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25話 城は抜け出すもの

「なあトーリア、やっぱまだ食べ足りないよな?」


王宮に帰ってきた俺は、横にいるトーリアに聞いてみる。


「うん、全然足りないよ。」


トーリアはお腹を摩りながらそう答えた。


トーリアの背は俺より少し低いんだが、ドラゴンに近い身体だからか、よく食べるのだ。

というか、胃袋に空間魔法でもかかってるのかと思うほどよく食べる。

まあ太っているわけじゃないし、大丈夫なんだろう。


「ならさ、こっそりお城を抜け出して、街で買い食いしようぜ。祭りで屋台も出てるらしいし。」


「いいね!じゃあ早速行こうよ!」


「待て待て、流石に昼間パレードで回った街だぞ。軽く変装して行こう。」


「変装!いいね面白そう!」


という事で、俺とトーリアは衣裳部屋へ行き、適当なフード付きの外套と伊達眼鏡を身につけた。


「よし!じゃあ取り敢えず城の外壁まで行ったら、見つからないように飛んで行こう。」


「賛成!」


俺たちは意気揚々と王宮を出て、敷地の外側へと向かったのだが、すぐに思わぬ障害に出くわしてしまった。


「ピピッ……王子殿下、王女殿下、ドコヘ行カレルノデスカ。」


「うわあ!えっと、ちょっと外まで……」


「外出届ガ提出サレテイマセン。先ニ外出届ヲ提出シテクダサイ。」


「あ、はい……。」


なんか、めちゃめちゃ機械音声の騎士さんに止められてしまった。

というか、フードを目深に被ってたのに、なんですぐバレたんだろう。


「ねえねえ、もしかして、あなたはゴーレムさん?」


「ピピッ……私ハ巡回ゴーレムデス。登録サレタ魔力ノ波長ト照合シテ、不審者ヲ探スノガ仕事デス。」


「あ、ゴーレムだったんだ。」


なるほど、魔力の波長を読み取ってたから、たかが外套一枚くらいで誤魔化されなかったのか。

このゴーレム、めちゃくちゃ高性能なんじゃないか?

というか、昨日王宮に来たばっかだってのに、いつのまに魔力の波長なんて登録されていたんだか。


「一度王宮マデ戻リ、外出届ヲ提出シテクダサイ。」


「わ、わかりました。」


ゴーレム騎士の無機質な圧力を浴びて、素直に頷いてしまう俺。

少し情けなく思ったが、まだまだ抜け出す事を諦めた訳じゃない。


「よし、一度王宮まで戻り、作戦会議だ。」


「お兄ちゃん、作戦会議って何話すの?」


「そんなの決まってるだろう。どうやってゴーレムの目を欺くかだ。」


「え?だって外出届出すだけじゃないの?」


「ばっかお前!それじゃ抜け出す事にならないじゃないか!変装までしたんだぞ!」


「えー?抜け出すごっこでいいじゃん。」


「だってお前、外出届なんて出したら、多分だけど、護衛を沢山引き連れて行かないといけないだろう?トーリアと二人で楽しめないじゃないか。」


「えっあ、そうだね。……もう!急に二人きりでお出かけなんて言って!」


「トーリアこそ、なに急に照れてんだよ。」


トーリアが珍しく頬を赤らめて照れている。

ははーん、さては、兄ちゃんと遊べて嬉しいのか。

確かに、森での狩りも楽しかったが、兄妹で街で遊ぶのもやってみたいよな、お互い一人っ子だったし。


「まあそういう訳で、なんとかゴーレム防衛網を掻い潜りたいんだが、何かないかな?」


ズボッズボッ


「これを使ってください。グロウさま。」


「トーリアさまも、どうぞ。」


「「うわあ!」」


びっくりした……

ドライアド達は急に地面から生えてくるから心臓に悪いんだよな。


二人のドライアド、ベリルとベールは、それぞれにサングラスを持っていた。


「ベリル、このサングラスは?」


「これは、認識阻害の魔道具です。このサングラスをかけていると、魔力の波長が認識出来なくなります。」


「おお、そんな便利なものが。」


俺はベリルからサングラスを受け取って、早速かけてみた。

着けている本人には全く分からないな。


「どうだ?トーリア。」


「うーん、アタシは着けてない方が好きかな。」


「いや、見た目の話じゃなくて、魔力の波長なんだが。」


「あ、そっちね!えっとね、おお!なんか変な感じだよ!誰なのか分かんない感じ!」


「ふむふむ、俺だとはバレないんだな。でもそれだと、今度はゴーレムに不審者って認識されそうだな。」


「そうです。なので、女王さまは魔力を遮断する結界を張って抜け出していたそうです。お父さまが言ってました。」


「ああ、ママも抜け出してたんだ。」


「お兄ちゃんて本当ママと似てるよね。」


「それは喜んで良いやつなのか?」


まあそれはともかく、魔力を遮断する結界は、ママから教わってるから大丈夫だ。


「よし、じゃあ結界を張るぞ。トーリアは俺のそばに来てくれ。」


「はーい!」


「ベリル達はどうするんだ?」


「僕たちはここで待ってます。」


「行ってらっしゃいませ。」


「そうか、じゃあ行ってくるな。」


俺は魔力遮断結界を、俺とトーリアを包むようにして張った。


そのまま敷地の外側へと歩いていくが、ゴーレムが近寄ってくる気配はない。


念のため、透過の結界も張っておこうか。

これは光を屈折させて、結界の中に何も居ないように見せる魔法だ。

かなり魔法に優れた人なら違和感を覚えるが、そこそこの魔法使いには見抜けない。

と、ママには言われている。


「今度は大丈夫そうだな。」


「流石お兄ちゃん!魔法の腕はママ並みだね!」


「いや、まだまだママには敵わないよ。ママは目を離すとすぐ新しい魔法作ってるからな、当分追いつけそうもない。」


当分っていうか、千年は追いつけないだろうな。


「よし、じゃあ飛ぶぞ!」


俺たち二人は城の外壁を飛び越えて、夜の街へと繰り出した!



―――――――――



城の尖塔、この街で一番高い場所にて、3匹のドラゴンが鎮座している。


「む?王宮の方に不審な気配を感じる。」


「なに?どれどれ……あれは、今さっきここへ来たアレイクスさんの子供たちじゃないか。」


「はは、若い頃のアンジャベルさんを思い出すね。」


「今でこそアレイクスさんの側にずっと居るが、昔はフラフラと、好奇心の赴くままといった感じだったねえ。」


「微笑ましいが、一応、近衛騎士団長のコンメリーナさんに連絡しておこうか。」


「それが良いだろうね。」


「王子の無断外出となると、お酒は控えておいた方がいいかな?」


「まだ大丈夫じゃないか?ちゃんと異常に気付けたんだから。」


「それもそうか。それじゃあ王子王女の無断外出に、乾杯。」


「「乾杯。」」


そして夜は更けていく。

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