて、物語性があります。字数が多い分、無駄な描写もあります。しかし、結構うまく行っている気がします。
事前情報として、タコの心臓は三つある。また、タコの脳は八つある=『賢い』
これと『仲間』という言葉をかけて、『イカの存在』をちらつかせたのですが、ややこしくなったのでカットしました。
キャラ付けがちょっと無理矢理になってしまいましたね。問題は、この情報が読者に伝わっているかどうかです。
私だけが納得しても意味がない。読者が『心の動き』を感じたかが一番の問題です。
まだ、そこまでではないと思います。でも。確実に『読み物』にはなって来ていますね。この調子で、叙述トリックを仕掛けつつ、読者を感動させたいところです。