52話 月に着きました
グロウ達が無事月に着き、作者も一息つきました。なんちゃって。
「おー!あれが月面都市!」
カードゲームをして時間を潰したあと、晩御飯を食べてぐっすり寝て、目が覚めたら着陸まで30分というタイミングだった。
アナウンスで目覚めた俺は、まだ眠っていたトーリアを引っ張ってきて、窓から月面都市を見下ろした。
「うーん……なんで起こすのお兄ちゃん……」
「もう到着するからだよ。見ろよ、SFだぞ!未来だぞ!」
「んぅ……?おぉ、スノードームみたい。雪降ってないけど」
これから行く月面都市は、半球状の透明なドームに包まれていた。
さらに、マトリョシカのようにドームの中にドームがあり、全部で三層に分かれている。
人口が増えるにつれて二層目三層目のドームを外側に建造したのだろう。
都市の中心部は公園で、その周りに二階建てほどの小さな建物が幾つか並ぶ程度だ。
外周に向かうほど背が高くて大きな建物に変わっているのが見てとれる。
しかし、宇宙から見下ろしていることも相まって、トーリアが言ったように雪が舞わないスノードームにも見える。
まるでショーケースに囲まれたジオラマ模型だ。
すると、「ポーン」と音が鳴り、室内にアナウンスが響く。
「当シャトルはこれより着陸態勢に入ります。ご搭乗の皆様は、着席してお待ちください。」
アナウンスに従い、俺たちは椅子に座る。
離陸した時と同じように着陸の様子が壁に映し出されたので、俺はそれを眺めていた。
「あふあふ……あっふ……」
「ちょ、トーリア、着陸するんだからもう少し起きとけよ。」
「だって、起きて2時間くらいは眠いじゃん。」
「まあそれは分かる。」
そのまま、特に何か問題が起こるということもなく、シャトルは月に着陸した。
こうして無事に無事過ぎる旅を終えてしまうと、案外普通の旅だったなと思ってしまう。
新幹線や飛行機が快適過ぎて、在来線で移動した方が旅してる感がある、みたいなアレだ。
まあ、無重力空間は宇宙ならではだから楽しかったけど。
でも、シャトルの外はもう別世界なのだ。
それも国や気候が違うなんてものじゃなく、星が違うのだ。オラわくわくしてきた!
「ご搭乗の皆様は、全環境適応ベストをご着用の上、シャトルをお降りください。」
俺はベストのボタンを締め、結界の生成を確認すると、 シャトルを出た。
外に出てまず目に入ったのは、月面都市の威容だった。
空から見た時はスノードームなんて揶揄したが、近くで見ると想像よりずっと巨大で、本当に街だ。
中には前世で見たよりも近未来的な高層ビルが等間隔で並び立つ。それでいて、あまり狭苦しくは感じない。
「凄いね、お兄ちゃん。……異世界なのに普通にビル建ってるよ。」
後半は小声で伝えてくれたが、俺も同じ気持ちだ。
俺たちの思い描く異世界は中世くらいで、城はあってもビルなんて存在しないからだ。
「よし、早速街を探検しようぜ!」
「そう言うと思ってたよ!早く行こ行こ!」
俺とトーリアはドームの入り口へ駆け出そうとしたのだが、ルスローさんに呼び止められてしまった。
「お待ちください殿下。まずは先住民にご挨拶して頂きます。」
「えーあいさつー?」
「また今度じゃだめー?」
「こういうものは最初に済ませておく方が良いのです。付いて来てください。」
「「はーい」」
ルスローさんが透明なドームに背を向けて歩き出してしまったので、俺たちもその背中を追う。
まあね、神社のお祭りとか行っても、最初に神様に挨拶しなさいって言われるしね。
挨拶さえ済ませてしまえばあとは自由だろうし、是非もない。
「あれ?てか、先住民って言いました?」
「はい、言いましたね。」
「え、つまり、月に元々住んでた人がいる?宇宙人ってことですか?」
「その通りですよ。」
「えええええ!!!宇宙人居るんですかこの世界!」
「宇宙人というと範囲が広過ぎましたね。月星人と呼ぶくらいが良いでしょうか。地球のご近所さんですよ。」
「いやいやいやご近所さんて!そうだろうけども!」
「ああそうだ、このイヤリングを付けておいてくださいね。」
俺たちを先導していたルスローさんが立ち止まり、振り返って小さな箱を渡してきた。
中に入っていたのは、小さな三日月のイヤリングで、見たところ超小型の魔道具であるらしい。
「これは陛下からお預かりした、月の言語を翻訳してくれる魔道具になります。今回は急な渡航だったので、月語の翻訳魔法をお教えする時間が取れませんでしたから。」
「おーなるほど。便利な魔道具があるんですねえ。」
俺たちは受け取ったイヤリングを付け、また歩き始める。
そのまま少し進むと舗装されたシャトル発着場を離れ、俺はついに月の大地を踏み締める。
すると、ベリルが隣で不満げな声を上げた。
「むう、月の土は固過ぎです。それに栄養も全然です。」
「これじゃ足が入っていかないですね。」
続けてベールもそんな独特な批評を口にする。
この辺は岩場になっているらしく、踏みしめても足跡が付くこともない。
「土が固いと、なんかダメなのか?」
「ダメダメです。僕たちはどこで休めば良いですか。」
「いえ、休むのはベッドでも構いませんが、足が入らないので転移が使えません。」
「ああ、あのズボッと出て来るやつね。」
ドライアドの転移は特殊で、地中深くで転移して、再び地上へと上がってくるのだ。
本来なら転移魔法は膨大な魔力を使うのだが、彼らの場合は魔力はあまり必要としない。
しかし制限はあるようで、地上でいきなり転移はできないし、海を越えて転移することもできないんだとか。
「なるほど、土が固いと大変なのね。」
「それに、大地の力も弱くないです?なんかこう、フワフワするです。」
「え、フワフワする?あー確かに。」
言われるまで気づかなかったが、一歩が大きいというか、体が跳ねる感じがする。
「これは月の重力が地球より小さいからだな。確か、地球の1/6くらいだったはずだ。」
「お兄ちゃんまさか今気づいたの?」
「え、トーリアは気づいてたのか?」
「当たり前でしょ。翼で分かるって。」
「僕も足で分かるです。」
「い、いやだってさっきまで無重力だったし、こんなもんだったかなと。それにあの月面都市見るのに夢中で……」
「鈍感だねお兄ちゃん。そんなんだから未だに飛行魔法下手くそなんだよ。」
「う、うるさいわい!」
でも確かに、1/6の重力って普通わかるだろ。
鈍感と言われても何も言い返せない。
「そろそろ着きますぞ。」
先頭を歩いていたルスローさんがそう言うが、目的地らしいものは何も見えない。
辺り一面灰色の大地で、建物はおろか宇宙人も見えない。
「どこに着くんですか?」
「えーと確かこの辺に……あ、あの岩の右に……」
少し不安になる動きをするルスローさんに付いて歩くと、地面に穴が開いていた。
人が一人通れるくらいの小さな洞穴で、階段のような段差が下まで続いている。
ルスローさんは足元の石ころを掴むと、穴の下に放り投げた。
それはカラコロと音を立てて転がっていき、暗い穴の奥に消えていった。
「何してるんですか?」
「今のは、地球で言うとチャイムを鳴らしたようなものです。」
「へー」
月星人たちは地下に住んでいるらしい。
地上には人が出入りする程度の穴が開いているのみで、その痕跡はほとんどない。
これならば、もしかしたら前世の月にも何かが住んでいる可能性があるな。
しばらくすると、暗い穴の下からヒタヒタと静かな足音な聞こえてきた。恐らくは裸足。
なんか急に怖くなって来たけど、変なやつじゃないよな?
グレイっていうんだっけ?宇宙人と言えばで出てくるタイプのやつ。
俺、あの黒くて大きな目が苦手なんだけど、あんなのじゃないよな?
ドキドキというよりはハラハラしながら待っていると、まず暗闇から出て来たのは白くて長い耳。
ついで現れたのは、白いショートヘア、白い肌の中性的な人の顔だった。黒くて大きな瞳をしているけどちゃんと白目もあって、かなり美人さんだ。
どこまでが服でどこからが体毛か分からないが、全体的に白くモフモフしていた。
「お久しぶりです、パルさん。皆さんお変わりありませんか?」
「ない。あなたはお腹が大きくなったね?」
「ははは、これは手厳しい。いや実は最近また美味しいものが増えましてな。またお召し上がりになりますか?」
「多分口に合わない。でも食べる。」
「そうおっしゃると思って、用意しています。」
「さすがルスロー、そのお腹は伊達じゃない。」
ルスローさんと、パルと呼ばれた人は、親しげに挨拶を交わしている。
どうやら先住民とはいい関係を築けているらしい。
「王子殿下、王女殿下、ご紹介します。この方が月に住んでいた、月ウサギという種族のパルさんです。」
「うん。よろしく。」
月に住んでいた月星人は、まるでウサギの獣人のような、可愛らしい姿をしていた。
今ちょうどフェスに宇宙人という選択肢がありますが、私はグレイタイプが怖いのでネッシーに投票しました。
サイヤ星とかデビルーク星とか、月ウサギみたいな愛嬌のある絵だったら宇宙人に入れてたと思います。
ネッシーはピー助とかAPEXのイメージなので可愛いですよね。




