29話 ダークエルフ
「そういえばカカさん、ダークエルフって言ってましたよね。普通のエルフとどう違うんですか?」
「見た目は生まれつき肌が黒いだけなんですけど、私たちダークエルフは魔力が練れなくて、魔法が使えないんです。」
「え、それ、エルフの国だと結構大変じゃないですか?」
エルフ族は魔法をどれだけ扱えるかで判断される事が多いと聞いている。
ママが若くして国王になれたのは、類稀な魔法の才能があったからだそうだし。
「そうなんです。やっぱりエルフは、どんな魔法を使えるかで判断する人が多いですから。でも、魔力が練れないっていうのは正しい表現じゃないんです。私たちは通常の魔力は練れないんですけど、闇属性の魔力だけは練れるんです。こんな風に。」
カカさんは右手を顔の高さまで上げて、魔力を練り始める。
それは黒い魔力で、カカさんの右手に纏わりつく。
「闇の魔力……」
確かに、俺が練る魔力とも、ママが練る魔力とも全く違う、異質な魔力だ。
「これが発見されたのは5000年ほど前らしいんですけど、それまでダークエルフは、魔法が使えない忌み子として、森の奥にある深い谷に投げ捨てられていたらしいんです。捨てられなかった子供も、酷い迫害に遭っていたとか。」
「5000年前ですか。」
5000年前というと、ママとパパは産まれてないが、杖作ってたマグワートさんは余裕で生きていたくらいの昔か。
全然感覚が掴めないな。
「でも、今では闇魔法の研究もそれなりに進んだお陰で、ダークエルフへの迫害はほとんどありません。ハイエルフにならなかったエルフは、1000年ほどで代替わりしますからね。」
「そうなんですか。じゃあ、カカさんは結構お若いんですね。」
「私はまだまだ若いですよ。ピチピチの28歳です!」
「おお!二桁!」
転生してから二桁の人と初めて会ったよ!
前世でもギリピチピチって言える年齢だよ!
いや待て、前世を含めたら俺より歳下なんじゃね?
え、ちょ、え、マジ?いやいやそんな馬鹿な……
などと俺が内心でカカさんの年齢に騒いでる間に、トーリアが鋭い質問をした。
「でも、なんで急に闇の魔力なら練れるってわかったの?」
いかんいかん、真面目な話だったな。
「なんでも、5000年前に起きた大きな戦争で、世界樹のすぐそばまで攻め込まれたらしいんですけど。その時に敵軍にダークエルフの姿があって、見たことのない魔法を使っていたそうなんです。」
「それが、闇魔法?」
「ええ。戦争が終わった後、敵のダークエルフは全員死んでしまったそうなんです。だから、国内にわずかに残っていたダークエルフで実験をして、闇魔法の研究を進めたそうです。」
「実験って、やっぱマッドなやつだったんだろうな。」
「いえ、本当に大昔ならともかく、5000年前には既に、そこまで酷いことはされていなかったらしいですよ。無関心な人が多かったとか。」
「あ、そうなんですね。」
なら、あんまり非道な実験ではなかったのかもしれない。
でも、もしご先祖様がダークエルフに酷いことしてたら嫌だなあ。
ママが生まれたのは1000年前だし、そんなことはしていないと信じたい。
「というか、この辺の歴史は10代の頃に図書館で習いましたけど、お二人は習ってないんですか?」
「うぇ!?あ、えーと、俺たちまだ15歳だし、これからやるんじゃないですかね?」
「そ、そうそう!歴史の勉強は、まだ、これからだと思う!」
「そうなんですか。王族の方は他にも覚える事が多そうですもんね。」
「そ、そうなんですよ!色々と!な!トーリア!」
「そ、そう!ママは魔法を教えるのが得意だから!」
言えない。魔法しか習ってないだなんて言えない。
歴史嫌いだから、たとえ習ったとしてもすぐ忘れるなんてもっと言えない!
「そ、そうだ。闇魔法ってどんなのがあるんですか?見せてもらえます?」
「良いですよ。まだまだ発展途上で、使える人少ないですからね。では、『ラーク』」
カカさんが魔法を発動すると、その姿がレジカウンターの影に溶けて消え、認識出来なくなる。
「おお!消えた!」
「居なくなっちゃった!」
「ここでーす。」
現れたのは、ショーケースの奥の影だ。
地面に落ちた影から、ニュルンと這い出て来た。
「凄い、全然分かんなかったです。」
「魔力も感じられなかった!」
「えへへ、王子様に誉められちゃった。闇魔法は暗くて見えにくいのが特徴なんです。そこから転じて、認識を阻害したり、逆に偽装を見破ったりといった事も出来ます。」
「あーなるほど。それでサングラスをかけてても正体がバレちゃったんですね。」
「そういう事です!」
「闇魔法面白いですね!」
「でも今のところダークエルフにしか使えないみたいなんですよね。これからもっと研究が進めば、誰でも使えるようになると思うんですけど。」
「それはちょっと残念ですね。」
でも、あの魔法を使われたら暗殺とか簡単に出来そうだし、使える人は少なくていいのかも。
「ねえねえ、アタシそろそろチョコが食べたい。」
「あ、すみません!今ご用意しますね!そちらの席にお掛けください!」
この店に来てからずっと話していたから、確かに口が寂しくなってくる頃だ。
カカさんはショーケースからいくつかのチョコを皿に盛り付けて、テーブルに持って来てくれた。
「わー!きれい!」
皿に盛られたチョコレートはひと口サイズで、どれも綺麗で色鮮やかなデコレーションが施されている。
「こちらのチョコレートはカカオの割合が高い物なので、初めにお召し上がりください。次にこちらがオーソドックスなミルクチョコレートです。この半分赤いチョコレートはフランボワーズのソースが入っていて、酸味がアクセントになっております。」
カカさんの説明を聞きながら、順番に口に入れていく。
ビターな味わいとカカオの風味が最高だ。
ミルクチョコは口当たりがなめらかで、まろやかな甘さが口の中でとろける。
フランボワーズの酸味が甘くなった口に丁度いい爽やかさをもたらしてくれる。
「食後にホットチョコレートとミルクをどうぞ。」
あぁ、少し食べただけなのに、まるでチョコのフルコースだ。
「最高に美味しかったです。」
「うん!今まで食べたチョコの中で一番美味しかった!」
「ありがとうございます!お二方にそう言ってもらえて、光栄です!」
カカさんが半泣きで喜んでくれている。
「いやいや大袈裟ですよ。」
「そうだよ。アタシ達はただ美味しいって言っただけだよ?」
「だって、この国の王子様と王女様に直接認めて貰えたなんて、こんな栄誉ありませんよ。」
「ああ、そう言われるとそうですね。」
「アタシ達、王子とか王女ってことすぐ忘れちゃうね。」
「いやだって、ずっと森に居たら、王子の自覚とか芽生えないだろ。」
「本当だよね。もうしばらくお城で暮らしたら芽生えるかな?」
「お二人は森で暮らしてたんですか?」
「あ、えーと、森にあるママの別荘みたいなところで育ったんです。王都に来たのは最近の事で……これ、内緒にしてくださいね?」
「もちろん、誰にも言いません!」
「その代わり、ちょくちょく遊びに来ますから。」
「うん!アタシも来るよ!」
「ほ、本当ですか!?いつでもお待ちしてます!!」
カカさんが俺たちのファンだっていう言葉は嘘じゃなさそうだし、多分大丈夫だと思う。
それに、ここのチョコレート美味しかったから、また来たいのも本当だし。
「じゃあ、今日のところはこの辺で失礼しますね。」
「あ、アタシ、お土産にチョコください!」
「はい!今お詰め致します!」
俺たちはお土産のチョコを貰って、お代はいらないと言うカカさんに無理やり葉幣を握らせて、店を後にした。
またしても昨日の投稿忘れちゃったんで、昨日の分昼に投稿します。
忘れてなかったら夜にも投稿します。




