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1話 隕石が降ってきた

「隕石でも降ってきて異世界転生しねーかなー」


俺は日本のどこにでもいる無気力な引きこもり大学生。

器用貧乏で大体のことはそつなくこなせて、勉強も人付き合いもどちらかというと得意な方。


そんな俺の最大の欠点が、朝に弱すぎること。

昨日は珍しく0時前に寝れたのに、今13時過ぎ。

なにがどうなったらこんなに寝るんだよ。

もう3限の授業始まっちゃってるんだけど。


思えば小学生の頃から既に朝に弱かった。

中学の時なんか、たまたまその日親が早くて起こされないままずっと寝てたら、心配した担任が迎えに来てくれた事もあった。

まあそりゃ急に無断欠席したら先生は心配するよね。

玄関のチャイムで起きてパジャマのまま出たら担任が居てびっくりしたよね。

苦笑いで俺が着替え終わるのを待ってくれて、車で学校まで送ってもらって恥ずかしかったの思い出しちゃった。

うわなにしてんだ過去の俺。


そんな風に悩んでる間に夜が明けて、眠れなくなってるんだよね最近。

今後一生朝起きれなくて悩むんだと思うと、20歳なのに人生疲れちゃったんだよね。


だから起きて第一声が「異世界転生してー」だったわけ。

でもさ、異世界転生といえばトラックに轢かれて転生が定番だけど、トラックに轢かれるなんてシチュエーション、そうそうないよね。

そもそも引きこもりがどうやったらトラックに轢かれるんだ。


まあでも、時は戻せないから今日はもうやることなくなっちゃったし、少し二度しよう。


「寝てる間に隕石降ってきて、何の苦痛もなく、目が覚めたら異世界転生してますように。……なんてね。」



―――――――――――――



「……ふーん?隕石で転生したいんだ。結構大変だけど、頑張って叶えてあげよう!うふふ」



―――――――――――――



「……ぃ。……ぉーい。……聞こえるー?」


「んん?なんか声が……?」


「お、目が覚めたみたいだね!おはよう!気分はどうかしら?」


「気分は……別に良くも悪くもないかな。でも目が見えないし、体も動かないし、耳も……あれ?耳は聞こえないけど声は聞こえてる……?」


「おぉ!なるほど、魂だけだとそういう感覚なんだね!なかなか興味深いからもう少し続けてよ!」


「えっと……、目は見えないけど暗くはないかな?あとなんか地に足ついてないから宇宙空間みたい?宇宙行った事ないけど。」


「ふむふむ。なるほどなるほど。」


「いや、ていうかあなた誰なんですか?ここどこですか?」


「おっ、よくぞ聞いてくれた!私の名前はアンジャベル・マギア・ユグドラジール!アルフヘイム連合王国の女王とは私のことよ!」


「じょおうさま?えっと……、さっき魂とか言ってましたけど、どういう事ですか?」


「そのまんまよ!あなたは死んだから、今の君は魂だけの存在ね。」


「えっ……。俺死んだんですか?確か普通に部屋で寝てたと思うんですけど……。ちなみに何死ですか?」


「あなたが隕石で死にたいって言ってたから、私が頑張ってあなたの部屋に隕石を落としてあげたのよ!凄いでしょー!うふふ」


「えぇ……?確かにそんなことを言って寝たような記憶はある……。でも、えぇ……?じゃあ、あなたは僕の仇なんですか?」


「まあそうとも言えるわね。でもあなたの望みを叶えてあげる龍でもあるのよ?あなたの世界だと7つの玉を集めると願いを叶えてくれるんでしょ?」


「いやそれは物語の中の話だから、フィクションですよ。願いなんて叶いませんし、そもそも7つの玉なんてありません。」


「えっ?マジ?でも秋葉原って街の店に置いてあったわよ?」


「なんでそんなピンポイントな……。それもニセモノっていうか、おもちゃですね。」


「なんですって!?」


「いや、てか、もうちょっと説明してくれませんか?死んだのに話せてるって事は、あなたは神様なんですよね?」


「違うわよ?さっきも言ったけど私は女王よ。エルフの国のね。」


「え?エルフ?エルフって本当にいたのか?というか神様ってエルフなのか?確かに玉集めの物語でも耳はとんがってたような……。」


「違うわよ。神は私とは別に居るわよ。そろそろちゃんと説明するけど、あなたには私の子供として私の世界、あなたからすると異世界に転生して欲しいの。どう?」


「え、つまり異世界転生できるってことですか?」


「そうよ!しかもなんと、私はエルフの女王だから、あなたは産まれながらにしてエルフの王子様よ!どうどう?」


「それは……良いですね。断る理由がないです。」


「よかった!あなたの肉体は隕石で潰れちゃったから、拒否されたら成仏させなきゃいけなかったのよね。あれ結構めんどうなのよ。」


「あーそう言われると、ちょっと嫌だけど……。まあでも異世界転生できるならいいか!」


「あなたなかなかノリが良いわね!流石、私が見込んだだけあるわ!」


「じゃあ早速転生お願いします!」


「あ、待って待って。まだあなたの魂が肉体に定着してないから、あと1週間くらいは私のお腹の中にいてね。」


「わかりました!って……ん?お腹の中?」


「そうよ。今私のお腹の中にはもうすぐ産まれる赤子がいるんだけどね、そこに宿って産まれて欲しいのよ。」


「な、なるほど。転生ですもんね。そりゃ赤子からですよね。頑張ります。」


「あ、そうだ!あなたは私の子供になるんだから、敬語は不要よ!私のことはママって呼ぶように!」


「了解!ママ!!」

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