24話 3つの王家
「ちょっと!私のかわいい子供たちをいじめないでくれるかしら?」
「「ママ!」」
「あなたたち、うちの子はまだ10代なのよ。ジジイどもは引っ込んでなさい。」
ママが強引に周りの貴族を下がらせて、俺とトーリアを引き寄せてくれた。
ああ、ママがちゃんと国王してて安心する!
しかし、さっきカトレアと名乗った女性エルフだけ、臆さずママに話しかけてきた。
「あらあら、陛下はいけずやなあ。陛下が連れないお人やさかい、王子はんとお話ししよう思ただけやないの。」
「あらカトレア、来てたのね。私に挨拶もせずに私の息子をナンパするなんて、相変わらず良い度胸してるわね。」
「ナンパやなんて人聞きの悪い。わたくしは一緒に踊ろう言っただけやで?」
「ナンパみたいなもんでしょうが。全くあんたは昔から顔が良いエルフを見るとすぐ寄ってくるんだから。」
「あら、陛下こそあんなに恋愛には興味ないなんて言ってはったのに、アレイクスはんと出会ったらあっさり恋に落ちてしもうて。」
「そ、それは今関係ないでしょ!」
ママとカトレアさんが言い争いを始めてしまった。
なんかめっちゃ親しげだけど、この人も親戚かな?
と、そこへさらに一人の男性エルフが会話に加わった。
「おう!お前さんらは相変わらず仲良いな!」
「仲良くないわよ!」
「あら、わたくしは仲良うさせてもろうておりますよ、陛下。」
新たにやって来た男性は、エルフにしては珍しく、赤く焼けした肌の色をしている。
洒落た厚手のジャケットを着ていても分かるほどに筋肉質な身体だ。
「聞いてよベルウォーカー!カトレアが私の可愛いグロウをナンパしてたのよ!」
「はっは!お前さんは昔っから面食いだったからな!初めて会った時は、俺も詰め寄られたなあ。相変わらずか!」
「嫌やわあ、そない昔の事掘り返して。女の子にモテまへんえ。」
「はっは!そいつは悪かったな!」
新しくやって来た人はベルウォーカーさんという名前らしいな。
エルフらしからぬ風貌だったが、喋り方もエルフらしくない荒々しさだな。
ママとはどういう関係なんだろう?
「お、そこに居るのがアンジャベルの息子か!俺はクレマチス王家のベルウォーカーってんだ!よろしくな!」
「あ、よ、よろしくお願いします。グロリオーサです。」
完全に油断していた俺は、急に話しかけられて少し言葉に詰まってしまった。
「そっちの白い嬢ちゃんが、アレイクスの娘っ子だな!よろしくな!」
「あ、よろしくお願いします!トーリアって言います!」
「なんだ、二人とも緊張してんのか!アンジャベルが引きこもってたから人慣れしてねーんだな!」
「引きこもりじゃないわよ!新婚生活って言ってよね!」
「何言ってんだ。200年も森から出て来なかったら引きこもりだろうよ。」
「そうやでえ。200年ぶりに会うたんやから、そうツンツンせんでもええやんか。」
うわあ、こういう親戚の集まり特有の既に形成されてる空気感、波に乗るまで少し大変なんだよなあ。
まあでも気になったことを聞いておこうかな。
「あ、あの、クレマチス王家ってのはなんですか?」
「なんや、陛下は歴史も教えてへんの?」
「ま、どうせ魔法ばっかやってたんだろうな。」
「ちょ、一通り教えたわよ!え、教えたわよね?」
「えっと、教えてもらったのは、昔の王族の三兄妹がそれぞれ国を作ったから、この国は3つの国の連合王国なんだよね。ママがバーベインズ魔法国で、あと二つ……なんだっけ?」
「おいおいアンジャベルよ……」
「せっかく顔が良いのにもったいないわあ。」
ベルウォーカーさんとカトレアさんが若干呆れた表情を見せている。
「ちょっ、ちょっとグロウ!嘘よね!教えたわよね!」
「いや、教わったとは思うんだけど、えーと……。あ、それがクレマチスか!クレマチス工業国!それと……」
「最後はオーキッド商業国だよね、お兄ちゃん。」
「あ、そうそれだ!良く覚えてたなトーリア!」
「そう!よく覚えてたわね!偉いわよ!」
「「へへへー」」
危なかった。
トーリアが助けてくれなきゃ最後の一つは出て来なかったかもしれない。
「おいおい、甘やかし過ぎだぜお前さん。」
「良いのよ!可愛いんだから!」
「せやなあ、グロウはん可愛らしいもんなあ。」
「あんたにグロウと呼ばれる筋合いはないわ!」
「ええやんか名前くらい。なあ、グロウはん?」
「え、ええ、良いですよ。」
「ダメよ!グロウが良くても私がダメよ!」
「もう、いけずやなあ。」
いかん!また親戚のおばちゃんの独特のペースに飲まれてる!
いや、おばちゃんというには若くて美人なエルフ女性なんだが……。
「あ、あの、という事はベルウォーカーさんはクレマチス工業国の、えっと、あ、国を作ったクレマチスさんの子孫という事ですか?」
「おう!その通り!俺のフルネームは、ベルウォーカー・ダスト・ユグドラジールだ!テストに出るぜ!」
「おお!だからクレマチス王家って言ってたんですね!」
確か、おとぎ話では、次男のクレマチスさんはドワーフの国と交流を持ってたんだっけ?
あと、鍛治にハマって工業を発展させたとか。
それで、筋肉質な身体で荒っぽい話し方なのか。
「ちなみにうちはオーキッドの王家やで。カトレア・トラド・ユグドラジールや。」
オーキッドっていうと、獣人族の男性と恋に落ちた末っ子長女のオーキッドさんの国だな。
確か、海に面してて、色んな国と交流があるんだったっけ?
なるほど、つまりここに居るのは、3つの王家の当主たちか。
あ、てことは俺も敬語で話さないといけない相手かな?
そういうの何にも教わってないんだよな。
あとでママに聞こう。
「それにしてもアンジャベルの人気は相変わらずだったな。また昔みたいに、カトレアとユニット組まねえのか?」
「やるわけないでしょ。」
「うちはまたアンちゃんと歌いたい思っとるよ?」
「ユニットってなんですか?」
「おう、こいつら若い頃は二人でユニット組んでアイドルやってたんだよ。パレードで騒がしかっただろ?あれはあの頃のファンだな。」
「あぁ……」
なるほど、アイドルみたいな感じだとは思ってたけど、カトレアさんとペアだったのか。
二人とも美人だし、そこへ王族っていう付加価値まで付いたらそりゃ人気になるよなあ。
「アタシ、アイドルしてた頃のママ見てみたかったー!」
「あら、ほんならうちの国に来たらアルバム見せたるわ。録画したライブも残っとったはずやで。」
「本当ですか!今度お邪魔したらぜひ見せてください!」
トーリアはアイドルとか好きだったのか、興味津々みたいだ。
かくいう俺もめっちゃ気になってるけど。
「なんでそんなのまだ残してんのよ!グロウ、トーリア!こいつらの相手は私がしとくから、あなた達は先に帰ってなさい。」
「「はーい。」」
ママは照れて顔を赤くして、俺とトーリアに帰れと言い出した。
パレードの様子を見る限り、黒歴史というほどじゃないみたいだったけど、子供に見られるのは恥ずかしいのかな?
「もう少しええやないか。なあ、ベルはん。」
「そうだぜ、二人ともまだ食い足りねえだろ。」
「いえ、もうお腹いっぱいなので!」
「アタシも!」
ママがアイドルしてたって情報は面白かったが、このまま残ったらまた挨拶ラッシュが始まりそうだから、お暇しようと思う。
トーリアもそのつもりのようだ。
「なので、失礼しました!」
「また今度遊ぼうねー!」
「はっは!俺の国に来たら遊んでやるよ!」
「いつでもおいでやす。美味しい海の幸もありますさかい。」
そして俺とトーリアはそそくさと会場をあとにした。
実を言うとまだ食べ足りなかったんだが、あそこではゆっくり食べられそうも無いからな。
そうして俺たちは、王宮へと帰って行った。
カトレアさんはこの世界で言うと京都弁を話しているのですが、作者の知り合いに関西圏出身の人が居ません。
ましてや京都弁に詳しい人も居ないので、完全に雰囲気で書いています。
ふんわりとお楽しみください。
出来れば誰か監修してください。




