アクネス=ダーク
時は遡ること10年前
メルティ=M=クレイドルは上幹界にいた
天葉界に、興味を持ち、師管を移動中に魔神であるザクエスに捕まってしまった
それから10月
瘴気にまみれた冷たい石造りの部屋で片足にエレラルを、封じる枷をつけられ軟禁されていたメルティは臨月を迎えていた
ザクエスとの子供である
メルティは一人涙を流した
クレイドルは一生に一度しか子供を授かることはできない
別に添い遂げたい相手などいなかったけど…恐らく自分はこの、出産で死ぬだろう
不幸中の幸いかお腹の子は魔神の血をひいている、きっとこの、子は環境に順応できるだろう、だがメルティはそうは行かない、育ててあげることはできない
「兄さんごめんなさい」
こんなことなら家族の、双子の兄のいう通り島を出なければ良かった
メルティは家族の反対を振り切って家を、島を出た
だけどどんな身内の言葉も好奇心には勝てなかった
いくら何度となく思っても後悔は先だたなかった
だから今はただ、お腹の子が心配だった
無事に産んであげることができたとしてもこの子にはどんな未来が待っているんだろう…
メルティは涙した
魔神の、手先として人を殺めるのだろうか、機械のように愛を知らずに生きるのだろうか…
だとしたらなんて悲しい…
そしてなんて自分は無力なんだろう
メルティはお腹を抱えて再び涙を流す
それから10年の月日が流れたー
薄暗い天葉界の一角
黒く低い横長の建物でそれは行われていた
102はすでに急所をナイフでひとつきされ絶命している98から離れた
やったのは自分だった
どこからか抑揚のない声が響く
「勝者102」
もう慣れた
兄弟を殺すのも
血を浴びる不快感にも
102と呼ばれた黒髪に赤い瞳の少年はまじまじと血に濡れた両手を見つめる
始めてこれを命じられたのはいつだったか102が5つころの時だったと思う
怖くて怖くて泣きじゃくった
止まらない血も
自分がしてしまったことも
それらを強要する父親達も
全てが怖くて
でも誰もそこから彼を救いだしてくることはなかった
それに気づくまで彼は毎日泣きじゃくったし、できる限りの抵抗もした、その分厳しい罰を受け、彼の精神は磨耗して、成長と共にいつしか何も感じなくなった
そして現在
大人が言った
「102は合格、次の選ばれし10人として作戦zに参入するように」
ー作戦Z…
確か、選ばれたメンバーには父から直接名前が与えられ、根下界に降り、根下界を制圧するのがミッションだったはずだ
兄弟の中にはそれを目指す者もいた
しかし102にはは興味がなかった
どうせ根下に降りても待っているのは今とは変わらないー
殺戮の毎日だ、所詮父にとって、自分達は根下界を、制圧する道具に過ぎない、そしてそれを拒絶したものは例外なく厳罰が下されやがて父の命しか従わぬ人形のような廃人になる
102も既にそれに近い
精霊人の、部分が、濃いものから死んでいく
やがては食事も摂れなくなり骨と皮だけになり、力尽きるように死ぬのだ
自分の未来がそうなると、102は否応なしに自覚してきた
何度となく兄弟達の死を間近にしてきたから
父である魔神ゼクアスは強大な力を持っていた、たとえ兄弟が束になって逆らったとこよ