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30話 怪しい人にはついて行く

「カカさんのチョコ美味しかったねー!」


「そうだな。前世のより美味いかもしれん。」


俺たちはチョコの甘い口のまま、サングラスをかけ直し、世界樹の方へとブラブラ歩く。


「それにしてもでっかい木だよね。富士山くらい高いかな?」


「どうかな。森の家から見た世界樹は、確かに富士山くらい大きく見えたけど。」


「今度世界樹のてっぺんまで登ってみたいよね!」


「頂上には何があるんだろうな。」


「アンテナ!」


「それは東京タワーとかのやつだろ。こんなデカいけど木なんだぞ?もっとこう……えーと、リンゴとか?」


「世界樹ってリンゴの木なの?」


「いや、リンゴじゃないか。なんだろ、栗とか?」


他愛もない話をしながら王都の路地を散歩していた俺たち。


しばらくして、道の先に怪しげな集団を見つけた。

黒いローブを身に纏い、フードを目深に被って、音を立てずに移動している。


俺は小声でトーリアに話しかける。


「おい、前方に怪しげな集団を発見。尾行しようと思いますが、いかがですか、隊長。」


「うわ、本当に怪しいじゃん。よし、尾行するよお兄ちゃん!」


「イエスマム!」


俺がふざけてトーリアを隊長に任命したら、ノリノリで答えてくれた。

森で暮らしていた時、魔物を尾行して巣を特定する遊びを二人でしていたからな。


怪しい集団とは言ったが、大通りに居た魔術師っぽい人もローブのフードを被ってたから、実際はそこまで怪しい集団でもないんだろうけど。


「対象は5人。武器などは所持していないようです。隊長。」


「ふむ、あの人たちはどこへ向かっているのかな。お兄ちゃん隊員。」


「どこだろ。このまま進んだら世界樹だけど、そこまでは行かないよな?」


「アタシ達、まだこの街に何があるか知らないから、わかんないね。」


そのまま尾行することしばし。

怪しげな一行はどんどん人気のない方へと進んで行く。

そしてどんどん世界樹に近づいていく。


「やっぱ世界樹に向かってるんじゃないか?」


「アタシ、さっきの雑貨屋さん寄ってほしかったな。」


「尾行対象になに求めてんだよ。」


「今度行こうね、お兄ちゃん!」


「良いぞ。俺はその前に通ったレストランに行ってみたい。」


「外まで良い匂いが漂ってたよね。絶対おいしいよ!」


次第に建物がなくなり、森の中を歩いていく怪しげな一行と俺たち。


「世界樹の周りって森みたいになってんだな。」


「大通りの周りは登山口になってるって聞いたけど、少し離れるとこんな感じなんだね。」


「そうなのか。まあ、こんな大きいからなあ。外周全部は整備されてないんだろう。」


「ていうかさ、こんな人気のない所まで来ちゃったら、本当に怪しい人たちなんじゃない?」


「なんかそんな気がするよな。この辺でやめとくか?」


「うーん……まだバレてないみたいだし、このまま目的地を突き止めてからママに教えようよ。」


「そうするか。よし、トーリア隊長!気を引き締めて行きますよ!」


「よし!ついてまいれ!」


それからもしばし尾行しつつ歩いていると、ついに世界樹の真下まで来てしまった。


世界樹の根元は、太さが東京ドーム何個分ていうくらい太い根っこが飛び出していて凄い光景だった。

根っこの上に街が作れそうだが、それでも世界樹の根の一本でしかない。


「うおーでっけえ……」


「すっごいね……」


俺もトーリアも、あまりに壮大な光景に呆然としてしまう。

山頂から見る景色とか、雄大な海とか、人は大きすぎる自然に直面すると、動きが止まってしまうのだ。


「あの人たち、あんな所で何するんだろうね。お兄ちゃん隊員。」


「根っこの影に秘密基地とか作ってたら可愛いんだけどなあ。」


「秘密基地だったら可愛いねー」


黒いローブの彼らは根っこの影に建てられた秘密基地に入っていく……


なんて事はなく、どこからともなく大きな斧を取り出した。

木こりの斧というよりは、戦斧。

ハルバードの刃をさらに一回り大きくしたような両手斧だ。


「斧だ。」


「斧だね。」


斧を取り出したのは二人で、一人は銀色、もう一人は黒っぽい金属の斧だ。


彼らは思い切り振りかぶって、斧を世界樹の根っこに叩きつけた。


「あーやっちゃったな。」


「やっちゃったね、あの人たち。」


「世界樹を傷つけたら、良くて死刑なんだっけ?」


「良くてって、死刑より酷い刑罰ってなんだろうね。」


「まあ、魂の存在が確認されてる世界だし、そっちに何かするんじゃないか?」


「うわあ……想像したくないね。」


俺たちは離れた所に立っている木の影から彼らを見守っている。


彼らは何度も世界樹に斧を突き立て、少しずつ傷が深くなっていく。


「まだ切れんのか?」


「この木が馬鹿みてえに硬えんだよ。」


「お主の力が弱いだけじゃないか?」


「ふざけんな!普通の木なら一振りで真っ二つだぜ!」


「ならさっさとやらんかい。」


「うるせえ!文句言うならてめえが切りやがれ!」


なにやら言い争いを始めるローブの集団。

片方のしゃがれた声でジジ臭い話し方の男は何もせず見ているだけだ。

もう片方の銀色の斧を振っている方は荒々しい男の声で言い返している。


「いるいる、自分はやらない癖に文句だけ言う奴な。」


「なんか仲悪そうだね。」


斧を振っている二人は文句を言いつつも同じ場所を斬りつけ、もう二人は野次を飛ばしている。

最後の一人は少し離れた所でただじっと他のメンバーを見つめている。


「あの人はなんだろう。現場監督か?」


「見てるだけだね。でもあの人、結構魔力多いよ。」


「え?あ、本当だ。下手したら俺たちより多いんじゃないか?」


「でもなんか変な魔力だよね。」


「ああ、あんまり見かけない魔力だ。でもなんか知ってるような……」


「あ、カカさんの魔力に似てるんだ!」


「おお、言われてみれば!てことは、あの人はダークエルフなのか。」


フードで顔が見えないから肌の色は分からないが、現場監督さんはダークエルフで間違いなさそうだ。


「他の人たちは魔力少ないな。」


「森の魔物より少ないよ。」


「だな。斧振ってる人が俺の1000分の1以下。何もしてない奴が100分の1ってところか?」


「そのくらいかも!じゃあ、手ぶらな二人は魔法使いかな?」


「多分そうだな。で、あいつらはエルフでもハイエルフでもないって事だ。人間かな?」


「そうかも。転生してから見た事ないから分かんないけど。」


彼らが世界樹を傷つけているところを観察していた俺は、あることに気づいてしまう。


「なあ、物語だとこういうのって、俺たち絶対に気づかれるよな。」


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん。不吉な事言わないでよ。」


「いやあ、だってもうビンビンにフラグ立ってるじゃん。月に立てたアメリカの国旗くらいド派手に立ってるよ。」


そんな俺のセリフが引き金を引いたのか、俺たちが隠れている隣の茂みから、1匹の野ウサギが飛び出した。


「ちっ!もうバレたか!」


「いや、ウサギみたいですぜ、アニキ。」


「なんだウサギか……って、そこの木の裏に魔族か誰か居るじゃねえか!白い翼が見えてんぞ!」


「なに!おい!隠れてないで出てきやがれ!」


俺たちは慌てて木の裏に隠れたんだが、トーリアの翼がはみ出ていたらしい。


「ちょ、トーリア、翼もっと畳めって!」


「無理だよこれ以上!これで限界!」


「ごちゃごちゃ言ってねえで出てこいごらあ!」


「「はい!」」


これ以上隠れていられないと悟った俺たちは、仕方なく木の裏から出ることになった。

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