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41話 テトラード・ラッシュ

「うん、やるじゃない。これにて試験は終了よ。」


カルネシアお姉さんが槍を指輪に戻したのを見て、俺も杖を指輪に仕舞った。


「これだけ出来れば、飛び級しちゃって良いでしょう。二人ともBランクの試験合格よ!」


「トーリアと違って俺は良いとこなしだった気がしますけど、合格で良いんですか?」


「何言ってるのよ。私の槍を受け止めておいて不合格なわけないでしょ?」


「障壁は穴を開けられて、俺は吹き飛びましたけど……」


「一般的な障壁だったら、そのまま術者のお腹に風穴開けてたわよ。グロウくんは下半身が繋がってるから合格!」


「そんな危ない技だったんですか!?風穴空いてたらどうするんですか!」


「そんときは魔法でくっつけるわよ。」


「そりゃあくっつくかもしれないですけど。えぇ……」


ざっくりしてんなあ、この人。これはママの妹だね。


「ちなみにBってどのくらいなんですか?」


「そうねえ、上から1、2……4番目ね!ほとんどのクエストを受けられるわよ。」


「へえ。1番はなんですか?」


「1番上はグランドマスター。王都みたいな大きな支部のギルマスがこれよ。2番目がマスター。王都のサブマスターとか、小さな支部のギルマスをすることが多いランクね。で、3番目がAランク。現場の最高位がここよ。」


「じゃあ現場の中では2番目なんですね。」


「そういうこと!沢山クエストこなしたら、そのうちAランクに昇格できるから頑張ってね!」


そうして話していると、受付嬢さんが俺たちのギルドカードを持ってきてくれた。


渡されたのは薄い木目がキレイな木製のカードだ。


「へえ、木のカードおしゃれですね。」


「ギルドカードは登録した支部ごとに素材が違うのよ。ここ王都は世界樹の端材を使ってるわ。」


「え!これ世界樹なんですか!?めっちゃ豪華じゃないっすか!」


「でしょう?私がギルマスになった時に変えたのよ。」


「太っ腹ですねえ。」


「ふふーん!でしょう?」


「じゃあ俺たちは依頼を見に行きますね。」


俺は受け取ったギルドカードを魔法ポーチに仕舞って、早速依頼を受けに行こうとした。


「あ、待って待って。紹介したい子たちが居るから。」


そう言ってカルネシアお姉さんが連れてきたのは四人の女性冒険者だ。


「彼女たちは四人組のパーティ『テトラード・ラッシュ』よ。ランクはCだけど、実力はB相当よ。歳が近いから仲良くなれると思うわ。」


カルネシアお姉さんが、連れてきた冒険者たちを一人ずつ紹介していく。


一人目は頭から三角形の猫耳が生えた獣人の女性だ。


髪は艶のある真っ直ぐな黒髪で、後ろで細いポニーテールにしている。

背は170センチといったところか。

服装は黒一色で、かなり軽装だ。冒険者というより女スパイといった方が似合っている。


「この子は黒豹の獣人のパン太ちゃんよ。このパーティのリーダーね。」


「お初にお目にかかります。パン太郎と申します。他の冒険者からはパン太や姉貴などと呼ばれてます。それとカルネシアさん、厳密には豹の獣人です。黒豹というのはただ全身の毛が黒いだけの豹なので。」


「あらそうだったの?ごめんね覚えとくわ。」


彼女のしなやかで引き締まった体躯は、確かに豹を思い起こさせる。


「パン太郎さんですか?」


「男の子みたいな名前だね!」


「ああ、獣人の名前は、他種族からすると男女逆の印象を受けるそうですね。男子に花などの美しい名前をつけ、女子に猛々しい名前をつける傾向があります。」


「へー面白いですね!」


二人目は耳が長くて金髪のエルフだ。


っていうかこの人、立ったまま寝てるぞ。


「この子はバレリアン。……って、おーい。バレリアン、起きてー」


「んにゃ……?あれ、カルネシア?ここどこ?」


「私だって一応王族なんだから、さんくらい付けなさいよね。ほら、この前話した新しい王子よ、挨拶して。」


「はーい……王子、王女、おはよう。私のことはリアンって呼んで。じゃあ私は二日くらい寝てるから……」


そう言ったっきり、彼女は立ったまま眠ってしまった。


おいおい、いくらエルフがよく眠る種族だからって、立ったまま二日も寝るなんて聞いたことないぞ。

立ったまま寝るだけなら、割と街で見かけるが。


「まあ、悪い子じゃないから仲良くしてあげて。」


「同じエルフだし仲良くなれますよ。」


「一緒に寝れば友達だから大丈夫!」


三人目は、おでこから一本の黒いツノが真っ直ぐ生えた赤っぽい髪の女性だ。


「この子は鬼族の舞花ちゃん。遠く魔大陸からやって来た子よ。」


「舞花だ。よろしく頼む。」


背は、俺と同じくらいだから160くらいか。

服装は和風で、ざんばらな髪と合わさって武士のようだ。


「この子は普段はちょっと口下手だけど、酔うと饒舌になる、かわいい子よ。」


「酒は好きだが、私はそんな饒舌になるか?」


「覚えてないの?」


「酒を飲んで記憶を無くしたことはないが……」


「自覚がないのね。じゃあ今度録画しといてあげるわ。」


四人目は、ショートボブの黒髪に、白のインナーカラーが鮮やかな、背の低い女の子だ。前髪に白いメッシュが二本入っているのも特徴的だ。


「この子はシャチの魚人のルカよ。歳はトーリアと同じ13歳だから話も合うんじゃないかしら?」


「ルカだぞ!よろしくな!王子!王女!」


ルカの服装はビキニを着ただけで、薄着なんてレベルじゃない。

しかもそんな服装より目立つのが、背中に背負っている大きなサーベルだ。

身長よりも大きくて、斜めに背負っても引き摺るギリギリの大きさだ。


「そのサーベルは指輪に仕舞ったりしないのか?」


「見せてた方がかっこいいだろ?ルカの背鰭の代わりだ!」


「確かに、武器を外に出しとくのもまたロマンだ。」


指輪から出すのもロマンだが、小さな子がデカい武器を背負うのもロマンだな。


「ねえ、そんな薄着で寒くないの?」


「寒くないぞ。海の中と比べたらむしろ暑いくらいだ。」


「へーそうなんだ。」


「それに、泳ぐ時に布があると邪魔だぞ。」


「あ、分かる。アタシも空を飛ぶ時に服がバタバタして邪魔なんだー」


「王女は空を泳げるのか!そういえば翼があるもんな!いいなー!」


トーリアとルカはもう仲良くなったみたいだ。


うんうん。トーリアに友達ができて、兄ちゃん嬉しいぞ。

転生してから同年代の子と会ったことなかったもんな。


まあ、前世を含めたらカカさんが同年代だが、他の人はそもそも桁が違うんだよなあ。


「初めてクエストを受ける冒険者には、先輩が同行する決まりだから、今日はこの6人で行ってきてね。」


「「はーい!」」


「よろしい!じゃあ早速、クエスト見繕ってらっしゃい!」


ということで、俺たち6人はギルド一階に場所を移し、クエストを見繕う。


「お二人はどんなクエストを受けたいですか?」


リーダーのパン太さんが丁寧に聞いてくれる。


「そうですね……美味しいやつが良いですね。」


「アタシも新しいお肉食べたい!」


「なるほど、そういう事でしたら、討伐系のクエストがよろしいでしょうか。」


俺とパン太さんは、Bランクの依頼が纏められた紙の束をペラペラと捲っていく。


それをトーリアとルカが横から覗き込んでいる。


「あ、お兄ちゃん。そのモーツァルトリって魔物、鳥っぽくて美味しそうじゃない?」


「これか?絵は鳥っぽいけど、どんな魔物なんだ?」


疑問を口にしてみると、パン太さんがこれまた丁寧に解説してくれる。


「その魔物は音楽を奏でている鳥です。大抵は貴族からの捕獲依頼ですので、食用ではありませんよ。」


「へえ、家に置いて演奏してもらうわけですか。」


そこへ、パン太さんの紙束を覗いていたルカが声を上げる。


「ルカはこのアナゴンダが食べたいぞ!」


「アナゴンダ?」


「アナゴンダは穴子と蛇が合体したような魔物で、美味な魔物ですよ。」


「おお!穴子ですか!」


「こいつは天ぷらが美味いぞ!」


「じゃあそいつにしますか!」


「分かりました。ではクエストを受注しに行きましょう。」


そしてパン太さんに連れられて、諸々の手続きの仕方を教えてもらった。


カウンターへ行き、受けるクエストを宣言して、参加する人の名前や帰る日付などを紙に記入するだけだが。


「では、今日はまだ時間がありますし、このまま森に入りましょうか。アナゴンダが居るのは世界樹周辺ですので、運良く遭遇すれば今日中に帰ってこれますよ。」


「おー日帰りクエスト良いですね。」


「もし発見出来なくても、3日ほどで一度帰還しましょう。」


「分かりました。」


「では、出発しましょう!」


「「おー!」」

モーツァルトリの他にもヴィヴァード、バッハロー、アルバサントロスを思いついていたのでここで供養します。

一番伝わりやすそうなモーツァルトリにしました。

いつか出てくるんですかもしれません。

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