表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/55

38話 冒険者ギルド

俺とトーリアは門番さんに挨拶して、正門から城を出て、城前広場に出た。


今回はちゃんと外出届を出しているので、ゴーレムに止められることもないし、認識阻害のサングラスも掛けていない。


その代わり、今回はベリルとベールが一緒に来て、俺たちを案内してくれる。


「今朝もパレードをしたばっかだから、もっと人に囲まれるかと思ったんだが、意外と誰も来ないな。」


広場は遊歩道のようになっていて、今もそれなりに人が居るんだが、みんなチラチラとこちらを窺うだけで近寄ってこない。


「アタシ、芸能人みたいに出待ちされるのを期待してたんだけどなー」


「実際に出待ちされたら面倒そうだけど、誰も来ないのも少し寂しいな。」


いつもより気持ちゆっくり歩いたのだが、結局誰にも話しかけられないまま広場を抜け、大通りの冒険者ギルドに到着した。



――――――――――



ちなみに、広場に居た市民、もといファンはというと……


「おい、あれグロリオーサ王子とトーリア王女じゃないか?」


「お、おれ、サイン貰ってきていいかな?」


「馬鹿!プライベートの時に近づくなって言われてるだろ!陛下に殺されるぞ!」


「大丈夫だ!陛下に殺されるなら本望だ!」


「それは分かるがやめておけ!次に陛下がマジギレしたら、もうパレードとかやってくれなくなるぞ!」


「確かに、それは他の同志に悪いな……」


などという会話があったとかなかったとか。


用法用量と相手のプライベートを守ってファン活動をお楽しみください。



――――――――――



場所は戻って冒険者ギルド前。


「到着です。」


「到着しました。」


ベリルとベールが大きな三階建の建物の前で立ち止まった。


「前からエルフの街に似つかわしくない、無骨な建物があるなあとは思ってたけど、ここだったのか。」


「いつも通ってたけど知らなかったね。」


盾の前で剣が交差したシンプルなエンブレムが飾ってあるここは、大通りに立ち並ぶ他の建物と比べて荒々しい印象を受ける。


使われている石材が違うようで、他の店はツルツルに磨かれた石を積み上げて作られているのに対して、冒険者ギルドは表面が荒い。


他にも、二階のベランダや屋上外周に凸凹状の胸壁がついていたり、その凹部にバリスタが設置されていたりと物騒だ。


こんな街中で何と戦うつもりなのだろうか。


「でもなんかいいなこの雰囲気。」


「お兄ちゃん早く入ろうよ!」


「そうだな。お邪魔しまーす。」


扉を開けると、中には個性豊かな荒くれ者たちがぎっしり詰まっていた。


例えるならメンチカツみたいな感じ。


外はザクザクの無骨な衣、中は荒々しい粗挽き肉。


「そう、冒険者ギルドとはメンチカツのことだったのだ。」


「またお兄ちゃんがおかしな事言ってる……ベリル、ベール、お兄ちゃんは置いていくよ。」


「了解です。」


「分かりました。」


「待て待て、ちょっとふざけてただけだから。」


きちんと説明すると、正面奥に依頼を受けるカウンター、入って右手に依頼達成報告及び素材買取のカウンター、左手は依頼を出すカウンターと資料室だ。

そして入口横の壁にバーカウンターがあり、樽をテーブルにして立ち飲みしたり、作戦会議したり、商談したりしている人がちらほら。


そのまま俺たち四人がカウンターへ向かおうとすると、立ち飲みしていた三人の男エルフが道を塞いだ。


「おいおい、新人はまず先輩に挨拶するのが礼儀だろお?ウィッ……」


「なに無視して俺らの前を横切ってくれてんだあ?ヒック……」


「マナーを教えてやるから授業料払いなぁ。ゲフッ……」


彼らは全身から酒の臭いをプンプン漂わせながら、胸まで真っ赤な顔で俺たちにそんなことを言う。


「おいおいトーリア……ついに来たぞ!」


「来たねお兄ちゃん!待ちに待った絡まれイベントだよ!」


そう、俺とトーリアは前世で転生ファンタジーに慣れ親しんだ者。

せっかく転生したんだから、どんなシチュエーションに遭遇したいか、二人でよく話していた。


そしてその中で堂々の一位にランクインしたのが、「冒険者ギルドで新人いびりを受ける」だ!


俺たちはワクワクした感情を隠さず曝け出し、これ以上ないくらいにニヤニヤしながら答える。


「おいおいおじさん達、俺たちにそんな口利いて良いのかなあ?」


「あぁ?」


「アタシ達を誰だと思ってるのかなあ?」


「誰だって関係ねえよ!」


「舐めてっと痛い目見るぞオラ!」


さっきまで「また始まった」みたいな顔で知らんぷりを決め込んでいた周囲の冒険者も、もう一度こちらを振り返って目を丸くしている。


「この紋所が目に入らぬかあ!」


「入らぬかー!」


俺とトーリアは揃って熊葛の花模様、つまりバーベインの花模様の描かれた印籠を見せつける。


時代劇ごっこがしたいと言って、昔ママに作ってもらったものだ。


本当は薬を入れるらしいが、至って健康な俺たちは飴などのお菓子を詰めている。

最近はカカさんのチョコが入っている。


「な!その模様は!」


「ふふふ、これで分かったかね?」


「という事は、貴方様は……!」


「ベリルくん、教えてあげなさい。」


「ラジャです!ここにおわすお方をどなたと心得る!時の第一王子、グロリオーサさまであらせられるぞー」


「ベール!アタシにも!」


「ここにおわすお方をどなたと心得る。時の第一王女、トーリアさまであらせられるぞー」


ベリルとベールが例のセリフを言い終わると、絡んできた三人は平伏して額を地面に押し付ける。


「「「ははー!」」」


「では、俺たちはもう行くが、構わないな?」


「「「どうぞ、お通りください!」」」


「よーし行くぞトーリア!」


「おー!」


俺たちは土下座した男達の横を抜けて、正面のカウンターへ向かった。


なんか一連の流れが綺麗過ぎた気がするけど、まあ気のせいだろう。



――――――――――



一方その頃三人の冒険者。


「いやあ、今回の陛下の依頼、なかなか面白かったな。」


「王子様と王女様が思いついた寸劇らしいけど、こんなファンサもアリだな。」


「今度は陛下に向かってははー!って言いてえなあ。」


「明日もまだパレードやってくれるんだろ?他の同志にも知らせてみんなでやるか!」


「それいいな!」


「今のところ、お二人と直接会話したのなんて俺たちだけだろ?」


「しかも陛下直々の依頼なんて、俺たちついてるよな。」


「ああ、どんなお守りよりご利益あるぜ!」


「他の奴らに自慢できるな!」


という会話がなされていたとか。



――――――――――



「王子殿下、王女殿下。陛下よりお話は伺っております。」


カウンターに着くと、金髪エルフの受付嬢さんが出迎えてくれた。


他のカウンターの受付嬢と違って落ち着き払った態度は、プロの貫禄を感じる。


「用紙の記入と軽い実技試験を経て、冒険者カードを発行致します。まずはこちらの用紙にお名前と年齢、パーティ内での役割、また諸々の好みを記入してください。」


「好みってなんですか?」


「好きな食べ物ですとか、好きな魔法属性、犬派か猫派か、きのこかたけのこか。他にも好きな異性のタイプですとか、そういったことです。」


「そんな事まで書くんですか?」


「パーティのマッチングに用います。パーティを組んだ後に趣味嗜好の違いで仲間割れされる冒険者の方が非常に多いので、事前に申告していただいています。」


「ああ……なるほど。そういう事なら書きましょうか。今のところトーリア以外と組む気はありませんけど、共通の冒険者友達とか出来るかもしれませんしね。」


俺とトーリアはカウンターに並んで、一つずつ記入していく。


えーと?まず名前、年齢、役割は魔法使い、と。


んで趣味嗜好だっけ?


好きな食べ物……ご飯、ハンバーグ、ハッシュドポテト……

嫌いな食べ物はトマト

好きな属性魔法は火かな?

犬派で、きの……たけ……うーんきのこかなあ

そもそも俺の想像してるきのことたけのこの事なのだろうか?


んで、好きな女性のタイプ……

歳下、かわいい系、ショートヘア……いや細かいなこれ

紙にびっしり二択が並んでるじゃねえか

マッチングアプリよりも細かいぞこれ


「ん?どうしたトーリア?」


「え、いや、なんでもないよ?」


「そうか?」


ふと顔を上げると、トーリアが俺の用紙を覗き込んでいた。


そっちが先に覗いたんなら俺も覗かせてもらおうかな。


「ほほう、歳上が好みなのか。歳上なのにかわいい系の男が好きなのか?矛盾してないか?」


「ちょっと!勝手に見ないでよね!」


「お前が先に覗いたんだから良いだろ?」


「ダメ!お兄ちゃんは見ちゃダメ!」


「はいはい分かったよ……」


全く、こういう時すごい我儘なんだよな、我が妹は。


そのまま何問か答えた後面倒臭くなって、ばーっと左側を纏めて丸で囲った。


「あ、お兄ちゃんちゃんと答えてよ!」


「えーだって面倒くせーんだもん。良いだろ別に。」


「良くないよ!」


「お前、自分が俺の好み知りたいだけだろ。知ってどうすんだよ。」


「どうもしないけど、良いのそんな事は!」


妹のクレームを右から左へ受け流して、受付嬢さんに提出する。


「これ、お願いします。」


「確認しますので少々お待ちください。」


その後左側を纏めて丸した部分は未記入として処理されたが、一応受理された。


元々荒っぽい冒険者だ、他にもそういう人は居るらしい。


その後トーリアも提出したので、実技試験とやらの準備が済むまで待つことになった。


「お待ちいただく間、ギルドマスターがお会いになりたいと申しておりますが、よろしいですか?」


「大丈夫ですよ。」


「ではご案内させて頂きます。」


カウンターから出てきた受付嬢さんの後を追いかけて、二階へと上がっていく。


ギルドマスターってどんな人なんだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ