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33話 しかし大は小を兼ねる

俺たちが王族と分かった途端に慌て始めたボブ。


その横で黒焦げになって倒れているマイケル。


そしてトーリアはというと、自由を取り戻していた。


「あれ?なんか動けるようになった。」


「え、なんでだ?」


「なんでだろ?あ、さっきの白雷で影を塗りつぶしたからかも?」


「ふーん?つまり、影に魔法を打てばいいのか?それとも、光とか?」


トーリアの言葉を参考にして対処法に当たりを付けた俺は、自分の背後の影に向けて初級の火魔術『フレイムボール』を放つ。


放たれた火球が影が落ちた地面に当たって爆ぜるが、影は揺らぎもせず、俺の体を縛り続けている。


「ありゃ、ダメか。火力が弱いのか、光が弱いのか……」


「アタシが雷落としたげよっか?」


トーリアが無邪気な笑顔でそんな事を言い、右手をバチバチさせている。


「待て!俺はトーリアと違って、雷なんて食らったら普通に死んじまうから!」


「えー?大丈夫だよ。ちょっとビリってするだけだよ。」


「やめろ!絶対に打つなよそれ!」


地味に命の危機を感じた俺は、全力で頭を回して考える。


トーリアの白雷で影を覆ったから解けたんだろ?

だとしたら、雷の形じゃなくてもいいはずだ。


そう結論付けて、俺は普段から自分の全身を覆っている魔力を体の外、影まで伸ばしてみる。


影を全て覆った時、アッサリと体が動くようになった。


「なんだ、これだけで良かったのか。」


「なっ!こんな簡単に影の主導権を奪われたじゃと!?」


「奪ったっていうか、何の抵抗もなかったけど?」


「ぐぬぬ……小僧、魔力量でゴリ押ししおって!どうやらハイエルフというのは本当のようじゃな。」


あ、ゴリ押ししちゃったのか。

それはちょっと悪いことしたかな。


そのとき、トーリアの白雷を食らって伸びていたマイケルがようやく起き上がってきた。


「っあぁ……今のは効いたぜぇ。」


まだまだ元気そうだな。

やはり、あの白雷もかなり吸収されてしまったんだろう。


「おいマイケル。今すぐ逃げるぞ!」


「あぁ?なんだボブ、日和ったのか?」


「やつら、王族じゃと名乗りおった。加えて影の主導権を奪い返した手並みを見ても、ハイエルフなのは確かじゃ。早く逃げだ方が良い。」


「おいおい、相手が王族ならここで仕留めたら大手柄じゃねえか!」


「勝てるわけなかろう!わしら人間とは魔力量の桁が違うんじゃ!」


「はっ!ビビってんならてめえだけ帰んな!俺はこのガキの首を持ち帰って、ゴールドアクスに昇格するぜ!」


「はあ、脳筋はこれじゃから……」


あっさりと勝負を捨てて、ボブとその子分は帰ろうとしているらしい。


まあね、君たちは魔法使いらしく、マイケルの10倍くらいの魔力があるけど、俺はさらにその100倍以上あるからね。


「わしはこんな所でくたばる訳にはいかん。永遠を手に入れるまではな。」


そう言ってボブは闇を纏い始めた。


ダークエルフのナイアは、一瞬で闇を纏って居なくなってしまったが、ボブは同じようにはいかないらしい。


この辺が魔力量の差であり、種族差なのかもしれない。


だが、目の前で逃げる敵を二度も見過ごしたら、ママに怒られちゃうからな。


「逃がさないぜ!重力魔法『ヘルグラビティ』」


俺が練り続けていた魔力を解放すると、敵4人の周囲の重力が100倍以上になる。


本来なら、その空間の物体は押し潰されて地面の染みになるような強力な魔法だが、闇の鎧に吸収されて、今はそこまでの威力はない。


だが、ボブの纏いかけていた闇を押し剥がし、地面に突っ伏させて縛り付ける事はできた。


「ぐおお……!こんな儀式魔法を、単体でぇえ!」


ボブが言う通り、この魔法は儀式魔法に分類される。

人間なら数十人、エルフですら数人で発動する魔法だが、ハイエルフなら俺でも一人で扱えるのだ。


「なんだこの魔法はあ!」


マイケルもこの重力下では身動きが取れないらしい。


「よし、動きは封じたみたいだし、トーリアに衛兵か誰かを呼んできてもらって……」


と、俺がトーリアにお使いを頼もうとしたら、彼女の姿がない。

いったいどこへ?と思っていると、上空から声が聞こえる。


「お兄ちゃん!トドメいくから、そのまま捕まえといてね!」


「え……?いや、もう捕まえたんだし、このまま衛兵に突き出せば……」


そんな俺の言葉は上まで届かなかったらしく、既にトーリアは動き出してしまっていた。


「いっくよー!『雷神の怒槌トーリアハンマー』!!!」


全身から白い雷を棚引かせ、雷神の槌と化したトーリアが振り下ろされる。


眩い閃光で辺りは真昼のように明るくなり、俺が強化した重力すらも利用して、自然界の雷よりも速くその身を大地に叩きつける。


そして一拍遅れて轟音が轟き、衝撃で土埃が舞い上がった。


その爆風のあまりの激しさに、離れていた俺ですら立っていられなくなる。


「これ、真下にいたあいつらは木っ端微塵なんじゃ……」


この技は二人で考えたトーリアの必殺技だ。


久しぶりに見たが、やはりとんでもない威力だ。


俺はこの短時間で顔を覚えてしまったテロリスト達の身を案じるが、後の祭りというやつだろう。


土煙が晴れた時、そこに立っていたのはトーリアと、なんと近衛騎士団長のコンメリーナさんが居た。


「いやはや、素晴らしい一撃でした。王女殿下。」


「むー!そんな事言っても、簡単に受け止められちゃったじゃん!お世辞はいらないよ!」


「そんな事はありませんとも。こう見えて、私もかなり本気で受け止めたのですよ?」


「ホントー?」


「本当ですとも。このまま成長したならば、私では手に負えなくなるでしょう。」


「ふーん。じゃあ、今はそういう事にしといてあげる!次はコンメリーナさんでも受け止めきれない凄い技を考えるんだから!」


和気藹々とトーリアの必殺技の感想を語り合う二人。


そして四人のテロリスト達は、二人の足元で気を失っている。


いくらコンメリーナさんが受け止めたと言っても、その余波だけで気絶してしまったようだ。


「あの、コンメリーナさん。どうしてここに?」


「ああ、王子殿下、ご無事で何よりです。この者たちは生かして捉えたかったもので、無粋なのは承知しておりますが、止めさせていただきました。」


「そうなんですね。ってそうじゃなくて、どうしてこの場所がわかったんですか?」


「それは、お二人のペンダントを追跡させていただきました。」


「ペンダント?」


そんなもん持ってたっけ?


「あ、ペンダントってこれ?」


そういってトーリアは胸元から、木製のペンダントを取り出した。


「ああ!それか!ママにもらったやつ!」


俺も服の下からペンダントを取り出した。

俺の魔力を吸い取って魔石が淡く光っている。


「これは非常に便利な魔道具ですね。よくお一人で出歩かれる陛下にも、ぜひ身に付けていただきたいものです。」


なるほど、これは確かGPSみたいなものだって言ってたな。

それでこの場所が分かったのか。


「それに、城の尖塔の守護竜たちが、お二人が城を抜け出すところを目撃しておりましたので、私は連絡を受けて世界樹の上で待機しておりました。」


「あーあの酔いどれドラゴンさん達!」


「城を出る時からバレてたのか。まだまだだなぁ……」


『ふふふ。それが僕たちの仕事だからね。』


「うわあ!なに!?」


『はっはっは!王子は良い反応をするねえ。』


急に耳元から、城で会ったあのドラゴンの声がする。


「お兄ちゃんどうしたの?急に驚いて。」


「トーリアは聞こえなかったのか?」


「何にも?……うわあなに!?」


「あ、これ一人一人に直接届けてるんだ。」


『そうだよ。王子の鼓膜だけを震わせているんだ。凄いだろう?』


「いやお茶目か。凄いけども。」


城からここまで大分離れてるのに、そんな精密に魔法を届けられるなんて、本当に凄い。


俺の魔力操作では魔法は届いても、こんな精密な制御はまだ出来ないだろう。


「ここへ到着したのは、戦闘が始まった後だったのですが、お二人とも、実に勇敢でしたよ。」


「そうですかね?」


見てたならもう少し早く助けてくれても良かったのに、なんて思ってしまった。


「ふふふ、もちろん。私も守護竜達も、いつでも参戦出来るように待機しておりましたよ。」


「心の中読まないでくださいよ……」


まあ、前世を含めてもさらに100倍くらいの年齢差があるんだから、お見通しか。


「さて、それではこの者達を拘束して、城へ帰りましょう。」


「「はーい!」」

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