27話 王都で今大流行の娯楽
「お、あそこなんかやってるな。見ていこうぜ。」
大通りを中ほどまで進んだところに広場があり、そこで何やら人集りができていたので、立ち寄ってみる事にした。
近くに来て覗いてみると、かなり広い舞台の上で、二人のプレイヤーが離れた所で向かい合っている。
「何かの試合かな?」
「マジックザユグドラシル……どうやらカードゲームの大会らしいぞ。」
辺りを見回すと、舞台から少し離れたところにトーナメント表や、カードショップがあった。
マジックザユグドラシルという、エルフ族の英雄や偉人がモチーフのカードゲームらしい。
『先行は赤!それでは第8試合、始め!』
司会者がマイクを持って開始の宣言をすると、舞台全体に魔力が充満したのがわかる。
舞台には広い空間を挟んで赤と青の二つの台座が向かい合っていて、プレイヤーはそこにカードを並べて対戦するようだ。
「『ゴブリンロード』を召喚!このカードの効果でさらに『ゴブリンウォリアー』を三体召喚!」
赤のプレイヤーがそう宣言してカード何枚かを台座に並べると、二人の間に計4体のゴブリンが召喚された。
魔力の流れを見るに、あれは本物のゴブリンではなく、舞台から空中に投影されているらしい。
「『ヴィラントレント』を召喚。さらに『ゴブリンアーチャー』をヴィラントレントの上に召喚。」
青のプレイヤーが宣言すると、ヴィラントレントとゴブリンアーチャーが舞台に召喚される。
「スキルカード『スタンピード』!このカードの効果でゴブリンロード及びゴブリンウォリアーのアタックは1.5倍となり、敵陣に突撃する!征け!ゴブリン達よ!」
赤プレイヤーの号令一下、ゴブリン達が青陣地に進軍する。
青陣地のゴブリンアーチャーはヴィラントレントの上からゴブリン達を狙撃していくが、ひと回り大きいゴブリンロードと1匹のゴブリンウォリアーに足元まで辿り着かれてしまう。
ヴィラントレントは攻撃を受けつつゴブリンロードを締め上げて倒すが、残るゴブリンに倒されて消えてしまう。
しかし樹上のゴブリンアーチャーはノーダメージのまま地面に降り立ち、最後のゴブリンを射抜いて戦闘が終了した。
戦場に残るのは1匹のゴブリンアーチャーのみ。
「な、ゴブリンスタンピードで倒せないだと!?」
「私のターンだな。『〈近衛騎士団長〉コンメリーナ・シルバーソード』様を召喚し、ターンエンド。」
派手なエフェクトとともに、舞台上にコンメリーナさんが召喚された。
着ている鎧も今日みたものよりかなり派手に装飾されている。
「コンメリーナさん、めっちゃ強そうじゃん。」
「お城で見た時よりキラキラしてるね!」
さっきまでの魔物同士の戦いも見応えがあったが、知ってる人が出てくるとちょっとワクワクするな。
「ならば俺は『〈百鍬〉のホーマン』様だ!」
「お、赤の人はホーマンさんを召喚したぞ。」
「お城に居た、庭師のおじちゃんだよね。あの人戦えるの?」
青陣営のコンメリーナさんが、二本の剣を構えながら突撃していく。
赤陣営のホーマンさんは二つ名の通り100本の鍬を操り、それを迎え撃つ。
舞台中央で剣と鍬が交わり、火花が舞い散る。
「おお、鍬って武器になるんだな。」
「庭師のおじちゃん強いじゃん!」
100本の鍬が四方八方から隙間なく襲い掛かってくる様は、幾何学模様のように綺麗で凄まじい。
対するコンメリーナさんは、二本の剣と幾つもの魔法を駆使して、百鍬の包囲網の突破を試みる。
「あの人たちこんなに強かったのか。いや、これゲームだから、本物はもっと凄いってことか。」
「ママと戦ったらどっちが強いんだろうね。」
「どうかな?ママは後衛だし、この舞台くらいの距離なら負けちゃうかもな。」
舞台中央で戦う二人の決着はまだ着きそうになく、そのまま次のターンが始まった。
ちなみに、生き残っていたゴブリンアーチャーは鍬の一振りであっさり退場している。
「『〈戦女神〉アンジャベル』陛下を召喚する。」
「俺は『〈連国の王〉バーベイン』陛下を召喚だ!」
「おお、ついにママが出てきたぞ。」
「ママがんばれー!」
「あ、こら、あんまりママとか言うな。お忍びなんだから。」
「あ、そうだったそうだった。」
ママは舞台上に出てくるなり、周りに向かって手を振ってアピールしている。
一通り演出が終わるとコンメリーナさんの後ろから魔法を打ち出した。
そして赤陣営に呼び出されたのはバーベイン魔法国の初代国王。
彼もママ同様に後衛らしく、後ろから魔法を打ち始める。
「『〈雷神の竜王〉アレイクス』陛下を召喚。場にアンジャベル陛下とアレイクス陛下が揃った事により、スキル『一途な愛』が発動。私の陣営のユニットは全ステータスが1.2倍される。」
「『〈獣姫の女王〉オーキッド』陛下を召喚だ!」
「パパまで出てきた。」
「一途な愛だって。確かにラブラブだったもんね。」
「ああ、見てるこっちが恥ずかしくなるくらいな。」
パパはドラゴン形態で出てきて、力強い咆哮を上げると戦場に雷を降らせた。
そしてオーキッドさんは防御結界を張ってパパの雷撃を防いでいる。
「私は『〈燃え盛る新芽〉グロリオーサ』殿下を召喚してターンエンドだ。」
「は!?」
「お兄ちゃん!?」
青プレイヤーが次に召喚したのはまさかの俺だった。
いやいや待て待て、一体いつ実装されたんだ?
生まれてまだ15年だぞ?
というか俺全然強くないし、歴代国王と並んで召喚されても恥ずかしいだけなんだけど!?
「俺は『〈鍛治の友王〉クレマチス』陛下を召喚!これによりスキル『連合王国』が発動し、俺のユニットは全ステータスが1.5倍となる!このまま決める!」
「最後に『〈竜人〉トーリア』王女を召喚する。場にアンジャベル陛下、アレイクス陛下、グロリオーサ殿下、トーリア殿下が揃った事により、スキル『ロイヤルファミリー』が発動。全ステータスが2倍される。」
「え!アタシも!?」
「トーリアまで実装されてるのか……」
舞台に召喚されたトーリアが翼を広げ、笑顔で両手を振っていてかわいい。
「全ステータスが2倍された事によって、私の陣営のマジックアタックが2万を超えたため、極大魔法を発動する。極大魔法『緑の侵略』!」
青プレイヤーの宣言の後、大量の樹木が勢いよく生えてきて、赤陣営のユニットもプレイヤーも全てを貫き、飲み込んだ。
「ぐあああああああああ!!!!!!」
赤プレイヤーは断末魔を上げてその場に倒れ込む。
『勝者、ブループレイヤー!』
司会の勝利宣言が聞こえると、観客が一斉に歓声をあげた。
舞台上では両プレイヤーが握手をしている。
「負けちまったが、良い試合だったぜ!」
「ええ。一つ間違えば私の負けだったでしょう。」
会場は試合の決着に沸き立っていた一方、俺とトーリアは、自分が出てきてから試合どころではなくなっていた。
「なあ、なんだこれ。」
「なんだろうね。」
俺とトーリアは呆然と立ち尽くすのであった。




