36話 新作チョコレート
今日もほのぼの番外編です。
「「「アンちゃーん!!!」」」
「ハーイ!みんな今日もヨロシクねー!」
「「「うおおおおおお!!!!」」」
朝食を食べ終えた俺たちは、ママと俺とトーリアの3人で馬車に乗り、昨日と同様に城前の広場に出た。
その途端、地響きが起こりそうなほどの歓声でもって出迎えられた。
昨日も呆気にとられるくらいの声援を浴びたが、今日も負けず劣らず、エルフは元気で平和だ。
昨夜のブラックリリー達の事は、世間には知られていない。
出会ったのが俺とトーリアだけだし、彼等は世界樹以外に悪さをしておらず、誰にも気づかれなかったからだ。
「いやあ、それにしても元気すぎるなこの人たち。」
「グロウくーん!」「トーリアちゃーん!」
「ほらほら、あなた達もファンサしてあげなさい!」
「あぁ、いつの間にか俺たちもこの世界に入ってしまったのか。」
「いえーい!アタシのファンのひとー!」
「「うおおおおー!!!」」
「あ、トーリアはノリノリなのね。」
「あ!ねえねえお兄ちゃん、あそこにいるのカカさんじゃない?」
「え?あっ本当じゃん。」
俺たちの馬車を囲っているファンの中に、昨日チョコをご馳走になったカカさんが居た。
俺とトーリアがそちらへ手を振ると、カカさんの居る一角が猛烈に沸き立った。
「あ、この手を振っただけで人がわあわあするの楽しいかも。金魚に餌やってるみたい。」
「お兄ちゃん楽しみ方間違ってると思うよ。」
「そう?私もファンサしてると鯉に餌やってる気分になるわよ。」
「もう、ママまでそんな事言って……」
そんなこんなで大通りを一周してパレードを終えて、俺とトーリアはまた自由時間になった。
相変わらず、元気が有り余ってるファンは王城前広場に留まっていて、ママの教育が行き届いていた。
「ねえ、お兄ちゃん。今日もカカさんのお店行こうよ!」
「そうだな。さっき見かけたから、俺もチョコが食べたくなった。」
このままだと俺は、ダークエルフを見たらチョコが食べたくなるかもしれない。
「それ、私も食べたいからついて行っていいかしら?」
「あ、ママも来る?いいよ!」
「ダメですよ陛下。今日もまだ謁見式の予約が入っております。」
コンメリーナさんが割って入って、ママを制止する。
この人、近衛騎士団長なのに秘書みたいなことまでしてるのか。
自由奔放なママの秘書は大変そうだな。
「チョコを食べるだけよ。ちょっとくらい待たせとけばいいわよ。」
「チョコだけにちょこっとだけね。」
「何言ってんのお兄ちゃん。」
「あ、ちょこざいな洒落だった?」
「ちょっと黙って。」
「あ、はい。」
余計な事を言い過ぎてトーリアが少しだけ御立腹だ。
「かなり御立腹ですけど?」
あ、はいすいません。
俺とトーリアのしょうもないやりとりを置いて、ママとコンメリーナさんの攻防は、ママの勝利で終わったようだ。
「仕方ありませんね。ではリーヴィア、陛下について行って、長くなりそうなら無理やり連れてきてください。」
「え、リーヴィアも付いてくるの?」
「何か問題でも?もしかして逃げ出すおつもりでしたか?」
「そ、そんな事ないわよ?」
「では、お早めにお帰りくださいませ。」
「しょうがないわね。」
「リーヴィアが来るなら、ベリルとベールも一緒に行こうぜ。」
ズボッズボッ
「行くです!」
「行きます!」
「よーしみんなで行くよー!」
という事で、俺とトーリア、ママと、ドライアドのベリルとベール、リーヴィアの6人は、ママの魔法で完全に姿を消してカカさんのお店に向かった。
――――――――――
「カカさーん来たよー!」
店に入るなり、トーリアが元気よく挨拶する。
「王女様!それに王子様も、また来てくれたんですね!あ、そちらはドライアドさんと……ええ!へ、陛下ぁ!?」
「はーい陛下よー」
「ほ、本物ですか?なぜこんなところに陛下が?」
「この子たちが美味しかったって言うから、私も食べに来たのよ。」
「ひええ……そんな、畏れ多い……」
「そんな緊張しなくていいから、チョコを食べさせてちょうだい。」
「す、すぐにお持ち致しますー!」
カカさんは急いでチョコをお皿に盛り付けて準備してくれている。
ママを見てこんなに慌ててる人を初めて見た。
「なんかママがちゃんと敬われてるの初めて見たかも。」
「え?パレードのときみんな応援してくれてたじゃない。」
「いやあれは王様への反応じゃないと思う。」
「昨日お兄ちゃんと会ったお城のドラゴンさん達も、敬うって感じじゃなかったもんね。」
「杖製作室のマグワートさんなんか、ママのこと近所の子供みたいな感じで話してたよね。」
「あいつら……帰ったらシメてやるわ。」
あ、これ言わない方が良かったかも。
マグワートさんも魔法は得意そうだけど、ママとどっちが強いのかな。
「ど、どうぞ!今日のチョコはお酒を使ったチョコです!お酒のシロップが入ってるものと、お酒を混ぜた飴が入ってるものの2種類があります。」
そう言って持ってきてくれたお皿には、ワインボトルを模したチョコレートが並んでいる。
ママが居るから大人向けのチョコレートを用意してくれたのかもしれない。
早速ママが指で摘んで口に放り入れる。
「あら!良いじゃないこれ!」
どうやらママの口には合う味だったらしい。
「いただきまーす!」
口に入れて噛むと、中からトロッと甘いシロップがこぼれ落ちる。
アルコール臭さは殆どなく、口に広がるのはリンゴの香りだ。
チョコのこってりした甘味と、シロップの爽やかな甘味が混ざり合い、いくらでも食べられそうだ。
「うっま!昔食べたのは酒臭くて好きじゃなかったけど、これは美味いね!」
「本当ですか!私もお酒の臭いが苦手で、なるべく抑えて作ったんです!」
「カカさんこれ凄いですよ。めちゃめちゃ美味いです!」
次に口に入れたのは飴のチョコだ。
噛んでみると柔らかい水飴が心地よい弾力を返してくる。
こちらは先ほどのチョコよりアルコールの臭いが強いが、その代わりハチミツの風味がついているようだ。
ハチミツの甘さとウイスキーの苦味が合わさって大人な味がする。
「うーん。これも美味い!」
「これも美味しいわね。これからちょくちょく食べにくるから、よろしくねカカちゃん。」
「ひえええ恐れ多いですぅ……でも光栄ですぅ……」
「おーい、トーリアも食べてみろよ。」
さっきからやたら静かなトーリアに食べるように言うと、赤ら顔のトーリアが飛んできた。
「お兄ちゃーん!」
「うわ!なん!酒臭!」
「お兄ちゃんすきー!」
「あらら、トーリアったら酔っ払ってるじゃない。」
「なんでこんな酔ってるんだよ!そんなにアルコール強くないぞ?」
「ああ、王女様にはドラゴン向けのアルコールが強いものをお出ししたんです。けど、ちょっと強過ぎましたかね?」
「それでこんな酒臭いんですね!」
「お兄ちゃんチューしよー!」
「こいつ酔っ払うとキス魔になるのかよ!めんどくせえ!」
「ママのとこにもおいでートーリア。」
「ママもすきー!チュー!」
「ああもうダメだこりゃ……」
俺が額に手を当てて頭を振ると、視界の端にベリルとベールが映った。
彼等も顔を赤らめて、いつにも増してボーッとした表情だ。
「おいおい、まさか二人も酔っ払ったのか?」
「ドライアドの皆さんには、最近流行りの液体魔力肥料を混ぜたものをお出ししてみたんです。どうやらお気に召して頂けたようですね。」
「それ大丈夫なやつですよね?」
「ドライアドのお酒みたいなものらしいですよ。」
つまり二人も、トーリアと同様に酔っ払っているという事だ。
「こらベリル、ベール、まだ仕事中ですよ。ほどほどにしなさい。」
「グロウさまー母さまがうるさいですー」
「もっと食べたいですー」
「ああ、もう、酔っ払いの面倒臭さは異世界も種族も関係ねえな!」
グロウはハイエルフ、トーリアは竜人なのでお酒を飲んでも大丈夫ですが、人間の読者の皆様はお酒は二十歳になってからお楽しみください。




