46話 辞令
初クエストから一週間。
その間、何度かまた姉貴たちテトラード・ラッシュの面々とクエストを受けた。
そして今日は6人でショッピングだ。
今俺たちは王都の大通りを話しながら散策している。
「ねーねールカちゃんはどこの化粧水使ってるの?」
「なんだそれ?ルカはそんなの使ってないぞ。」
「え!お肌のお手入れとかしてないの?」
「なんだそれ?何もしてないぞ。」
「何もしてないのにこの肌……これが若さか。」
「トーリアもルカと同い年だぞ。」
今更だが、テトラード・ラッシュは四人とも女子だから、一緒にいると必然に美容やスイーツといった話題が多くなる。
冒険者だからといって全くの無頓着ではないのだ。
俺はスイーツならついていけるが、美容はついていけない。
なんて前世では言っていた事だろう。
しかし、転生してからはママがやたらうるさいので、化粧水くらいなら俺も分かるようになったのだ。
多分アイドルとかやってた名残なんだろうな。
「ふあぁ……化粧水を塗る時間があったら寝た方がお肌に良いよ。睡眠が一番の美容……スゥ……」
「リアンちゃんも何もしてないの!?エルフズルい!」
「いや、トーリアだって十分プニプニ子供肌じゃないか。何を気にしてるんだ。」
「あ!お兄ちゃん今プニプニって言ったー!アタシ動いてるから太ってないもん!」
「いや、そういう意味じゃなくてだな……」
「プニプニっていえば、ルカちゃんの頭はプニプニ柔らかいんだよ。」
「そうなの?」
「こ、こら!トーリアの頭を雑に触るな!これはエコロケーションに必要なプニプニだぞ!腹の脂肪と一緒にするな!」
「へえー」
話の流れで、一行の足は自然と化粧品や雑貨を売っているお店へと向かう。
「ここのお店は色々揃ってて楽しいんだよ!」
「ほお、トーリアはこんな所を見つけてたのか。」
店内を物色していると、化粧品のコーナーの前にたどり着く。
「あ、この月のマークのやつ、ママに言われて塗ってるやつだよな。」
「これ凄く良いよねー」
ラベルに月が描かれた、真っ白い容器が目立つシリーズだ。
「おお、さすが世界樹のお膝元だな。月光堂の化粧品を取り扱っているとは。」
「月光堂ってなに?姉貴。」
「なんだ、名前は知らなかったのか?この月のマークは月光堂のトレードマークだ。」
「それが世界樹と何の関係が?世界樹産なの?」
「月光堂はその名が示す通り、月に本社を構える化粧品メーカーだ。そしてここ世界樹の頂上から、月への交易ルートが確立されている。」
「へー世界樹から月に行けるんすか。」
「……お前、この国の王子なんだろう?なぜ私が教えているんだ。」
「え、いやーははは……」
ママの教育のお陰……いやママのせいですかね。
「まあそんな訳で、他の国では貴重なんだ。」
「へーそうなんすね。」
「そんなことより、グロウはいまひとつ敬語が抜け切らないな。」
「ああ、実は結構人見知りで。だから最初敬語で入っちゃうと抜くのが大変で……」
「ふむ、難儀するな。」
その後一通り見て周り、それぞれ気に入った品を買って店を出る。
会計のとき、舞花が何食わぬ顔でくまちゃんのぬいぐるみをレジに出していたのが可愛かった。
気に入ったのかと聞いてみると、「かわいい」とだけ返事してくれた。
酔っているときに聞いたらなんて答えてくれるのか、気になって仕方ない。
店を出ると、先頭を歩いていたトーリアが振り返った。
「ねえねえ!この後はうちに来ない?」
「トーリアのうちというと、王宮か?私たちみたいな冒険者が行って良いものか?」
「大丈夫でしょ!ね、お兄ちゃん!」
「問題ないと思うよ。」
「二人がそういうなら、お邪魔させて貰おうか。」
「ルカはお城も行ってみたいぞ!」
「あ、じゃあお城も案内してあげる!もうアタシの庭だからね!」
「おお!楽しみだぞ!」
という事で、次の目的地はお城となった。
城に着くとズボズボッと、ベリルとベールが地面から出てきて対応してくれる。
「おかえりなさいですグロウさま。」
「ああ、ただいま。みんなに紹介するよ。こっちが俺付きの従者のベリルで、あっちがトーリアの従者ベールだ。」
「ベリルです!」
「ベールです。」
二人がペコリと頭を下げると、頭の葉っぱも一緒に揺れる。
「そうだ!どうせならベリルたちに案内してもらおうか。」
「わかったです!」
「お任せください。」
城の案内を二人に任せ、まず向かったのは畑だった。ドライアドが転移するときに出入りするあの発着場の畑だ。
「いきなりここか……まあ二人らしいか。」
「ここを紹介せずしてどこを紹介するのです!」
「ここの畑の土は栄養豊富で、よく耕されてるからフカフカでいつまでも潜っていられるのです。」
「それに、グロウさまは前に一緒に畑に潜ってくれるって約束したです!」
そういえばそんな事を言った記憶がある。
「この畑は地中を泳ぐのも気持ちいいのですよ。」
「お母様からは、畑で泳いじゃいけませんって怒られるんですけど、つい泳ぎたくなっちゃうのです。」
お風呂で泳いじゃいけませんという言葉が、ドライアドの世界では畑に置き換わるらしい。
と、泳ぐという言葉に反応して、最も畑から遠い種族であろうルカが目を光らせた。
「ほう、いろんな水場で泳いできたルカだったが、畑は未体験だぞ!泳いでいいか?」
「もちろんです!一緒に泳ぐです!」
「怒られてでも手に入れなければならない体験があるのです!」
「よーし泳ぐぞー!」
ルカ、ベリル、ベールの三人は、フカフカの畑に向かって飛び込んだ。
そのまましばらく潜水ならぬ潜土をして、地中から顔を出した。
「本当に気持ちいいぞ!水とは違って独特な抵抗が癖になるな!」
「よく分かってるです、ルカさま!」
「様なんて付けなくていいぞ!もうベリルとベールは友達だぞ!」
「分かったです、ルカ!」
三人は早速仲良くなったらしい。
あんな楽しそうに遊んでいるのを見ていたら、俺も畑で泳いでみたくなったな。
「俺も入ってみよ。」
俺は土の中に足をねじ込んでみると、独特な抵抗はあるものの、すんなりと足が入っていく。
おお、確かに気持ちいいかもしれない。
土の中は意外に暖かくて、水よりも重みがあって、それが不思議と安心感を与えてくれる。
布団の中にいるような、お風呂に浸かっているような、そんな心地よさがある。
「グロウさま、顔がふにゃふにゃです。」
「いやあ、思ったより気持ち良くてな……」
「ですよね!グロウさまなら分かってくれると思ってたです!」
みんなで土浴を楽しんでいると、お城の方からママが歩いてきた。
「畑にいると思って来てみれば……何してるのみんな。」
「ママ、これ案外気持ちいいよ。」
「知ってるわよ。何年生きてると思ってるの。」
「それもそっか、千歳だもんね。」
「そうよ。まあそれはいいとして、二人にお使いを頼みたいの。」
「「えー今動きたくなーい。」」
「明日でいいわよ。これは公務だから、いろいろ準備があるからね。」
「げっ、公務……ついに王子としてのお仕事かあ。」
「まあそんな大した事じゃないから安心して。」
「公務でお使いって事は外交でしょ?何も習ってないのに無理だよ。」
「アタシも偉い人と友達になるのは自信ないなあ。」
「大丈夫。うちの国の管轄内だから。」
「まあ大丈夫なら行くけどさ。どこに行くの?」
行き先を尋ねると、ママは不適に笑って空を指差す。
「あなた達には、月に行ってもらうわ!」
「「月ぃ!?」」
月のマップのロードに時間がかかるので、一週間ほど更新をおやすみします。
訳 : ストックが尽きたのである程度溜まるまでお休みします。また、今後は毎日更新にこだわらず、ちゃんと作り込んでからの更新を心がけようと思います。なので、投稿頻度は落ちますがお付き合い頂ければ幸いに思います。




