先見の儀
その後ジオン一行は最奥にある儀式の間に通された
そこには異様な光景が広がっていた
地下なのでいくら照明水晶を多くつけても薄暗い
大きく複雑に描かれた魔方陣がいくつも重なるように広い空間を埋めていて
その魔方陣を囲うように多くの人間が配置されていた
一目見て分かる
頭から布袋を被せられ膝をつくように座る罪人達
薬かなにか盛られたのか微動だにせず生きているのかもわからない
その背後には一人ずつ○○教の制服を着た老若男女が異様な緊張感を漂わせながら立っている
ジオンはこれから何が行われるのか理解できてしまった
それを苦虫を噛み潰したように息をはきながら、追い払い空間の中央を見つめる
ジオン達は儀式の間を囲うように作られた塀の一番高い空間にいた
必然的に空間をすべて見下ろすことができた
中央には見事な黒と白の水晶が対になるように置かれていた
ジオン小声で呟いた
「光水晶と闇水晶か…」
今回行われるのは先見の儀
簡単に言ってしまえば天葉界に住む精霊を呼び出しその言葉を聞くという儀式だ
しかし通常根下界にヒトでないものを呼び出すには、紋章、詠唱、そしてエレラルを現象に、昇華差せるためのクリスタルが、必要となる
その、クリスタルというのがジオンが、見つめる先にある黒と白の水晶である
その、二つの水晶は両方とも大人の背丈ほどもの大きさだ
これほどに大きいものは珍しい
呼び出すのは相当な大物だろう
そしてジオンは目をしかめる
つまりはその分依代も必要となる…
ヒトの世界である根下界にヒトでないものを呼び出すには、器が必要となる
それが依代だった
小物ならば、その辺の微精霊などが勝手に集まって依代などは必要ない
しかし大物となれば話は別だ
ヒト自身が器となりつまりは命を器として、精霊を呼び出す他方法はない
本質が精霊の精霊人などが依代となれば命まで持ってかれないかもしれないが、それでも相応のリスクがある
ましてや只人となれば、依代になる、それは死を意味する
この中でそれを承知のものがどれほどいようか…
ジオンは息を吐く
人としての、傷みなど王になるはるか昔にとうに失くしていた
慈悲だけでは国王など勤まらない
ジオンは顔をあげる
にんマリと不気味な笑顔を張り付けたグリドと、目が合う
ジオンは一つ頷いた
そして深く息を吐く
「始めよ」
グリドはさらににんマリと笑って
下にいるもの達に声をあげる
「これより第31回先見の儀を始める!」
すると、布袋の、犠牲者達の背後にいた教徒達が一斉に詠唱を唱え始める
『汝、天葉に住まうもの、誰より気高く誰より賢い先見を見通しもの、これより根下に下りて、我を導きたまえ!』
『~~!』
『~~!』
詠唱は最後の一言だけ二分に割れた
恐らくはそれぞれがこれから呼びだす光と闇の精霊の名なのだろう
ジオンは目を見張った
布袋を、被ったもの達が一斉に苦しそうにもがき始める
まるで見えない力に体を絞られているかのように布袋の、もの達から何かが2対の水晶に、向かって伸びていく
例えるなら霧、霧のようなそのモヤモヤはやがて集まり何かを型どっていく
これには今まで沈黙を守っていた聖徒騎士も低くうめく
「これは…ではあれは!…実に精霊なのか?」
慌てたように宰相も頷いた
「…うむ、書の、通りだ間違いないだろう
真実は確かではないが○○教ははるか昔千二百年前に、天葉に赴き先見のニ精霊の名を授かったとある…実であったのか…」