7話 エルフママの胎内授業ver.妹
「リーヴィア、リーヴェン、出てきてくれる?」
……ズボッズボッ
「お呼びですか、王子殿下。」
「お呼びですか、殿下。」
「ママが第二子の魂を呼び寄せたから、二人を紹介しようと思ってね。こっちの大きな一枚の葉っぱが生えるのがリーヴィア、二枚の細い葉っぱが生えてるのがリーヴェン。二人ともドライアドって種族だよ。」
「かわいい!え、頭に葉っぱ生えてるのかわいい!」
「はじめまして、王女殿下。」
「はじめまして、殿下。」
「はじめまして!綺麗な葉っぱだね!転生したら触っても良い?」
「ふふん、毎日手入れしてますから。」
「王女殿下は見る目があるので触っても良いですよ。」
「本当!?うわー楽しみだなあ!」
「あ、俺も触っても良い?」
「王子殿下はダメです。」
「そうです。そんな軽い葉っぱじゃないです。」
「ええ、なんでダメなの?」
「王子殿下は葉っぱを褒めてくれた事ないです。」
「葉っぱへの愛が足りないです。」
「あーお兄ちゃんひどい。葉っぱ心が分かってないんだ。」
「そうなのです。葉っぱの心は繊細なのです。」
「乙女のように慈しむと良いです。」
「わ、わかった。これからはもっと植物について詳しくなるよ。」
「お兄ちゃん、詳しくなるとかそういう事じゃないんだよ。」
「そうです。もっと心から葉っぱを愛するのです。」
「そこらの葉っぱと一緒にしないでもらいたいです。」
「ええ……。」
めんどくせえ!
葉っぱ心ってなんだよ!
そして妹はなぜ葉っぱ心がわかるんだよ!
お前だってかわいいって褒めただけだろ!
「ま、まあ今日のところは葉っぱの事は置いておいて……。」
「あ、逃げた。」
「葉っぱを置いとくなんて、やっぱり愛がないです。」
「王子殿下は葉っぱ心がわからないです。」
「置いといて!ママたちの話が終わる前にご飯作るから、二人とも手伝って。」
「仕方ないです。」
「今日のところは許してやるです。」
なんかドライアド二人の当たり強くなってない?
葉っぱ褒めてなかったのそんなに良くなかったの?
二人にはちゃんと感謝を伝えてたはずだけど、そんな事より葉っぱを褒めて欲しかったのか。
む、難しいぞ異世界コミュニケーション。
「えー!異世界のご飯!楽しみ!」
「妹よ、先に言っとくとお前は食べられないぞ。」
「えっ……なんで?」
「なんでってそりゃあ、食べる身体がないだろ?」
「そうだった……。」
「まあ、俺も通った道だ。頑張って耐えてくれ。」
今日はパパがカモンベビーを獲ってきてくれたから、鴨料理だな。
鴨料理って何があるんだろ。
蕎麦と鍋とローストくらいしか分かんないや。
「なあ妹や、今日は鴨料理なんだが、蕎麦と鍋とロースト以外にどんな料理があるか知ってるか?」
「さあ?鴨なんて食べた事ないし。でも鳥なんだから唐揚げにしても美味しいんじゃない?」
「じゃあ唐揚げも作るか。包丁を使うのは任せるよ二人とも。一歳の体じゃ上手く扱えないからな。」
「お任せください。私は鴨肉のサラダが食べたいです。」
「私は唐揚げのサラダが食べたいです。」
じゃあ俺は盛り付けとか、この身体で出来ることをしようかな。
そうして一通りの料理が出来た頃。
「あ、おかえりママ。お説教は終わった?」
「うぅ……。終わったあ……。」
「ふふふ、アンのお腹が鳴ったからね。僕もお腹が空いたし、一旦お開きだ。」
「え!まだ続くの!?」
「それは、君の反省次第かな。」
「反省してるってばー!」
やれやれ、ママはちょっと頼りないかもしれない。
パパの落ち着きを見習ってほしいね。
「はい、ママ。妹をお腹に戻してあげて。」
俺は手に持っていた魂の入った籠をママに手渡した。
「娘ちゃんおかえりい。ママを慰めてー。」
「ママ大丈夫ですよー。だから元気なアタシを産んでくださいね。」
「任せなさい!ババーンと産んであげるわ!」
そんな効果音で産まれたら面白いな。
「じゃあとりあえずご飯食べようよママ。」
「そうね!いただきます!」
「「「「いただきます。」」」」
うーん鴨肉のこの独特の風味がうめー!
魔物だからか、前世のより味が強くて、唐揚げにしても味が飛んでないね。
そして鴨の出汁が美味すぎ、鍋美味すぎ、ご飯が進むわ。
いやあ料理が美味しいのが本当最高だよな。
米がなかったら転生拒否してたかもしれないけど、エルフの国は米が主食らしいし、最高だよな。
やっぱ米を食べなきゃ生きていけないよ。
「ごちそうさまでした!」
「いやあ今日も美味しかったねえ。」
「美味しくてアレイクスのお説教も吹き飛んじゃったわ!」
「ああ、アンはまだお説教が聞きたいんだね。」
「あっ、ちが、お説教は残ってるわよ。その、お説教の疲れが飛んだっていう意味で、その……。」
「ね、ねえママ!アタシ聞きたいことがあるんだけど!」
「な、なあに娘ちゃん!」
「え、えーとね。パパにはツノと尻尾が生えてるけど、エルフじゃないの?」
「僕の種族はドラゴンだよ。今は人化してて、本来の姿はこっち。」
パパが光り輝いて、元の大きなドラゴンの身体に戻った。
やっぱ本来のパパかっこいいよなあ。
人間の姿もスタイル良くてイケメンだけど、ドラゴンのかっこよさは別格だよな。
「うわーかっこいい!そ、そのお姿が、パパの本来の姿なんですね!飛べるんですか!?」
「もちろん飛べるよ。君が産まれたら一緒に空を飛ぼうか。」
「私も飛べるんですか!?」
「魔法を練習すれば飛べるようになるよ。僕の血が濃く出れば、翼で飛べるかもしれないね。」
「うわあ!うわあ!アタシドラゴンの翼で空を飛びたいです!ドラゴンになれードラゴンになれー!」
ドラゴンの翼で飛ぶのは確かにかっこいいよな。
でも魔法で飛ぶのも捨てがたいし、迷うな。
「ご飯も食べたし、みんなでお風呂に入って今日は寝ましょうか。」
「はーい。」
それからもいくつか妹の質問に答えて、夜は更けていった。