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16話 フライ?フォール?

「うま!亀肉うま!」


「でしょお!この甲肉が絶品なのよ!」


今日の晩ご飯はパパが狩ってきた山みたいにでかい亀、山亀のステーキだ。

甲肉っていうのは、甲羅のすぐ下の肉のことだ。


山亀は山のような甲羅の上に、土が積もって木々が生えて、その上で普通に生き物が暮らしている魔物だ。

動くことは滅多になく、その甲羅の上の木々が光合成して作り出した栄養を甲羅から吸って生きているらしい。


だからその太陽の恵みを一番に受けた甲肉は抜群に美味しいのだ。


「すごーい!リンゴみたいな香り!美味しい!」


「久しぶりに食べたけどやっぱり美味しいね。」


「パパなんでこんな美味しい亀狩って来なかったの?」


「山亀は何十年もじっとして、山に擬態しているんだよ。だから、偶然動いてる所に出くわさないと分からないんだ。全ての山を掘り返すわけにもいかないだろう?」


「確かに、地層になるくらい深い土が積もってたもんね。」


「ごく稀に住む場所を変えるから、土の種類も変わるんだろうね。」


「まだまだ残ってるから、これからは毎日亀料理よ!」


「「いえーい!」」



――――――――――――



山亀ステーキを楽しんだ翌日。


今日は俺はママから飛行魔法を、トーリアは雷魔法を教わる事にした。


「トーリアが魔法を覚える気になってくれて嬉しいわ。」


「ママの戦い方みてたら、魔法もいいなって思ったの!ママはあんまり動かなかったのにすっごい強かったから。」


「トーリアは近接戦のセンスが高いみたいだけど、攻撃のレパートリーは多い方が良いわね。あと、治癒魔法も覚えてもらわないと心配だわ。」


「あ!それも覚えたい!アタシの腕くっつけてくれたやつ!ギュワワって!」


「そうね、治癒魔法は習得に時間がかかるし、先にそっちを教えようかしら。」


という事で、飛行魔法と雷魔法の前に、治癒魔法を教わる事になった。


「最初は自分の髪の毛で練習するのよ。髪を一本千切ってちょうだい。」


俺たちは言われた通りに、前髪を一本摘み、真ん中くらいで千切った。


「その髪の毛の断面を繋げて、こう唱えて。『湧き上がるは意志。増えよ。埋めよ。その傷を塞げ。ヒーリング。』」


ママは自分の横髪の一本を千切り、繋ぎ合わせて詠唱を詠む。

指を離すと、その手には何も無かったように元通りの髪の毛が一本。


「「おおー」」


なんかマジックを見たような気分だ。

そういえば魔法って英語でマジックだったな。


「さ、やってみて。雰囲気掴んだら詠唱はしなくていいわよ。」


言われて俺とトーリアも魔法を使ってみるが、ママのように上手くはいかなかった。


俺は接合部が丸く膨らんでしまい、トーリアはそれに加えて斜めにくっついている。


「なんか膨らんじゃった。」


「アタシも。しかもなんか曲がっちゃったし。」


「最初はそんなもんよ。その髪の毛が真っ直ぐくっつくようになるまで、毎日やってみなさい。」


「これ前髪だと恥ずかしいから、後ろ髪伸ばそうかな、俺。」


「何回も失敗したらアタシの髪の毛無くなっちゃいそう。」


「まあ実際、治癒魔法の練習のために髪を伸ばすから、エルフは長髪の男性が多いわね。他種族でも治癒魔法を使える人は長髪が多い傾向にあるわね。」


「俺の髪が伸びるまで、トーリアの髪の毛でやっていい?」


「えーしょうがないなー」


「悪いな、俺の髪が伸びたら俺の髪で練習して良いからな。」


「あ、じゃあアタシがお兄ちゃんの後ろの髪で練習すればいいじゃん!」


「ああ、他人の髪なら短くてもできるか。じゃあお互いにやろう。」


「毎日お風呂入る時に繋げっこしようね!」


「そうだな。ちゃんとルーティーンにしないとサボるからな、俺。」


「ちなみにその髪の毛一本が綺麗に繋げられるようになったら、次は本数を増やしてね。100本くらい繋げられるようになったら、自分の傷に使ってみなさい。」


「そうやって練習するんだ。まあ、傷口がこんな事になったら嫌だもんね。」


「それまではママに治してもーらおー!」


「こらトーリア。まず怪我をしないように気をつけなさい。もう油断しちゃダメよ。」


「はーい!」


「じゃあ本題の飛行魔法と雷魔法を教えるわよ!」


「待ってました!」


「どんどんぱふぱふー!」


「まず飛行魔法なんだけど、その本質は重力魔法よ。重力を操って自分の体を動かしてるだけね。自分に作用させる重力魔法を、便宜上飛行魔法と呼んでるわ。」


「ふむふむ。」


「トーリアがやってるのもこれよ。ドラゴンの翼は重力魔法の制御装置であると同時に、ちゃんと風を受けて舵を取ったりもしているわ。」


「ふーん、そうなんだ。」


「なんでトーリアがその反応なんだよ。」


「まあ、当のドラゴン族は無意識で飛んでいるらしいわね。私たちが歩いたり走ったりするのと同じかしら?」


「走ってる感じが近いかも!」


「まあつまり、飛行魔法って魔法はないのよ。重力魔法で自分の体を自在に飛ばす技術、それを飛行魔法と呼んでいるわ。」


「じゃあ例えばフライとかそういう魔法はないんだね。」


「そうね。だからとりあえず飛んでみなさい。」


「飛ぶってどうやってさ?」


「あなたの作った銃魔法は重力魔法で弾を浮かせて発射するじゃない。それを自分の体でやるだけよ。」


「あーなるほど。じゃあこんな感じ?こう、お、おおー」


おー、俺の体が浮いてる。

なんだ、空を飛ぶのって案外簡単だな。


「そのまま高度を上げて、空を一周回ってみなさい。」


言われた通り一旦真上に浮上して、次に横方向に力を込める。


が、普段は弾丸を射出しているせいか、そのイメージに引っ張られて、自分を高速で射出してしまった。

俺の身体が弾丸と化し、回転しながら高速ですっ飛んで行く。


「ぎゃあああああああ!!!!!」


「何やってるのよあの子は……。トーリア、拾ってきてあげて。」


「もう、しょーがないなーお兄ちゃんは。」


俺が目を瞑って耐えている間に、トーリアが余裕で追いついて、俺を受け止めてくれた。


「た、助かった……」


「お兄ちゃん、空飛んでる時に目瞑っちゃダメだよ。今地面に墜落しそうになってたんだからね。」


「そ、そうなのか?いやあ、実は俺、ジェットコースターとか苦手だったんだよね……」


「え、それじゃ空飛べなくない?」


「なんかそんな気がしてきた……」


「とりあえずママのとこまで引っ張るから、浮くのは自分でやって。アタシまだお兄ちゃんを抱えて飛べないし。」


「わ、わかった。ゆっくり頼む。」


そうして俺は、トーリアに牽引されてママが寛ぐ庭へと帰った。


「初の飛行はどうだった?グロウ。」


「空飛べなくても良いかなって思った。」


「逃げる手段が欲しいって言ったのお兄ちゃんでしょ。」


「うっ……。それはそうなんだが、思ったより怖くて……」


「情けないなー!それでもパパの息子なの!?パパはめちゃくちゃ速いんだよ!飛行機より速いと思う!」


「確かに、パパの血も入ってるから他の人よりは飛べるんだろうな……」


「まあ、さっきの治癒魔法と一緒で、飛行魔法も繰り返しの練習が必要な魔法だから、毎日少しずつやってれば飛べるようになるわよ。習うより慣れろ!よ!もう一回飛んできなさい!」


「はーい。じゃあ、もう一回飛んでくる……」


「じゃあその間に次はトーリアの雷魔法ね。グロウも聞いとく?」


「うん、じゃあ浮かびながら聞いてようかな。」


「じゃあまず雷魔法の初級の詠唱ね。『閃くは雷。我が力のひとつでもって、貫け。ライトニング。』」


ママの指先から雷光が走り、大岩を舐めてさらに奥の樹を焼き焦がす。


「こんな感じなんだけど、一つ注意点があるわ。他の魔法もそうなんだけど、雷は特に、標的の近くの味方も巻き込まれるから、使う時は十分に注意しなさい。」


「じゃあ使う時なくない?」


「多分種族的にトーリアは雷が効かない筈だから、バンバン鳴らしながら戦うといいわ。」


「そうなんだ。種族ってことは、パパも雷効かないの?」


「そうよ。ドラゴン族の中でも色で属性が別れててね、白竜は雷と共に生きる竜よ。」


「おおー!パパかっこいい!」


「じゃあ、俺もトーリアが前に居る時は、雷魔法はいくら撃っても問題ないんだね。」


「そうね。白竜は体表に帯電出来るから、むしろ使った方がトーリアがパワーアップするんじゃないかしら。」


「おー!じゃあ今後はその戦法で行くか!」


「じゃあ早速今から魔法の練習して、明日から修行しよお兄ちゃん!」


「よし、やるか!明日から二人で修行だ!」

ブックマークしてくださった方々ありがとうございます!

次話更新のときに数字が増えてるのが嬉しすぎて心の内で舞い踊ってます。

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