読切
読み切りは初めてです。感想とかお願いします。
「いらっしゃいませ〜」
「たばこ、13番」
「3点で合計785円で〜す。ありがとうございました〜」
やっと、終わっ...痛‼︎
「あのね〜晴雅くん?お客さんの前ではもっとハキハキとして。ね?」
「も〜、殴ることないじゃないですか、夏帆さん。」
晴雅はわざと痛そうなふりをして頭をさする。
「痛くないでしょ。ほらお客さん来るよ。」
「あ、もう5時だ!上がりますね(はーと)」
そう言って彼はそそくさと控え室へ引き返してしまった。
「あと、2分もあるじゃない‼︎」
彼女は頬を膨らませる。数秒して我に帰ると客を待たせていることに気づいた。夏だというのに黒い厚手のコートを羽織り、黒のスナッププリムを目深に被った初老のおかしな客だった。
「お待たせしてしまいすみませんでした!」
誠心誠意の謝罪。晴雅のせいで板についてきつつある。
「いや、いいよ。」
客は低い声でそう言うとビールを差し出した。夏帆はそれを受け取り、バーコードを読み込ませようとすると、
「彼とは仲がいいのかい?」
「やっぱり、そう見えましたか?」
「客をほったらかして戯れるほどだからね。」
「すみません...」
「怒ってはないんだよ。僕は気にしてないから。」
そうは言われても掘り返されて落ち込まないほど彼女のメンタルは強くなかった。
「335円です。」
と言う声もいつもよりハリがなく、小さかった。
「はい、ちょうど。」
「...ありがとうございました。」
「そんなに気に病まないでくれよ、本当に気にしてないんだから。」
「はい、わかりました。」
分かってないなと客は思った。
「店員さん、こっちに手を出してごらん?」
彼女は無言で手を差し出す。客はその手をぎゅっと握って
「おまじないをかけてあげるよ。」
彼女は客に握られているところから体全体が暖かくなるのを感じた。
「あったかい...」
「これで多分大丈夫。彼ともうまくいくよ」
「え、」
「好きなんだろう?彼のこと。」
それを聞いて彼女の顔は真っ赤になる。鼓動は早まり、拍動が感じられるほど強くなる。
「な、なんでぇ」
つい情けない声が出てしまう。それを見た客は安心したのか手を離し、「また来るよ。」と言って去っていった。
翌日、晴雅は通っている高校から真っ直ぐにアルバイトとして働いているコンビニにやってきた。
「げ、夏帆さんとシフトかぶってる...」
「げとは失礼ね!」
彼は拳が飛んでくると悟ったがそうはならなかった。
「なんかご機嫌ですか?」
「わかる〜?実は昨日ねお客さんにおまじないかけてもらったの。」
「へー、疲労回復みたいな感じですか?」
「それもあるけど、なんか全部が楽しくなってやる気が湧いてくる感じかな?」
「えー、絶対ヤバいやつですよそいつ。」
「そんなこと言わないの。」
口元に人差し指を当ててそう彼女は言う。そしてレジに戻っていくと思ったら途中で踵を返して戻ってきた。
歩いてこっちに近づいてくる。彼の目の前で止まると顔をずいっと近づける。彼はその顔を見つめるしかなかった。そして気づく、彼女の顔が艶っぽくかつ紅いことに。もしかしてこの人...
「あのー、酔ってます?」
「酔ってないよ?」
「じゃあ何してんで...」
すか?と言い切る前に僕の唇は塞がれてしまった。彼女の唇によって
「あー、このまま夏帆さんと2人...」と思ったがすぐに我に帰り彼女を遠ざける。そして、
「夏帆さん...」
「何?」
目一杯腹に力を込めて今一番言いたい一言。
「俺のファーストキスどうしてくれんだぁぁああ⁉︎」
「私とじゃダメなの?」
「ダメでしょ。普通。」
「じゃあ付き合ったらしてくれるの?」
「まあ付き合っていい雰囲気になれば...」
「じゃあ、付き合おっか?」
「丁重にお断りします。そして働いてください。」
それを聞くと彼女は目に涙を浮かべ、赤ん坊のように泣き叫ぶ。
「え、夏帆さん?」
やっぱり何かがおかしい。
「夏帆さん!聞いてください夏帆さん!」
呼びかけても聴こえていないのか返事をしてくれない。そこへ店長がやってくる。どうやら苦情を言っている客がいるらしい。店長は禿頭に汗を滲ませている。
「どうしたんだ⁉︎」
「分かりません!急に泣いてしまって...」
「そうか、とりあえず部屋を締め切って、泣き止むまで面倒を見てくれ。今日は閉店なんていうのはやめてほしいからな。」
「はい、わかりました!」
それを聞いて店長は控え室を後にする。
分かったと言ったもののどうすればいいかなど分からなかった。
「あの...落ち着いてください!みんな困ってます!」
彼女はそれを聞いてさらに大きな声で泣き叫ぶようになった。
「どうすれば...」
晴雅が途方に暮れていると店内側のドアが開き、黒のコートをきた男が店長を引きずりながら入ってくる。
「店長‼︎」
店長は気を失っているだけのようだった。が、
「あんた誰だ?」
「昨日そこの女の子に御呪いをかけたものだよ。」
「お前が...」
「さっきからあんただのお前だの初対面なのに失礼じゃないか?」
「うるさい!店長の足を離して、夏帆さんにかけたそのおまじないを解けよ。」
「こうなったのは全部君のせいなんだからね。」
そう言うとコートをきた男はこちらに夏帆に向かって手を翳す。
「お前の勝手な行いを呪いながら死ね。」
「お前、まさか!」
「気がつくのが遅かったねぇ。もう手遅れだよ。」
彼の手が一瞬光る。
「やめろ!」
光を浴びた夏帆は呻きながらのたうち回る。彼女は近くにあるものを薙ぎ倒していった。そしてそれの眼光が
晴雅に向いた時、コートの男は踵を返して店内へと戻っていった。
「もう任せても大丈夫そうだね。」
「待て!」
「血筋に愛された陰陽師の力を我々の元で使わないのであれば意味がないからな。ここでさよならだ。」
「くずが...」
「僕に構ってると夏帆ちゃんにやられちゃうよ?」
俺から総てを奪うつもりか。父さんから始まり、母さん、友達、そして夏帆さん。今までのあいつの行いに想いを馳せる。
「夏帆さん、少しの間我慢してください。」
手に陰陽師の霊力を集中させて夏帆の腹に目一杯の掌底を喰らわせる。そして壁に吹き飛んだ夏帆の肩に手を添えて霊力を流し込む。こうすることで大抵の呪いは消滅する。陰陽師の霊力にはそういう力がある。が、夏帆の場合はそうはいかなかった。膨らみすぎた呪いは夏帆の体と同化しつつあり、すでに体から追い払うことは不可能ということだ。つまり、体ごと殺すしかない。そして同化した呪いは自分が動きやすいように体を作り替える。人間とは全く異なる異形へと変貌するのだ。
「夏帆さん...っ」
変貌の全部で3つある段階の第一段階が始まった。腕が2本増え、総ての手の爪が長く、太く、先端は鋭くなった。呪術により作られた呪いは攻撃に呪いが付与され、相手の体を蝕む。
「ごめ...ん...せ..が...」
羽が生える。
「夏帆さんが謝ることなんてない!俺があんなこと言ったのは照れ隠しなんだ!本当は...本当は‼︎」
髪が抜け落ち、両の耳の上と後頭部に新たに目がつくられ、全身の皮膚が爛れていく...
「こ...ろし...て?」
完成してしまった正真正銘の化け物。
晴雅の頬を涙が伝う。体が動かない。
「愛した人を殺せるはずがないだろ?」
化け物の咆哮が耳を貫いたと同時に四肢を引きちぎり、尖った尻尾でズタズタにする。楽しんでいるようだ。殺してしまわないように呪いを抑えて、痛ぶるのを楽しんでいるようだ。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
声帯を潰されて血を吐きながら口をパクパクさせる。今度は腹をサンドバッグとして遊ぶらしい。
どうせ最期なら恨み言のひとつくらい言わせて欲しかったなあ。
そこで意識が途切れた。
「ねぇ」
「おーい、ねえってば。」
「そろそろ起きろよ!」
その声の主は思い切り晴雅の頬をひっぱたく。目の前に少女の顔がある。
「痛いな、あれ?俺生きてんの?」
「いや、死んでるけど」
「あ、そうなんだ。じゃあもうちょっと寝かせてね。」
「ねえねえ、生き返ってあの女の子助けたくない?」
「なんだよ唐突に」
「だから、あの子助けたいかって聞いてるの」
「助けたいけど生き返ったとこで結果は変わらないだろまたここに戻ってくるだけだ。」
「晴雅くんここをどこだと思ってんの?」
「ん、天国だろ?なんか真っ白だし。」
「いいや、ちょっと違うんだな。」
少女は立ち上がると晴雅が寝転がっているところから数歩分離れてから両手と両足を広げて、
「ここは陰陽師専用の死後の世界、の一歩手前です。」
「へー、そんなとこあるんだ。」
「少しは興味持った?」
少女は微笑みながら言うが
「いいや、全然。でも早く行きたくはあるな。楽になりたい。」
「自殺する前の人みたいなこと言うじゃん(笑)。」
「もう死んでるし。」
「ふふふ、そうだったね。」
何がそんなに面白いんだかと思った。
「じゃあ俺は行くからな。」
彼は立ち上がり、彼女の方に向かって歩く。
「陰陽師の本能ってやつでどこに行けばいいかはわかるんだろ?」
少女は確認する。
「なら悪いことは言わない私が今いるところより後ろに行かない方がいい。」
「なんでだ?」
「この先には闇しかない。文字通りの闇だ。その中では五感なんて働きやしない、生きてるように感じるかもしれないがそんなことは決してない。私はここに入らなくていい選択肢を提示しているんだ。まずは耳を傾けてはくれないかな?」
「お前は確かここを陰陽師専用の墓場と言ったな。なぜここには陰陽師しかいない?」
「全部話すよ。だから少し離れてから話そうか。」
最初いた位置に戻って2人とも座る。
「まずは自己紹介から。私は死神。名前はない。」
「死神...。」
晴雅は考えるように少し俯く。
「気にせず続けてくれ。」
「ああ。死神がなぜ死後の陰陽師を管理しているかと言うとだな。簡単に言うとそういう契約だからだ。陰陽師の力は元はと言えば死神の力なんだ。安倍晴明が死神と契約した時にお前のような陰陽師が生まれたのだ。」
「契約内容の概要は?」
「死神の力の一部を安倍晴明の家系に渡す代わりに、その死後の肉体を死神が管理してそれを元手に次なる死神を生み出すというのが契約の内容だ。私も大昔は陰陽師をやっていたんだよ。」
「つまりお前もここに入ってたってことか。」
「そうなるね。だから勧めたくないんだよ、こんなところ。しかも晴雅くんは未練タラタラで死んでるし。」
「だいたい分かった。じゃあ死神としての任期を終えるとどうなる?」
「死神が死ぬ時は力を使い切った時なんだ。そして安倍の家系の者から生まれた死神は力を使い切ると陰陽師ではなくなり、本当の天国に行くことができる。」
「2回死ぬ...ってことか」
「そうだ。」
「じゃあどうせ結局死ぬし、そうなることに変わりはないんだろ?」
それを聞いて少女はこの子もダメだったかと思った。
「それならもうちょっと生きてみてもいいかもな。ん、でもそれって契約違反とかにはならないのか?」
「え?」
少女はキョトンとしている。しかしすぐに彼の言葉を理解して安堵し,落ち着きを取り戻した。
「問題ない、恐らく死神の欠員が出ない限りな。」
「よし、ならさっさと夏帆さん救ってあいつぶちのめすか〜。」
彼はそう言って大きく伸びをする。
「早く生き返らせてくれ‼︎」
世に放たれた化け物は破壊と殺戮の限りを尽くしていた。警察や自衛隊も出動したが敵うはずもなく、徐々に被害は拡大していた。
そして今度はその凶刃が子供に向かおうとしている。
「誰か、誰か助けてぇぇえええ‼︎」
助けてと聞いて助けられる人間なんてこの場にはいない。たった1人彼を除いて。
「そこまでだ。夏帆さん。」
彼は凶刃を左手で受け止めると右手に持った大鎌で化け物を一刀両断した。すると、化け物だったそれはだんだん人間のようになっていった。
「大丈夫?立てる?」
子供は一回こくっと頷くと彼の手を引いて立ち上がった。するとそこへ母親が現れその子は母親と帰っていった。
それを見届けて晴雅は夏帆に近寄る。夏帆の体は化け物になる前のように綺麗になっていた。斬ったのはあくまで呪いの方。体には傷一つない。
「夏帆もう大丈夫だ。」
彼は立ち上がると少し遠くにいた自衛隊員を呼び、総てを説明した後で夏帆を保護してもらった。
「あとはあのくずだけだ。」
安倍家は山の林に囲まれた場所にある伝統的な日本家屋だ。陰陽師の総本山というだけあって周りには幾重にも結界が張ってあった。しかし、今の晴雅にとってそれは問題ではなかった。
「もう帰ってこないと思ってた...」
結界にそっと触れ霊力を送る。するとみるみる結界が破れていった。
「裏切り者が帰ってきたぞ廻晴。」
「そのようだね、あのババアと結託して力も得たようだ。僕の邪魔はさせない。絶対にだ。」
廻晴と呼ばれたその男は立ち上がると、ゆっくりと廊下に出た。
「廻晴様の邪魔はさせません。」
女の陰陽師が言う。
「うるさいな。落ちこぼれが。」
晴雅はそう言って一瞥もくれず、手を翳して弾き飛ばした。
「落ちこぼれなんて言うなよ。可哀想だろ?俺たち分家の中では頑張ってた方なんだぜ?」
「ようやくお前をこの手で殺せるな廻晴‼︎」
廻晴を見た瞬間に憎悪が溢れ出る。
「やれるものならやってみろ。きっと前のように尻尾を巻いて逃げることになるぞ?」
「やっぱりお前も持ってるんだな。」
晴雅の視線の先には大鎌があった。
「そりゃ持ってるさ。俺は死神なんだから。だけどお前は死神じゃないそれを使いこなせはしない。」
そう言いながら、庭に飛び降りる。
「どんな契約を結んだかは知らないがあのババアの霊力が底をつけばお前の負けだ。死神は陰陽師の霊力を受け取ることはできないからな。」
「どうでもいいことだ。」
そう言って晴雅は廻晴に飛びかかる。まずは得意な掌底。次は元の霊力に死神の霊力を上乗せして身体能力を最大まで高めてほぼ一瞬のうちに背後に回って脳天から踵落としを喰らわせた。さらに晴雅は隙を与えないように呪術を使って廻晴の体を縛る。
「これでもう動けない。お前の負けだ!」
言いながら首元に鎌の刃を添えていつでも切れる状態にする。
「最期に言い残したいことはあるか?」
廻晴はゆっくり口を開いて、
「首を切り始めたところで再生すると言う手段もあるが?」
廻晴は微笑む。しかし、
「この鎌はたとえどうかしていたとしても中の呪いだけを正確に切るんだ。つまり負けるのはお前だ。」
腕に力を込めて鎌で首を刈り取る。
「やっと終わった。」
ここまで長かった。あいつに人生の総てを狂わされた。何度殺したいと思ったことか。あいつは突然叔父かんの体を奪い、宗家の長である父さんを始めとして俺以外の母さんを含めた宗家の人間を殺しやがった。その恨みは一生忘れない。俺がばあちゃんの家に匿ってもらっている時も...
「晴雅くん後ろに避けて‼︎」
少女の声で晴雅はギリギリで斬撃を避けることができた。
「ありがとう、死神さん。」
「油断するなと言っただろ!やつは不死だぞ。」
「いるのかババア。お前が気に入った晴雅今からそっちに帰すが問題ないな?」
「あいつの言葉には耳を貸すな。そして、今から私が言うことをよく聞け。」
少女は一呼吸置いてから言う。
「私の持つ総ての力であいつを封印するんだ。」
「総ての力でってそれじゃ死神さん...」
「いいんだ。それで死んだとしてもあいつとは別の場所に行けるだろうしな。」
「本当にそれでいいの?こんな俺の私怨のために...」
「別にお前のためじゃない。契約のためだ。分家から陰陽師は生まれないからな。」
「宗家の俺を死なせないため?」
「そうだ。だからちゃんと結婚して子供たくさん産むんだぞ?」
「話終わったかぁ?」
廻晴が大きくあくびをしながら言う。
「ああ、お前を倒すための最後の作戦会議は終わったぞ。」
「ババアの力を全部使うとか言ってたな、お前。」
「どうやるかは想像に任せるよっ!」
先手を打ったのは今度も晴雅。大きく振りかぶった鎌を猛スピードで振り下ろす。しかし、廻晴はそれよりも早く移動して、それを躱し、ガラ空きの胴に蹴りを入れる。地面に突き刺さった鎌を残して晴雅は大きく弾かれた。
「ババアにあったんなら知ってるだろ?俺が死なないこと。夏帆ちゃん助けてヒーローにでもなっておけばよかったのにもったいなかったなお前の命。」
機嫌を良くしてヅカヅカと鎌の方へ歩いていく廻晴。晴雅の術中にいるとも知らず。
廻晴は晴雅の鎌を取ろうとすると晴雅は素早く両の掌を合わせて唱える。
「大五芒星‼︎」
すると地面に刺さった鎌を中心に大きな五芒星が現れる。
「何だこれは⁉︎」
「死ぬ覚悟のないお前には分からんだろうな。お前は負けるんだよ。」
五芒星から真上に光が飛び出してその光が当たっているものの総てが消えていくのがわかる。
「俺が負けるのか?こんなやつにぃぃぃいいい...」
「憎い奴の断末魔の叫びはなかなかいいものだな。」
腕を組みながらそう言う晴雅の元に1人の少女が現れる。しかし、その少女は少し透けているように見えた。
「何カッコつけてんだ。」
「別にカッコつけてなんかないよ。」
晴雅は照れたように言う。
「全部終わったな。」
「ああ、あんたのおかげだ。」
少し間を置いて、少女は言う。
「死神の力を使い切った今、陰陽師だったころの名前を思い出したよ。聞いてくれるか?」
「ああ。」
「私の名前は晴華だ。どうだ?お前と似てるだろ?」
「そう...だな。」
「なんだ?泣いてるのか?可愛い奴め。」
少女は近寄るとそっと彼を抱きしめる。もう感触はない。
「あまり早くこっちに来るなよ?」
「うん...!」
「よし‼︎じゃあな‼︎」
10年後
「晴夏〜朝ごはんだよ〜。」
「はーい!」
晴夏と呼ばれた少女は二階にある自室から元気よく走ってくる。彼女は朝ごはんが待ち遠しくてたまらなかった、が...
「晴夏!パパ起こしてきて〜。」
「え〜」と言うがその少女は父親を起こしに行くのを内心楽しみにしている。
「晴雅くん起きて〜!」
父親のベッドの上で飛び跳ねながらそう言う。
「もうちょっとぉ〜」
掛け布団の中から情けない声が漏れる。
「母ちゃん〜!晴雅くん起きないよ〜!」
「えー、仕方ないな今からそっち行くって言っといてね(はーと)」
それを聞いた晴雅の全身に寒気が走った。
「やだなぁ、夏帆さん。僕はもう起きてるよ〜」
「やったぁ、晴雅くん起きた〜!」
「じゃあ行こうか晴夏。」
「うん‼︎」
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