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40話 グロウの試験

「さ、次はグロウくんの試験よ。」


トーリアが俺の近くまで戻ってきて、代わりに俺が前に出る。


「トーリアの試験は今ので終わりですか?」


「ええ。大体の力は分かったからね。」


「トーリアにはまだ出してない必殺技がありますよ?」


「忘れてるかもしれないけど、ここは王都のど真ん中よ?あんな大技使っちゃダメよ。」


「お姉ちゃん、どんな技か知ってるの?」


「何言ってるのよ。お祭り初日の夜に世界樹の近くでとんでもない白雷が落ちたの、あれトーリアちゃんでしょ?」


「「げっ……」」


「まさか、あんな派手な技使っといてバレてないと思ってたの……?」


俺とトーリアは思わず見つめ合った。


「いや、えーと……」


「ぷひゅーひゅー」


俺は言い訳を考えたが思いつかず、トーリアは音の出ない口笛を鳴らして誤魔化している。


「はあ……これはお姉ちゃんの子ね……」


「あ!その言い方は異議ありですよ!」


「そうだよ!ママと一緒にしないで!」


「お姉ちゃん、自分の子供にどう思われてるのかしら?」


「魔法馬鹿!」


「傍若無人!」


「あ、それチクっとくわね。」


「お姉ちゃんが言わせたよね!?」


「そーだよ!同罪だよどーざい!」


やんややんやと喧しい俺たちだったが、受付嬢さんの「試験を開始いたします」という言葉でピタリと静かになった。


「はい、じゃあ気を取り直して……グロウくん、かかってきなさい。」


「はーい。じゃあまずは『キャノン』!」


俺はまず、拳大の砲弾を創り出して射出する……つもりだった。


しかし、実際に生み出されたのは頭より一回り大きい砲弾だ。

しかもついでにと付与した爆発の魔法陣まで、想像の五倍くらい大きなものが描かれている。


「あれ?なんか思ってたよりでか……」


内心やばいかなーと思ったが、止める間も無く射出される。


「あ、それヤバそうね。」


カルネシアお姉さんは、先ほどトーリアの白雷を受け流した、円錐状の障壁が展開された槍を正面に構えた。


飛んでいった特大キャノンが障壁に当たった瞬間、爆発の魔法陣に魔力が点火。

耳をつん裂く轟音を轟かせ、砲弾はとんでもない爆発を起こした。


爆風は訓練場の端まで届いて、ギャラリーを吹き飛ばしてしまう。

もちろん、そんな魔法を使った俺も吹き飛ばされて、訓練場の端まで転がった。


「ゲホッゲホッいてて……」


起き上がって周りを見渡すと、立っているのはカルネシアお姉さんだけだ。

いや、空を飛んで避難したトーリアも無事みたいだ。


「お兄ちゃん流石にやり過ぎだよ!」


「こんなに大きくしたつもりは無かったんだけど……なんでだろう?」


いつもと同じくらい魔力を込めた筈なんだけどな。


「マグワートさんが言ってたじゃん。杖は魔力を増幅するから、気をつけろって!」


「あっ。あー……」


そういえばそんな事言われたっけなあ。


「あれ?トーリアは普通に魔法使ってたよな?」


「アタシは覚えてたから加減してたもん。」


「トーリアはしっかりしてるなあ。」


「お兄ちゃんもちゃんと覚えててよね。」


いやあ、戦うときって考えることが多くて、細かい事をつい忘れてしまうのよな。


トーリアと話しているとカルネシアお姉さんが近づいてきた。


「もしかして、その杖使うの今日が初めて?」


「はい。」


「やっぱりね。私も昔やらかしたから分かるわ。」


「杖使うだけでこんな変わるんですね。」


聞いてはいたけど、それでもこんなに変わるとは思わなかった。


拳大の砲弾を作ろうとしたら顔より大きくなるし、人一人吹き飛ばす爆発が、50メートル四方を吹き飛ばす爆発になるし。


「じゃ、試験を再開しましょうか。」


「え、再開するんですか?」


てっきり怒られて再試験になるものだと思っていたのだが、このまま続行するらしい。


「だってギャラリーも楽しみにしてるみたいだし。そもそも魔法が暴発しただけでしょ。辞める理由ないじゃない?」


そう言われて再度周りを見回すと、吹き飛ばされていたギャラリーが起き上がって、なにやら話し込んでいる。

そちらの声に耳を傾けてみると……


「おいおい!王子様の魔法を食らっちまったよ!」


「ええ!体を駆け抜けるグロウ様の魔力の波動!最高に気持ち良かったわ!」


「王子様は魔力までお美しいのね!」


「あの美しい杖も相当な業物だなあ!」


「ああ、もっと間近で直接魔法をぶつけられたい……」


などなど、みんな笑顔で楽しそうに話している。


「あれ?怒られるかと思ったけど、みんなむしろ喜んでる?」


「エルフは基本的にみんな魔法の実験が大好きだから、暴発程度はよくある事なの。それにあなた達は人気者だからね。みんなあなた達の魔力を浴びたがってるのよ。」


「ええ……」


エルフって魔力でも興奮できるのか。


前世だったら確実に怒られてたし、下手したら訴えられてたんだろうなあ。エルフが大らかで良かった。


「さ、これで気兼ねなくやれるわね?」


「まあ、これ以上ないくらい気楽になりましたね。」


「じゃあ、もう一回攻撃してみて!」


「今度は抑えて抑えて……『キャノン』!」


俺は今度こそ拳大の砲弾を創り出し、そのまま射出した。

まだ怖いから爆発の魔法陣とか余計なことはしない。


多分避けられると思うけど、その隙にガトリング用の弾丸を生み出せればいいのだ。


案の定カルネシアお姉さんは横に一歩ズレて弾丸を避ける。


しかし次の瞬間、槍を体の横で縦に構え、野球のバッターのようにフルスイング!


打ち返された砲弾はピッチャーライナーとなって俺の顔面へ一直線だ。


「あっぶねえ!」


槍を縦に構えた姿に既視感を覚えたから咄嗟に避けることが出来たが、一歩間違えたら首から上が無くなるところだった。


ちなみに避けた砲弾はギャラリーの一人が魔法でキャッチした。さながらホームランボールだ。あとでサインを書いてあげないとな。


「そんな素直な軌道じゃダメよー」


「だって暴発が怖かったんですもん!『ガトリング』!」


今度は指くらいの大きさの弾丸を連射していく。


これなら簡単には打ち返せまい。


「また障壁で受けたら芸がないわよねえ……」


確かに、トーリアの白雷すら受け流せるような障壁なら、簡単に受け止められそうだ。


しかしカルネシアお姉さんは障壁は出さず、槍の穂先を細かく動かして、弾丸を一つずつ弾き飛ばしていく。


「嘘でしょ!?そんな漫画みたいな……」


「お姉ちゃんかっこいい!」


「これは良い訓練になるわね!」


くそう、俺の自慢の魔法が訓練扱いだ。


分かってましたよ通用しないことは。そもそも雷を避けられる人なんだから。

てか雷を避けれる人にどんな攻撃なら当たるんだよ。


「次はこっちから行って良いかしら?」


「え、トーリアの時はそんな事しなかったですよね?」


「いやあ、私も疼いてきちゃって。」


「お姉ちゃんも戦闘好きなタイプだったか。」


取り敢えず正面に防御障壁を張って、出方を窺うことにする。


次の瞬間、カルネシアお姉さんの姿が消えた。


あ、くそう、全周に張る防御結界にしとけば良かった。

これは試験だから、流石にいきなりトップスピードで動くと思わなかった。


「後ろから行くわよ!」


という声が背中から聞こえるが、体は全く追いつかない。


そのとき、杖の小さなドラゴンが後方を向いて「キュア!」とひと鳴き、口から白雷を放出した。


「いだぁ!」


カルネシアお姉さんの悲鳴が背中越しに聞こえた。


振り返ってみると、お姉さんの槍と腕が焦げている。


「何その杖。自動迎撃装置がついてるの?」


お姉さんは治癒魔法で腕を治しつつ聞いてきた。


「そうみたいです。俺も動くのは初めて見たんですけど。」


「面白いわねそれ!そういう事なら、私も少しだけ本気の技を見せちゃおうかな!」


カルネシアお姉さんが槍を構えて腰を落とす。


「これを受け止められたら、合格にしたあげる!」


お姉さんの本気の技を、俺の障壁なんかで受け止められるのだろうか。

俺は自分の正面2メートル先くらいに、障壁を展開した。

杖の力も利用して、今までで一番硬い障壁を作れたはずだ。さながら全てを弾く戦車の如し。


一瞬の静寂。


次の瞬間、カルネシアはただ真っ直ぐに突進する。

そして、障壁に向けて突きを放った。


言葉にするとそれだけだが、もちろん目で追えるスピードではない。


その突きは俺の障壁に易々と穴を開け、そこから衝撃波が飛んでくる。


俺はそれをもろに受けて吹き飛ばされた。


そのまま冒険者ギルドの壁に激突するところだったが、飛んできたトーリアに掬われて事なきを得る。


トーリアが空に衝撃を逃してくれていなかったら、今頃骨の一本や二本折れていたに違いない。


「うんうん、中々やるじゃない。これにて試験は終了よ!」

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