19話 女王の誕生祭パレード
昨日は完全に投稿するのを忘れてたので、今日は昼と夜の2回更新します。
「見てお兄ちゃん!お城だよお城!すっごい綺麗!」
「すげーなこれ。本物じゃん。」
今日はママ、もとい女王陛下の千歳記念の誕生祭初日だ。
今日から一ヶ月、ママと俺、トーリア、そしてパパの四人は王都をパレードで練り歩く。
そのスタート地点がこのお城である。
お城は王宮と同じ敷地内にある建物で、間にめちゃくちゃ広い庭園があるが、歩いて行くことができる。
王宮と同じ純白の外壁にエメラルドグリーンの屋根が映える。
前世のディスティニーランドのシャンデリア城みたいな西洋風の尖った屋根が特徴的だ。
一番高い尖塔の先が膨らんでいて、そこからドラゴンが顔を出して遠くを見据えている。
「あそこのドラゴンさんはパパの部下のドラゴンさん?」
「そうだよ。あそこから街を見守っているんだ。」
あのドラゴンたちがみんなパパくらい強いんだったら、この城の軍事力って結構高いよな。
そういえばエルフは50万年不敗とか、前にママが言ってたな。
「みなさま、こちらの馬車にお乗りください。」
ベリルが案内してくれた馬車は、お祭りの山車のような作りをしていた。
多分、パレード用の馬車なんだろう。
そして何より気になるのが、それを引く馬だ。
全身が銀色に輝く、金属製の馬だったのだ。
「ママ、あのかっこいい馬はなに?ロボット?」
「似たようなものね、アレはゴーレムよ。馬の形したのは私も見た事ないわね。ルスロー、アレはドワーフのとこの新型かしら?」
「左様でございます。50年ほど前に導入した最新式の馬型ゴーレムでございまして、あの馬に引かせた乗合馬車が最近のトレンドでございます。」
「ゴーレム!かっこいい!」
銀色の胴体に、緑に光る瞳、嘶くことも身じろぐこともせず静かに佇むその姿。
たまらなくかっこいい!
ていうか、50年前で最新式なんだね。
前世だったら旧式って呼ばれるくらい古いだろうに、トレンドなんだ。
そろそろ俺もエルフ的時間感覚に慣れていかないといけないな。
「それではみなさま、時間になりましたので出発いたします。」
御者席に座るコンメリーナさんの合図で馬ゴーレムがゆっくりと歩き出した。
全身が金属で出来たゴーレムだが、その動きは滑らかで、俺たちが乗る山車も滑るように動き出す。
城の門を抜け広場に出ると、割れんばかりの野太い歓声で出迎えられた。
広場を埋め尽くすのはパッション漲るエルフ達。
エルフってもっと静かなイメージだったけど、思ったよりパワフルな歓声をあげるんだな。
ママも満面の笑みで手を振りかえしている。
「みんなー!お祝いありがとー!!」
「「え゛!?」」
なんだ今の声!?
「アンの誕生祭に来てくれてありがとー!」
「「アン!?」」
俺とトーリアは思わず見つめあった。
「ねえ、ママの口から聞いたことないような甘い声が聞こえるんだけど。」
「今、自分のことアンって呼んでたよね。」
「ママってアイドルとかやってたのかな?」
「なんかそんな感じだよね。いつの間にかマイクみたいなの持ってるし。」
馬車に続いて竜形態のパパが城の門を抜けると、今度は絹を裂くような黄色い歓声が上がる。
「あ、これもしかしてパパも大人気かな?」
「もしかしなくてもそうみたいだね。」
「そして!ちょっと前に産まれた私たちのかわいい子供達よ!」
そう言ってママは俺たちを引っ張ってきて、マイクを向けてくる。
「ホラホラ、二人もなんか言って!」
「えぇ!?」
何にも考えてないんだけど!
こういう感じなら事前に言っておいてよね!
「え、えーと……、ママの息子でこの国の王子のグロリオーサです。よ、よろしくお願いします……。」
「うおおおおおお!」
「キャー!!かわいいー!!!!」
「初々しくてたまんないわ!!!!!」
俺は緊張して控えめに挨拶したのに、何故か大歓声で迎えられてしまった。
「グロウ、意外とあざといわね。」
「むう、お兄ちゃんやるなあ。次はアタシの番だね!
みんなー!こんにちわー!アタシはトーリア!ママとパパの子供で、竜人っていう新しい種族なんだって!仲良くしてね!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「トーリアちゃん!かわいい!!!」
「なんて美しい翼なんだ!ツガイになって欲しい!」
「キャー!かわいいわ!」
トーリアはこういうの慣れてたのか。
野郎にモテるだろうとは思っていたが、羽を褒めてたのは魔族か?獣人か?
よく分からんがけしからん奴がいるようだな。
「みんな!新しいバーベインズ王家をよろしくね!それと、分かってると思うけど子供達に手を出したら消し炭にするからね。」
ママは頭上に大きめの火球を生み出して脅迫する。
「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「いや、なんで今ので歓声が上がるんだよ。」
「踏んでくれ女王陛下ー!」
「あ、女王ってそういう……。」
あれ?エルフってやばい奴ら?
大歓声のまま広場を抜けた俺たちは、大通りを進んでいく。
すると、次第に歓声は穏やかになり、不穏な声も消えていく。
「この辺の人たちは静かだね。」
「ルール守らない奴らは叩きのめしたからね。騒いで良いのは城前広場だけよ。」
「あ、そんなルールあるんだ。」
そうか、叩きのめしたから目覚めちゃった奴がいるのか。
この辺は所謂エルフと言われて想像するような、穏やかな観客が多いみたいだな。
「良かった。エルフってヤバい種族かと思っちゃったよ。」
「アタシもずっとアレだと疲れちゃうかも。」
「ていうか、さっきは気づかなかったけど、綺麗な街だね。木が多くて、自然との調和っていうの?とにかく良いね。」
「お花がいっぱい咲いてて、綺麗な街だね。アタシこの街気に入ったかも!」
「そう?気に入ってもらえて良かったわ。」
「木造の建物が多いんだね。あと、ツリーハウスみたいなのもあるね。」
「今街に残ってるのは大半が世界樹の直系の子孫だから、なるべく切らないようにしてるわ。ツリーハウスにはそういう木が使われているのよ。」
「あんなに大きな木でも世界樹の子供なんだ。」
「世界樹おっきいもんね!空が見えないもん!」
そう、この王都は世界樹のすぐそばにあって、街の空は世界樹の枝葉に覆われている。
太陽は遮られて見えないんだが、世界樹が光っているのか光は通すのか分からないが、ほどよく明るい。
「世界樹が守ってくれてるから、王都周辺は気候災害に遭ったことはないし、雨も降らないのよ。」
「それだとこの辺の木は育たないんじゃないの?」
「降った雨は一度世界樹が吸収して、光合成で生み出した栄養と一緒にこの辺り一体に流してくれるのよ。だから、雨は降らないけど作物は育つのよね。」
「へえーママみが強いね世界樹。」
「世界樹は我らエルフやドライアド、そして植物の母と呼ばれているからね。この近くにいる限り、飢えて死ぬことはないわ。」
「ありがたやーありがたやー」
俺たちはおしゃべりしながらも民衆に手を振り続け、大通りを折り返して城に戻ってきた。




