55話 月面都市へ入場!
月ウサギの皆さんと餅つき大会をした後、彼らに別れを告げて月面都市の透明なドームの前に戻ってきた。
彼らはまだまだ餅つき大会を続行するそうで、今も遠くからぺったんぺったんガキンガキンと餅を搗く音が聞こえてくる。
ドームから蒲鉾のような形のトンネルが飛び出ていて、そこが都市への入り口になっていた。
トンネルは重厚な門で閉ざされている。
ルスローさんが門に触れて魔力を流すと、魔法陣と共にモニターが浮かび上がった。
モニターには見知らぬエルフが映っていて、ルスローさんはその人物に向かって話しかける。
「私は宰相のルスローです。こちらの方々はバーベイン魔法国のグロリオーサ王子とトーリア王女、その従者のドライアド二名。確認をお願いします。」
「ルスロー宰相の確認が取れました。お一人ずつ確認致します、お顔と魔力をご提示ください。」
どうやらモニターに映る人物は門番だったらしい。
「お二人とも、門に手を添えて魔力を流してください。顔は、魔法陣のこの辺がカメラになってますので、この正面で。」
ルスローさんの指示で俺たちも顔と魔力を確認されてていく。
「確認が完了しました。門を開けますので、離れてお待ちください。」
門の一部が開いて、ルスローさんを先頭に門を潜り抜ける。
その向こうにもまた大きな門があって、二重扉になっていた。
二つ目の門を抜けると、ついに月面都市に入場だ。
「ドームの中は空気がありますから、もうベストを脱いでも大丈夫ですよ。」
ルスローさんは言い終わらない内に自分のベストのボタンを外していく。お腹が苦しかったんだろう。
俺もボタンを外しつつ、街並みを見渡した。
「うおー!SFじゃん!すげー!」
そんな小学生並みの感想を抱いてしまうくらいには、SFという感じだった。
ドームに囲まれた都市!ツルツルした道路と建物!白黒の配色!
これぞSFといった街並みだった。
全体的に綺麗過ぎなくらいで、例えば洗濯物が干してあったり、道端に露天が出ていたりというような、生活感のようなものは一切見られない。
それどころか、街路樹はさることながら雑草一本すら無く、非常に無機質な印象を受ける。
だが、それこそがSFっぽさを醸し出し、ここが月だと実感させてくれるように思う。
「綺麗な街だね。新宿の都庁の周りが100年くらい経ったらこうなるかな?」
「あー確かにそうかもな。」
外からも見えていた近未来的な高層ビルが立ち並ぶが、道幅が広いので閉塞感はない。
そういう点では、前世で例えると都庁前が近いかもしれないな。
そんな風にトーリアと感想を言い合っていると、ドームの中心の方から一人のエルフが飛んできた。
比喩ではなく、文字通り飛行魔法でぶっ飛んできた。
「グローウ!トーリアー!」
と叫びながら、凄い勢いで近づいてくる。
「え、な、誰!?とりあえず障壁!」
俺は咄嗟に魔法障壁を展開した。
飛んできたエルフは、バァン!と音を立てて頭から障壁に激突し、変顔を晒しながらずり落ちていく。
顔は潰れてるけど、エルフの中でも若くて綺麗な顔をした人だ。
半ば意識を手放している彼を、トーリアが首根っこを掴んで持ち上げた。トーリアの方が背が低いから、彼の足は引き摺られているが。
「誰?この人?」
「誰だろうな?俺たちの名前を呼んでたけど。」
俺たちは有名人だから、名前が知られていても不思議ではないが、こんな風に近づいてくる人は今まで居なかった。
王都のファンの人たちはああ見えて民度が高かったんだなと再確認する。
すると、ルスローさんがため息を吐きながら、彼に話しかけた。
「はあ……何をしているのですか、ゴンフレーナ様。気絶してる場合ですか。起きてください。」
「え、ゴンフレーナって……」
「ええそうです。この方がゴンフレーナ様。陛下のお父様で、お二人のお祖父様です。」
「「ええええ!!!」」
これお祖父ちゃんだったの!?
おもっきり障壁にぶつけちゃったじゃん!
トーリアも吃驚して、首根っこを掴んでいた手を離してしまい、お祖父ちゃんが再び地面に叩きつけられた。
「んがっ!!」
だが、その衝撃で目が覚めたようだ。
「お目覚めですか、ゴンフレーナ様。」
「んあ?おお、ルスローか、久しぶりじゃな!んでそっちは……おお!我が孫よ!」
お祖父ちゃんのゴンフレーナさんは、俺たちの顔を見るなりまた飛びついてきた。
もう知らない人ではないので障壁は張らなかったが、急に来られると吃驚するからやめて欲しい。
「いやあ早く会いたかったのじゃ!」
「えっと、初めまして。確認ですけど、あなたが本当に俺たちのお祖父様なんですか?」
「そうじゃ!僕……じゃなかった、儂がゴンフレーナじゃ!」
「初めましてお祖父様。アタシはトーリアです!」
「知っているぞ。じゃが、お祖父様などと堅苦しく呼ぶでない。儂の事はじいじと呼んで欲しいのう。」
「分かった!アタシもじいじって呼ぶ方が好きだよ、じいじ。」
「おお、おお!もう一回呼んでくれるか?」
「じいじ!」
「おおおお!可愛いのうトーリア!孫が可愛いというのは本当じゃな!」
お祖父ちゃん、もといじいじが、トーリアの頭やほっぺたを撫でくりまわしている。
しかし、じいじとは言うが、彼自身の見た目が若過ぎて祖父と孫というより、兄妹くらいに見える。
エルフは皆20代くらいの見た目のまま歳を取るのだが、じいじは10代後半、それも16歳くらいに見える。
童顔、ということなのだろうか。
それに、身長もエルフにしては低めで、俺より少し高いくらいだから160センチといったところか。
それらが合わさって、どことなくショタみがある。
実際には1000年以上生きているはずなのだが。
そんな人が「じいじと呼んで欲しいのじゃ」とか言ってるものから、違和感が凄い。
子供がふざけて言っているようにしか見えない。
とそこへ、また1人の女性エルフがやってきた。今度は安全運転の飛行魔法で。
「ゴンフレーナ様、早過ぎです。街の人にぶつかったらどうするんですか。」
「だって早く孫に会いたいじゃろ。」
「気持ちはわかりますけど、それはそれです。」
「まあ誰とも事故ってないし、いいじゃろ!」
「良くありません!」
「う……すまん。次からは気をつけるのじゃ……」
彼女は来て早々にじいじを叱りつけた。
叱られたじいじは、ルスローさんの影に隠れるようにして小さくなった。
「ご挨拶が遅れました。私はアマランス。ゴンフレーナ様の妻です。」
「あ、初めまして。えーと、お祖母様。」
「ふふ、出来ればばあばと呼んで欲しいですね。この人はじいじと呼ばせているのでしょう?」
「あ、じゃあばあば。」
「はい、ばあばです。」
俺がばあばと呼ぶと、彼女は朗らかに笑う。
落ち着いていて、全身から優しさが滲むような、そんな雰囲気の女性だ。
子供のようなじいじと比べると、非常に上品な大人の女性といった印象だ。
「なんじゃ、儂の事は相変わらず様付けで呼ぶ癖に、孫にはばあばと呼ばせるのか。」
じいじが口を尖らせて、ルスローさんから顔だけを出しつつそんな事を口にする。
「それは癖ですのでご容赦くださいませ。後から変えるのは難しいのです。」
「分かってるよ。だから孫には最初からじいじと呼んで欲しいんじゃ。」
「ええ、私もです。」
そして、ばあばがこちらに向き直る。
「立ち話もなんですから、私たちの屋敷で話しましょうか。どうぞこちらに。」
彼女はお淑やかに一礼して、ドームの中心部へと歩き出した。
すみません、全く筆が乗らなくて間が空いてしまいました。
じいじとばあばのキャラクターが中々固まらなかったです。
毎日や隔日で投稿している方々は凄いですね。自分はまだまだ力不足ですが、いずれそうなりたいものです。




