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17話 すくすく育って10年後

「今だよお兄ちゃん!」


「『スナイプ』!」


俺の放ったスナイプの弾丸が、プリプリしたおしりの間に吸い込まれて突き刺さる。


魔石を砕かれたプリティベアはプリケツから血を流して沈黙した。


「ナイスショットお兄ちゃん!」


「トーリアも良い誘導だったぞ。」


初めての狩りから10年が経って、俺は今年15歳、トーリアは13歳になる。


この10年で俺たちはかなり強くなった。


それでもママやパパには全然敵わないけど、少しは近づけたはずだ。


今の俺たちなら、二人がかりでプリティベアを倒す事ができる。


トーリアも成長して、今ではプリティベアと殴り合えるくらいに強くなった。

身体が大きくなっただけじゃなくて、顕現自在な鱗は非常に硬く、その爪も益々鋭くなってきている。

今はまだプリティベアの一撃に耐えられるほど頑丈ではないが、致命の一撃を受けない技術をパパから教わっている。


そして俺は、ママから教わった様々な魔法でトーリアのサポートをしつつ、トドメの一撃を確実に決める。


俺の魔法障壁もより強化されて、全力で張れば熊の一撃をなんとか受け止める事が出来るようになった。

まあ、その一撃で破壊されるから、その都度張り直す必要はあるが、トーリアが離脱する隙は作れる。

トーリアは俺の張った障壁をうまく使いながら、俺に魔物の弱点を晒してくれる。

そうして生まれた隙に俺が魔法をぶち込んで勝利だ。


「じゃあこいつを魔法ポーチにしまって、家に帰ろうか。」


俺はプリティベアの死体を魔法ポーチにしまった。


この魔法ポーチ、ママが持っていたものと同じものだ。


このポーチには強力な時空魔法が掛けられていて、内はポーチの何万倍もの空間が広がり、時間も止まっているらしい。

まあ簡単に言うと、未来の猫型ロボットたちが持っていたポケットみたいなものだ。


言うまでもなくめちゃくちゃ便利。


ちなみに、この魔法ポーチは所有者の技量によって、内部空間の広さや時間の進み具合が異なるらしい。

俺はこの10年めちゃくちゃ頑張って時間を止めていられるようになったが、トーリアの魔法ポーチ内は現実の半分くらいの速さで進んでいる。

これはハイエルフの種族特性で、特に魔法に優れていることが影響しているようだ。


まあそんな事は置いておいて、俺たちは家に帰ってきた。


「「ただいまー!」」


「あら、おかえりなさい。」


「熊倒してきたよー!」


「これで俺たちもこの森で勝てない魔物は居なくなったな!」


「よくやったわね、二人とも!でも油断は禁物よ。この森は比較的分かりやすい魔物が多いけど、場所が変われば魔物も変わるわ。火山には火山の、海には海の、ね。初見の魔物には特に注意しなさい。」


「もう油断しないよ!魔物っておかしな技使うのが多いもん!」


「そうだな。トーリアが怪我するのはなるべく見たくないから、俺がちゃんと守るよ。」


「信じてるからね、お兄ちゃん!」


「そうね、トーリアは危なっかしいから、グロウがちゃんと守ってあげてね。」


「ところでママ、何読んでたの?手紙?」


ママは俺たちが帰ってきたとき、手紙のような折れた紙を読んでいたのだ。


「手紙というか、招集っていうか、帰還命令っていうか……。」


「ああ、ママって駆け落ちして家出してきたんだっけ?」


「ちょ!違うわよ!ハネムーンで新居にやってきたのよ!」


「ものは言いようだねえ。」


「ちゃんと国で結婚式は挙げたもの、ハネムーンよ!これは!」


「それで、ついに帰ってこいって言われたの?何か問題でも起こったの?」


「私の誕生祭をするから、パレードに出ろってさ。」


「へーそうなんだ。ママ、今年で千歳だもんね。良いじゃん、帰ろうよ。」


「アタシもママの国見てみたい!お城もあるんでしょ!?」


「えー嫌よめんどくさい。私はずっとアレイクスとここで暮らしたいの。」


ソファに座ってぶーぶー文句を垂れているママの隣に、パパが腰掛けた。


「僕としては、また国王としての凛々しいアンの姿を見たいんだけれど……。」


「アレイクスがそう言うなら、パレードでもなんでも出てあげてもいいわ!ばばーんと派手に行くわよ!」


ママは立ち上がって胸を張って言った。


「ママ……。」


「チョロいねママ。」


「何か言ったかしら?トーリア?」


「ママは可愛いねって言ったんだよ!」


「ふふーん流石は我が娘。よく分かってるじゃない。トーリアも可愛いわよ。」


「ありがとーママ!」


「それで、国へはいつ行くの?」


「準備ができたらドライアド達が迎えに来るって書いてあるわね。」


ズボッズボッ


その時、庭の地面が盛り上がって、二人のドライアドが現れた。


「あら、リーヴィアにリーヴェン。迎えに来てくれたのかしら?」


「ええ、準備が整いましたので。」


「王子、王女、両殿下の従者が決まりましたので、ご紹介いたします。」


おお、ついに俺たちにも従者が付くのか。

ドライアドみたいだけど、どんな子かな?


ズボッズボッ


「はじめまして、王子さま。ドライアドのベリルです。よろしくです。」


「うん、よろしくね。」


俺に付いてくれるドライアドは、頭から一枚の大きな葉っぱを生やした子だ。

ママの従者のリーヴィアの葉っぱに似ているが、一回り小さいみたいだ。


「はじめまして、王女さま。わたしはベールです。よろしくおねがいします。」


「わあかわいい!よろしくね!」


トーリアの従者は、小さくて丸っこい葉っぱが二つ生えたドライアドだ。

頭の葉っぱがリボンみたいで可愛らしい印象を受ける。


「この二人は私達の子供で、まだ10歳なので至らぬ点もあると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。」


リーヴェンが一礼してそんな事を言った。


「え、この子達は二人のお子さんなの?いつの間に……」


「お二人が魔法の勉強をしていらっしゃるときに、土の中で。」


「土の中なんだ。」


「それでは、わたしたちがお二人を城へお連れします。王子さまは手を繋いでください。」


「手を繋げばいいんだね。これでいい?」


俺は右手でベリルの小さい左手を握る。

俺の手もまだまだ子供だが、ベリルの手はさらに小さくて可愛らしい。


「王女さまも。」


「わかった!それと、アタシの事はトーリアって呼んで!」


「あ、じゃあ俺のこともグロウって呼んでくれよ。」


「わかりました。トーリアさま。グロウさま。」


「それで、この後はどうすればいいのかな?」


「転移するので、そのまま手を握っていてください。」


「転移って、大丈夫なのか?」


転移魔法って魔力の消費がめちゃめちゃ多い魔法なんだよね。

短距離の転移ですら、普通の人間には不可能で、エルフならなんとか出来るくらい。

俺たちハイエルフなら長距離も行けるけど、それでも限度がある。ってママが言ってた。


「大丈夫です。」


「そ、そうなの?」


俺は心配になってママの方に目を向ける。


「ドライアドの転移は特殊でね、陸続きの場所なら少ない魔力で転移できるわ。だから心配無用よ。」


「そうです。だから大丈夫です。」


「まあ、そういうことなら。」


よく分かんないけど大丈夫らしい。

ちょっと心配だけど、魔力不足で倒れたら俺の魔力を分けてあげよう。


「じゃあ行くです。」


ズボボボボボボボボッッ!!!!!


ベリルがそう言って地面につま先を突き刺した直後、勢いよく地下に沈んでいく。

手を繋いでいる俺も引っ張られて、地面に引き摺り込まれた。


「うばばばばぼぼぼぼっ!!!」


なんだこれ!転移するんじゃなかったのか!?


30秒ほど地下へと引き摺り込まれたあと、今度は上へと引っ張り上げられる。


俺はされるがまま、ベリルの手にしがみつくことに必死だった。


ズボボッ


「とうちゃーく。」


「ぶばあっ!!!!」


はあ、はあ……


「ぺっぺっ!……着いたのか?」


「着きましたです。グロウさま。」


「そうか……。」


俺は口の中の土を吐き出しながら辺りを見回す。


すると、すぐ隣にベールがトーリアを引っ張りながら湧き出してきた。


ズボボッ


「とうちゃくでーす。」


「げほっげほっ。ぷぇっぺえ!」


「大丈夫か?トーリア。」


「あ、お兄ちゃん。うん、なんとか。」


トーリアは全身土まみれで酷い有様だ。

ってそれは多分俺も同じだな。


ズボッズボッと勢いよく、俺たちの後ろにママを連れたリーヴィア、パパを連れたリーヴェンが出てきた。


二人とも全く汚れてない。

土ひと粒もついてない。


「なんでママたちは綺麗なの……?」


俺は恨みがましい目を向けて聞いてみる。


「ごめんね、言うの忘れてたわ。ドライアドの転移は地下を経由するから、防御結界が必須なのよ。」


「……先に言ってよね。」


「ひどいよママ。」


「だ、だから謝ってるでしょ!二人ともそんな目で見ないで!」


「まあいいや。で、ここはどこなの?」


「ここは城の裏手のドライアド発着場の畑よ。」


言われて見回すと、確かに耕された土らしくフカフカで、黒々とした土は栄養も多そうな色だ。

離れたところに畝があって何かの葉っぱが伸びているのも見える。


「やっぱり城の土は最高ですー」


「世界で一番美味いですー」


ベリルとベールの二人が畑の土に肩まで浸かってご満悦だ。


「こらベリル、ベール。まだ仕事中ですよ。出てきなさい。」


土の中でぬくぬくしていた二人はリーヴィアに引っこ抜かれた。


そこへ、一人の男性エルフが近づいてきた。


「おかえりなさいませ、陛下。そちらが噂の王子殿下と王女殿下ですかな?」


「ただいま、ホーマン。相変わらず良い畑を保っているようね。」


「お陰様で、今年も豊かな実りを得られそうで安心しております。」


ホーマンと呼ばれた男性は、肩に鍬を担いで野良着を着て、いかにも農民といった格好をしている。

エルフにしては素朴な顔が野良着とよく馴染んでいる。


「はじめまして。グロリオーサです。」


「はじめまして!アタシはトーリアです!」


「これはご丁寧に。私はこの城の庭師を任されております、ホーマンと申します。どうぞよろしく。」


「ホーマンは〈百鍬〉のホーマンと呼ばれていて、百の鍬を操って畑を耕す庭師よ。」


「へーすご、すごいね。」


百の剣とかだったら無条件にかっこよかったんだけど、鍬かあ……。

いや、鍬を馬鹿にしてるわけじゃないんだけどさ。


「立ち話もなんだから、まずは王宮に向かいましょう。リーヴィア、案内を頼むわ。」


「承知しました。ですが今回はベリルとベールに案内してもらいましょう。」


「それもいいわね。じゃあ二人とも、初仕事頑張って!」


「「わかったです!」」


俺たちはベリルとベールの案内で、王宮へと向かうことにした。

ここまでが序章ということで、森の中の家族団欒でした。

次回からエルフの国でのお話になります。


今までは1話ごとの文字数がバラバラでしたが、次回からは均等になるように書くつもりですので、多少読みやすくなると思います。


ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。

引き続きお付き合い頂ければ幸いです。

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