31話 black lily
「なんだあ?ガキじゃねえか。」
「でもアニキ、あいつエルフですぜ。」
「あ?じゃあガキじゃねえのか?」
「いや、小さいジジイの可能性もありますね。」
「いやまだ15歳ですけど。」
俺たちが木の裏から出てくるなり、好き勝手に騒ぎ始める斧持ちの二人。
バレちゃったから仕方なく出てきたけどさ、いきなりガキだジジイだ言われたら少し傷つきますよ。
確かにエルフの年齢は見た目じゃ判断できないけどね。
「隣の白いのはなんだ?魔族なのか?」
「見たことないっすね。魔族なんじゃないっすか?」
「魔族じゃないよ!どっちかというとエルフだよ!」
「ああ?エルフだあ?そうは見えねえけどな。」
「この国に住んでるもん!エルフだよ!」
トーリアのことまで好き勝手に言いやがって、全く、ムカつく奴らだな。
「お前たち静かにせい!エルフに見られたからには生かしてはおけん。子供なら大した魔法も使えんじゃろうし好都合じゃ。さっさと始末するぞ!」
「わーってるよ!いちいち俺に指図すんな!」
魔術師風のお爺さんが斧持ちのおっさんに命令している。
てかそうか、やっぱり始末される流れか。
いやだなあ戦うの。
「へえ……アタシ達を始末するんだってさ、お兄ちゃん。返り討ちにしてあげるよ!」
「なーんでトーリアはそんなやる気満々なのかな。」
元々は日本の女子高生だったのに、なんでこんな好戦的に育ってしまったんでしょうか。
「はっ!ガキがイキがるじゃねえか!」
「なあ、その前に一つ聞いて良いか?アンタら世界樹斬りつけてどうしたいんだ?そんな斧で切り倒せる大きさじゃ無いだろ。」
「フン。今から死ぬ小僧に教えてどうするんじゃ。」
「この木のサンプルが欲しいんだとよ。」
「馬鹿もの!なぜ正直に教えるんじゃ!」
「うるせえな。どっちみち殺すんだから良いじゃねえか。」
へえ、サンプルね。
つまり、世界樹の一部を切り取って持って帰りたいのか。
しかもサンプルって事は、研究したり、何かの素材にしたり、ラジバンダリするのか。
「あともう一個質問なんだけど、そこの現場監督……みたいな人は、ダークエルフだよな?なんでダークエルフが世界樹を傷つけてるんだ?」
俺がそう質問した瞬間、そのダークエルフから強い殺気が放たれた。
殺す意志が乗った強い魔力だ。
「なぜだと?貴様らエルフが我らの祖先に犯した罪業、忘れたとは言わせんぞ!」
迸る闇の魔力が渦巻いて、フードで隠れていた顔が露わになる。
そこに居たのは黒い肌と黒い髪、そして長い耳を持った、やはりダークエルフの女性だった。
ダークエルフだろうとは思っていたが、女性だったとは。
俺が勝手に現場監督とか言ってたから、おじさんだと思ってた。
「忘れたも何も、俺はまだ15歳だから昔のことは知らないんですよね。」
「ふん、年齢など関係ない。エルフに生まれた事がお前の罪だ。」
「いや、そんな事言われても……」
まあ、生きとし生けるもの、何かの命を頂いて生きているから、生まれた時から人類皆人殺しですけど。
って、そういう話じゃないよな。
「あの、昔はダークエルフに酷いことしてたってのは聞きましたけど、今はそんな事ないですよ。王都で普通に暮らしてます。」
「そうそう!カカさんって人が、この町で美味しいチョコ作ってたよ!」
「ダークエルフが王都で暮らしているだと?見え透いた嘘を吐くな!」
「いやいや本当ですって!」
「そうそう!もうダークエルフをいじめる人は居ないよ!」
「ふざけるな!そんな訳がないだろう!我らが何万年苦渋を舐めたと思っている?今さら和解など出来ると思っているのか!」
ダークエルフが普通に暮らしてるのは本当なんだけど、彼女は信じてくれそうにない。
確かに、エルフ族の中には、未だに差別してる人も居るかもしれない。
でも少なくとも、カカさんが王都でチョコレートショップを開けるくらいには、認められているはずだ。
俺がどうやって信じてもらおうかと次の言葉を考えていると、銀色の斧を持ったアニキと呼ばれていた男が、ダークエルフさんに話しかけた。
「お嬢、エルフの言葉に耳を貸しちゃいけませんぜ。」
「そうっすよ。奴等は俺ら人間のことなんてガキだと思ってる連中っすからね。」
酷い言われようだ。
人間から見たエルフってそういう感じなのか?
「言われなくとも分かっている。敵の言葉に惑わされなどしないさ。」
その時、魔術師風の爺さんがダークエルフの女性に麻袋を渡した。
「姫様、こちらを持って先にお帰りください。わしらはこの小僧を始末してから帰還いたしますので。」
「分かった。そうさせてもらう。」
ダークエルフは袋を受け取るなり、闇の魔力を練り始める。
「あ、ちょっと待てよ。アンタは誰なんだ?名前くらい教えてくれよ。」
「ふん、冥土の土産に教えてやろう。私の名前はナイア。貴様らエルフと世界樹は、我ら『black lily』が滅ぼす。それまでせいぜい、他の奴らに滅ぼされてくれるなよ。」
ナイアさんは吐き捨てるようにそう言った後、黒い闇に包まれた。
闇が晴れたとき、もうそこに彼女の姿は無かった。
「お嬢が名乗ったんなら俺らも名乗ってやるぜ。俺たちはblack lilyの実動部隊、『昏き闇より生まれし斧』。シルバーアクス第10席、マイケル様だ!」
「わしらは『永遠なる闇』。そしてわしは3賢者の一人、ボブじゃ。」
さっきまで言い争っていたのが嘘みたいに、二人とも息ぴったりに自己紹介をしてくれる。
斧を持ってる奴がマイケルで、魔法使い風のジジイがボブらしい。
というか……
「え、マイケルとボブ……?テロリストなのに、そんなありきたりな名前なの……?」
「めっちゃふつーの名前だね!」
俺とトーリアは思った事が口から出てしまった。
「な!俺様の名前をありきたりだと……!?」
「小僧どもの癖に煽りよるわい……」
「あ、いや、良い名前だと思うぞ!」
「そうそう!素敵な名前だよ!」
いかん!無駄に敵を煽ってしまった!
ありきたりって事は、それだけみんなに好かれてる名前ってことだから!
ただ、テロリストやる人は、教科書に載った時に覚えやすい名前をしていてくれると嬉しいかな!
教科書の偉人がみんなマイケルだったら大変だよ!?
「あんた達のより、組織名の方がよっぽどダサいと思うよ!だから元気出して!」
「そ、そうそう!中学生みたいなセンスだよね!」
「俺たち組織の名前まで馬鹿にしやがったな?」
「アニキ!こいつらナメ腐ってますぜ!」
「このクソガキども!ぶっ殺してやる!」
「生意気な小僧は教育してやらねばなあ!」
俺が煽っちゃったせいでお相手さん顔真っ赤になっちまった!
「おいトーリア煽りすぎだ!」
「お兄ちゃんが先に言ったよね!?」
「そうだけどトーリアもダメ押ししただろ!?」
「妹のせいにするとか兄としてどうなのさ!?」
「二人ともぶっ殺してやるから安心しとけやあ!」
「「うえええ!?」」
ブチ切れたマイケルが斧を担いで突っ込んできた!
こんな感じで戦うとは思ってなかったよ!
設定考えてたときはダッセェ名前を考えたつもりだったんですが、時間が経ってカッコ良く思えてきました。




