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37話 マイニューギア!

ママの生誕祭が始まってはや一ヶ月。


お祭りの熱気は落ち着きつつあるものの、いつまでも熱を失わない人たちがここに大勢集まっている。


「「うおおおおおおおおお!!!」」


「今日も元気ねあんた達!私はもう飽きたわよ。でも応援ありがとねー!」


「素直なアンちゃんも好きだよー!」「うおお陛下ぁ!」


今日も今日とて元気なファンの人たちに出迎えられて、馬車に乗って城を出た。


「いやあ、俺もこうしてパレードで人前に出ることにも慣れてしまったな。」


「「王子様ー!」」


「あ、どうもどうも。」


呼ばれた方に顔を向けて、笑顔で手を振る俺。


「お兄ちゃんもファンサ慣れてきたねー」


「流石に一ヶ月もやってればねえ?」


そりゃあ毎日こんなことやってたら、それなりに対応出来るようになるってもんだ。


「お兄ちゃん、最初の頃はすごい照れてたよね。」


「今でも少し照れくさいけど、割と慣れたな。」


そうして王都を一周してお城に帰ってくる。


最近はママの謁見の予定も無くなって、パレードの後は、みんなで遊んだり王宮でゆっくりしてる事が多い。


「今日はこのあとどうする?俺は特に予定ないけど。」


「アタシも今日は特に行きたいとこないかなー」


この一ヶ月で王都の目ぼしいお店は回り尽くしたから、二人とも今日は暇になりそうだ。


じゃあ今日は王宮でゴロゴロしてようかという流れになりかけたとき、ママが良いことを教えてくれた。


「そういえば、あなた達が頼んでた武器が出来たって言ってたわよ。」


「「本当!?」」


ゴロゴロの予定は一瞬で遥か彼方へ飛んでいった。


「受け取ったら冒険者ギルドでも行って、適当なクエスト受けて試し撃ちしてきたら?」


「冒険者!楽しそう!」


「異世界に来たら冒険者だよね!」


前世で色々なファンタジー作品を見てきた俺とトーリアにとって、異世界に来たら一度はなってみたかった職業だ。


二人ともワクワクを抑えられない。


「ギルドには私の方から頼んどくから、テキトーに説明聞き流して、軽く遊んできなさい。」


「そんな雑な感じで大丈夫なの?」


「大丈夫大丈夫!なんかあったらあの子に言えばなんとかしてくれるわよ。」


「あの子って?」


「王都のギルドマスターよ。」


「ママの知り合いなの?」


「それは……会ってからのお楽しみよ。」


「ふーん?」


よく分かんないけど、なんかあったらギルマスを頼れば良いってことらしい。


組織のトップがちゃんと頼れる人なのは良いことだ。


「私はギルドに顔出してくるから、あなた達は武器を受け取ってらっしゃい。」


「「はーい!」」


ということで俺とトーリアの二人は武具製作室へやってきた。

先にトーリアの武器を受け取るためだ。


「お邪魔しまーす……ってあれ、マグワートさん。」


部屋の中に居たのは、前回トーリアの防具選びに付き合っていた兵士さんと、マグワートさんだ。


「あとで杖を受け取りに行こうと思ってたんですけど、ここに居たんですね。」


「ほっほっ、先にトーリアくんの武器を受け取りに来るじゃろうと思ってな。先回りしておったんじゃ。」


「おお、よく分かりましたね。年の功ってやつですか。」


「ま、伊達に長く生きとらんからな。」


そのまま軽く世間話をしていると、兵士さんが部屋の奥から手のひらに収まるくらいの小さな箱を持って出てきた。


「王女殿下。こちらがご依頼頂いていた武装です。」


「あれ?こんなちっちゃいの?」


「現在はこの指輪に収められおります。指に嵌めて魔力を流してみてください。」


「おお!もう指輪に入ってるのか!」


「なんでそんな嬉しそうなのお兄ちゃん。」


「指輪に武器が入ってるってロマンだろ?」


「んーそうかな?そうかも?」


そんな事を話しつつ、トーリアは両手に指輪を嵌めて魔力を流す。


指輪が軽く光ったあと、その両腕に三本の爪が伸びる手甲が現れた。


「おー!これがアタシの武器!かっこいい!」


「かっこいいな!似合ってるぞトーリア!」


「ほんとー!?えへへー」


トーリアは腕を振り回して喜びを表現している。


手甲の部分は竜を模していて、パパとトーリアの白竜素材を使ってるから、真っ白く光り輝いている。

それだけでなく、僅かに帯電しているようにも見える。


また、爪の部分も白銀色に輝く長く鋭い爪で、これが剣だったら聖剣なんて呼ばれていそうな輝きだ。


「早く試し切りしたーい!」


「まあ待てって。このあとちゃんと行くんだから。」


「そうだったね!」


「じゃあ、次はグロウくんの番じゃな。ほれ、この指輪の中に入っとるよ。」


「おお!俺の指輪!」


マグワートさんは指輪の刺さった小箱を差し出してきた。


このシチュエーション、まるでプロポーズみたいだなとしょうもない事を考えつつも、右手の中指に嵌めた。


「これで魔力を流せば良いんですよね?」


「そうじゃよ。」


「ふー……なんか緊張してきた。はあ!」


軽く深呼吸してから指輪に魔力を流すと、手のひらの中に俺の身の丈ほどの大きな杖が現れた。


「おぉ……これが……」


現れたのは、思わず見入ってしまうような立派な杖だ。


柄の部分は白っぽい木製で、丁寧に磨き抜かれていて絹のような滑らかな手触りだ。

それでいて魔力を流すと手に吸い付く感覚があり、体の一部になったような錯覚を覚える。


杖の先端には大ぶりの赤い宝玉が鎮座して、それを護るようにして、パパを模したこぶし大の白いドラゴンが飛んでいる。


「宝玉の周りを飛んでいるのはドラゴンの模型じゃ。実際は違うんじゃが、分かりやすく言うと小さいゴーレムみたいなものじゃ。所有者が敵と見做した相手を自動で迎撃するぞ。」


「なんすかそれ!ちょーかっこいいじゃないっすか!しかも強そう!」


「そこそこの魔法攻撃なら撃ち落とせるし、接近したら直接攻撃も一応出来るぞ。トーリアくんの武器に使わなかった白竜素材で作っておるから、事前に溜めておけば白雷で迎撃してくれるはずじゃ。」


「トーリア!早速溜めてくれ!」


「いいよー!」


「この杖にも白竜の素材を使っておるから、グロウくんも白雷魔法が使えるようになると思うぞ。」


「え、マジすか?この杖使ったら誰でもっすか?」


「いや、グロウくんだけじゃ。君の体はほぼハイエルフじゃが、白竜の血も流れているんじゃろう?じゃから、この杖を触媒にしてその血を増幅させてやれば、理論上は使えるはずじゃ。」


「おおぉ……ロマンの塊だ、この杖は……」


理論上狩野というだけで、今すぐには使えないとの事だったので、今回はトーリアに白雷を蓄電してもらう。


トーリアが小さな白いドラゴンを胸で抱いて、白雷をチャージしてくれている姿がかわいい。


「トーリアくんの爪も白竜素材じゃから、蓄電しておけると思うぞ。あまり多くは溜めとけんじゃろうが、もしもの為に残しておくと良い。」


「わかりました!」


「それとその爪もそうじゃが、この杖はかなり高性能じゃから、初めて使うときは気をつけるんじゃぞ。魔法の威力を何倍にも高めるから、出力には十分注意するんじゃ。」


「「はーい!」」


「また何かあったらわしの元に遊びに来てくれ。最近は平和で暇しておるからな。」


「じゃあ今度チョコを持ってお茶しに行きますね。」


冒険者ギルドへ向かうため、俺たちは部屋を出る。


「俺らの武器を作っていただいてありがとうございます。大切に使いますね。」


「ありがとうございます!」


「武器なんじゃから、大切にするよりちゃんと使って身を守るんじゃよ。」


「それもそうですね。じゃあ、壊れるまで使います。」


「うむ、そしたらまた予算度外視の杖を作れるから、ガンガン使ってくれ。」


俺たちは部屋を出て、冒険者ギルドへと向かった。

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