11話 今日は近接戦闘の授業です
あれから二年が経って、俺は五歳、トーリアは三歳になった。
俺もトーリアも成長してきたので、そろそろ剣を振っても良いかなって事で、パパに教えてもらう事になった。
「とは言ってもね、僕は別に剣術を学んだわけじゃないんだよね。人の身体になったときに、趣味で振り回しているだけで、見よう見まねだから。」
「それは知ってるけど、アレイクス以外に教えられる人が居ないのよ。」
「まあ、最初のうちは軽く振り回していれば良いんじゃないかな?また今度、アンの近衛隊長に教えて貰えばいい。」
「近衛隊長さんは剣が強いの?」
「ああ、彼はエルフからハイエルフに進化した人でね、僕と戦えるくらいに強いよ。」
「ほえーすごそー。」
「まあ今日はこの木刀を振り回していれば良いと思うよ。」
「すっごいテキトーだね。」
「いやあ、だって型とか知らないからね。それに、剣を使うより自分の爪の方が慣れてるから。本当にお遊びなんだよ。」
「じゃあアタシも爪で戦ってみたい!」
「最初に軽く模擬戦をしようか。まずはグロウから、好きなように僕を攻撃してみて。」
「魔法は使わずに剣だけでってことだよね?」
「そうだね。まあ、剣じゃ無くて槍でも斧でも構わないけど。」
「その中ならやっぱり剣を使ってみたいかな。」
槍もかっこいいけど、まずは剣だよね。
「じゃあいくよ、パパ!」
とりあえず、剣道の授業を思い出して、面を打てば良いのかな?
こう、振りかぶって、一歩踏み出してパン。
「めーん!」
もちろん。パパに片手で掴まれた。
「どー!」
次は横凪ぎにこう!
パパに腕で受け止められた。
もうレパートリーが無いんだけど、我ながら情けないな……。
あ、突き!突きは喉を狙うんだったかな?
「ほっ!」
突きはなんて言うのか分からないや。
そして当然、パパは片手で止めた。
「降参です。」
「え、もう終わりなのかい?」
「だってどうすれば良いのか分かんないんだもん。」
「ふむ、アンも昔そんな事を言っていたな。エルフは基本的にそうなのかな。じゃあ次はトーリア、やってみよう。」
「アタシも剣使った方がいい?」
「最初は使ってみようか。」
「はーい!」
そういえば、トーリアは運動が得意って言ってたな。
普段から元気に走り回ってるから本当なんだろうけど、でも、前世の運動って戦闘じゃなかったから、それはどうなんだろう。
「行くよー!」
宣言と同時、勢いよく前に出て、パパの頭上に鋭い振り下ろし。
「ほっ」
パパは片手でそれを弾いて、トーリアは間髪入れずに首に剣を走らせる。
「はああああ!!!」
パパが一歩後退して避けると、トーリアは剣を突き出しながら突進をかます。
パパが横に一歩動いて避けると、通り過ぎたトーリアはそのまま距離を取って構え直した。
……あれ?トーリア凄いな。
前世で地下武闘会とか出てたのかな?
剣道よりも殺す目的の剣の振り方だった気がするけど。
ていうか、俺より二歳離れてるトーリアの方が走るの速そうだな。
これはあれだな、ハイエルフと竜人の種族差だな。そうに違いない、間違いない。
「むー、全然決まらない。パパ強いよー。」
「ははは、流石にまだまだ負けないとも。でも、筋は良さそうだね。」
「次はパパみたいに爪でやってみる!」
「いつでもおいで。」
「いくよ!はっ!はぁ!」
トーリアは指を揃えて貫手の構えをとり、右、左、と手を突き出した。
それはパパの首を狙って繰り出され、しかしパパは危なげなくそれを受け流していく。
「うりゃあ!」
引き戻した右手をがおーの形に開いて、パパの顎を刈り取るように振り上げる。
パパは首を逸らして躱すが、トーリアは右手を振り上げた勢いのま、サマーソルトキックを繰り出す。
パパが大きく下がってそれを躱すと、トーリアは翼を開いて逆さのままパパに抜き手を放つ。
ってあれ?いつのまに飛べるようになったんだ?
兄ちゃん、歩いてるところしか見たことないよ。
次第に戦いの場は空へと移る。
こうなるともうド〇ゴンボールだな。
なんでトーリアは転生して三年であんな動きができるんだ?
よし。前衛はトーリアに任せよう。
これはれっきとした適材適所だ。
安心しろ、兄ちゃんが完璧な援護をしてやるからな。
「あ、おかえり二人とも。」
「もー!結局一回も決まらなかった!」
「トーリアは、格闘戦の才能があるみたいだね。やほりドラゴン族の血が濃いからかな。」
「そうなのかなー。でも、パパみたいにかっこいいドラゴンの体にはなれないんだよね。」
「新しい種族という話だし、今の姿が本来の姿なんだろうね。僕にとって、人の形は仮初のものだから。」
「そっかー。アタシもおっきなドラゴンになってみたかったなー。」
「そうか?今の姿も十分かっこいいと思うけどな。」
「そ、そうかな?えへへ……///」
「グロウの言う通りだね。今のままが素敵だよ。」
「ありがとう、パパ!お兄ちゃん!」
「それに、あんまり大きいと援護しづらいしな。」
「お兄ちゃんまさか、か弱い女の子に戦わせて、自分は後ろで見てるつもりなの?」
「か弱い女の子は後ろに庇うが、強い女の子には前で戦ってもらおうかと。もちろん、ちゃんと魔法で援護しますとも。」
「それってアタシを壁にするって事だよね!酷いよお兄ちゃん!」
「適材適所って言って欲しいね。」
「パパ!お兄ちゃんが酷いよ!」
「うーん。これは僕もグロウの意見に賛成かな。」
「なんでさ!?」
「グロウが剣を振ったところを見るに、グロウが前に立つ方が危険だと思う。」
「まあ、それは確かに。」
「おいなんだ妹よ。言いたいことがあるなら聞こうじゃないか。」
「じゃあ言うけど、へっぴり腰はダサいよ。」
「俺、腰引けてたの!?それはダサいよ!言ってよ!」
「いやあ、言ったら可哀想じゃん。」
「ま、まあ確かにショックだが……ごほん!実はだな、俺はトーリアとパパの模擬戦は、空に上がってからはさっぱり分からなかった!だから前衛なんて無理!」
「そうだったの?そういえば、途中から気づいたら飛んでたんだよね。」
「そう!それも聞きたかった!いつの間に飛べるようになったの?」
「え?さっきかな?」
「模擬戦の最中ってこと?」
「そう。気づいたら飛んでた。」
「そんなもんなの?」
「ドラゴン族も、飛ぶための練習とかはしないね。いつの間にか空に居たって者が大半だと思う。」
「そんなもんなんだ。」
そう言われると、どうやって歩き始めたのかなんて知らないな。それと一緒かな。
「じゃあトーリアはもう一度僕と模擬戦をしようか。グロウは素振りをしようか。まずは身体を作らないとね。」
「やるやるー!模擬戦楽しい!」
「マジかよ。やっぱ戦いを楽しむ奴が強いんだな。オラはワクワクしねえぞ……」
そうして日が暮れるまで身体を動かした俺たちは、覗き活動を楽しんでいたママと晩御飯を食べ、泥のように眠るのだった。




