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26話 お祭り散策

「さて、まずは大通りから見ていくか。」


誰にも気付かれずに城を抜け出した俺とトーリアは、城前の広場にたどり着く。

城前広場からは、真北の世界樹に向かって真っ直ぐ大通りが伸びている。


一応は車道があるみたいだが、走っているのは非常にゆっくりと歩くゴーレム馬車だけだ。

事故が起こる速度じゃ無いから、信号なんてないし、人が普通に横断している。


そして車道の両サイドに歩道があり、さらに車道の間、中央分離帯の位置にも歩道があった。

そこには多種多様な屋台が並んでいる。


ちなみに、空は飛行魔法で飛ぶエルフや、翼を持った種族が行き交っている。


急ぎの人は空を飛んで、そうでない人はのんびり馬車で、という街づくりのようだ。


「パレードの時は飛んでる人居なかったよね。空を飛んでる人がいっぱい居ると、異世界だなあって思うよ。」


「わかる。魔物とか魔法も異世界っぽいけど、空を飛ぶのってファンタジーだよな。」


「アタシ、まずは屋台から見たい!」


「いいぞ。じゃあほら、手を繋いで行くぞ。」


「お兄ちゃん!そういうのはもっと自然にスッとやるんだよ!」


「何言ってんだ。小さい子は手を繋いでおかないと危ないだろ。特にお祭りみたいな人が多いところはな。」


「あー!アタシのこと子供扱いした!お兄ちゃんと二つしか違わないのに!前世も入れたら30歳なのに!」


「いいじゃねーか今は13歳だろ?」


「うん!いいよ!」


「いいんかい!」


そんなやりとりをしながら、俺たちは大通りの屋台を物色していく。


「屋台ってどこの世界もあんまり変わんないんだな。あ、スープとかは前世では見なかったな。」


「ヴィラントレントの根から出汁を取ったスープだってさ。飲んでみる?」


「あー最初に倒したあいつらか。あれ食えるんだな。試しに飲んでみるか。」


「アタシはあそこのクレープ食べたいな。あっ、お兄ちゃん大変!アタシたちお金持ってないよ!」


「ふっふっふ、その辺は抜かりないとも。ちゃんとママからお小遣いを貰ってます!」


「おお!さすがお兄ちゃん!」


「じゃあトーリアの分はこれな。」


「なにこれ?葉っぱがお金なの?」


「葉幣って言うらしいぞ。世界樹の葉に印刷して魔法で保護してるらしい。エルフ族の魔法技術の最高傑作とかなんとか、ママが言ってた。」


「へえーオシャレだね、これ!これでいくらくらいなの?」


「それは10000リフ札だな。他に1000、100のお札があるんだってさ。大体1リフ1円らしいよ。」


「全部葉っぱなんだ!」


「よし、じゃあまずスープ買いに行くか!」


「いこいこー!」


俺たちはスープの屋台の列に並び、すぐに俺たちの順番が回ってきた。


「いらっしゃい!いくつ欲しい?」


「二つください。」


「二つね!200リフだよ!」


俺は200リフを支払って、紙コップを貰う。

中身は透明な焦茶色のスープだけで、具材はない。


「具が入ってないんだな。」


「みたいだね。いただきまーす!」


「いただきまーす。……うげ、なんだこれ。」


「だにごれ……おいじぐない……」


「めちゃめちゃ渋いし土の味がする。これ多分、漢方とかそういう系じゃないか?」


「……お兄ちゃんあげる。」


「いや、いらんよ。」


「じゃあ口直しにクレープ買って。」


「それは俺も欲しいから買おう。」


ということで、次はクレープ屋さんへ。


「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりですか?」


「俺はチョコバナナと……トーリア何にする?」


「ベリーベリーストロングベリー!」


「なんだそれ……」


「美味しそうじゃん?」


チョコバナナとベリーベリーストロングベリーですね、お作りしますので少々お待ちくださーい。」


屋台のお姉さんがクレープを焼き始めたので、俺はそれを眺めつつ、周囲の屋台を物色していたのだが、そこである事に気づいた。


「なんかあれだな。串焼きとか焼きとうもろこしとか、焼き系の屋台少ないな。」


「あ、確かに。炭の匂いとか、香ばしい匂いもあんまりしないね。」


「お客さん、旅人さんですか?この街は初めて?」


「あ、はい、そんな感じです。」


「じゃあ知らないのも無理はないですね。この都市は、というか世界樹の下は結界で覆われているのはご存知ですか?」


「はい。それは聞きました。」


「その結界は正規の手続きを踏んでいない入国や、魔物の侵入を防いだりしてくれるんですけど、他にも火を起こせなくしてるんですよ。」


「へー火が使えないんですか?」


「そうなんです。マッチなどで物理的に起こすことも、魔法で起こすことも出来ません。だから焼き物の屋台は少ないんです。」


「じゃあ、このクレープはどうやって焼いてるんですか?」


「これはMHコンロです。マジカルヒーティングですね。」


「ま、マジカルヒーティング?」


「魔力を注ぐと熱を発する魔道具のようなものです。この街はオールマジカルなんですよ。」


「あ、そうなんすね……」


ダ、ダセエ……

IHコンロとオール電化のノリじゃん。


「はい!クレープ出来上がりましたよ!こっちがチョコバナナで、こっちがベリーベリーストロングベリーです!」


「ありがとうござ……ストロングっすね……」


「わー!すごい!お兄ちゃんのやつより10倍くらい大きい!」


「お代はチョコバナナが500リフで、ベリーベリーストロングベリーが5000リフ、合わせて5500リフです。」


「値段も10倍ストロングっすね……これで。」


「はい、ちょうどお預かりします。ありがとうございました。」


このクレープ屋台は隣にベンチが並んでいるので、そこで食べることにする。

俺はクレープを片手に、トーリアはクレープを両手で抱えて移動する。


「それ、どうやって食うんだ……」


「かぶり付けばいいんじゃない?いっただきまーふ」


「ちゃんと言い切ってから食べなさい。いただきます。」


もぐもぐ……うん、普通のチョコバナナクレープだな、普通にめちゃくちゃ美味い。

やっぱチョコとバナナは最高の組み合わせだよな。


「トーリアのひと口ちょうだい。」


「いいよー!じゃあお兄ちゃんのもひと口!」


「ん、ほい。」


「うーん!チョコバナナも王道で美味しい!」


「わかる。」


「じゃあはいお兄ちゃん、あーん。」


「あーん……ほほぉ、いちごの風味がガツンとストロングだ。いちごを食べてガツンと来るなんて言う日が来るとは……」


「このいちご凄い美味しいよね!クリームに全然負けてないよ!」


俺たちは大通りの真ん中で、ベンチに並んでのんびりとクレープを齧っている。


こういう時間いいよなあ。ずっと続けばいいのに。


「ねえお兄ちゃん。なんか今、兄妹みたいだよね。」


「なんだいきなり。でもそうだな。兄妹っぽいよな。」


「アタシさ、ひとりっ子だからお兄ちゃんとこういうの憧れてたんだよね。」


「分かる。俺もこういうの憧れてた。」


どうやらトーリアもこういう時間を気に入っていたらしい。なんか嬉しいね。


「そういえば、トーリアは前世から兄を欲しがってたけど、なんで兄なんだ?姉とか弟じゃなく。」


「あーなんでだろ。部活の先輩と後輩が、姉妹みたいな感じだったからかな。弟は、少し下の従兄弟が弟みたいなものだったな。」


「なるほどな。そう言われると、俺も妹ポジションだけ周りに居なかったな。だから妹が欲しかったのかもしれん。」


「ひとりっ子だと兄弟を求めちゃうよねー」


「兄弟が居るやつはみんな口を揃えて邪魔だって言うけど、俺はトーリアのこと邪魔だなんて思った事ないな。むしろ狩りの時は前に居てくれないと困る。」


「アタシも思った事ないよ。お兄ちゃんの援護は的確だし。あっ、でもたまにはお兄ちゃんが前に出てくれても良いんだけど?」


「うっ……俺、近接戦の才能無いんだよなあ……」


「アハハ!お兄ちゃん隙だらけだもんねー!」


「う、うるさい!現代日本人なんてみんな隙だらけだろ!」


「そんな事ないでしょー!」


その後も俺たちは駄弁りつつ、クレープを平らげて雑踏の中を歩き出した。

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