第三話 早く会いたい
次の日からほぼ毎日、俺と聖は登下校を一緒にした。
聖は、かわいい顔をしているのに気取らず、性格がさばさばしていると女子にも
人気が出てきて、たまに女子と寄り道をして帰ってくることもあった。
おふくろとおやじは、娘が出来たと大喜びで、聖の予定のない日の食事は、
いつでも来るように、と勧めたが、毎日じゃ悪いからと聖が遠慮し、
週4日ほど来るようになった。
学校が休みの時は、おやじの車で東京見物を四人で出かけたりしていた。
香港生まれの聖は、日本がすごく楽しいらしく、いつも遊びに行く時は
うれしそうにしている。
俺は、そんな聖の姿を見て内心ではデレデレだ。
夏休みに入る少し前、聖がすり傷を作って帰ってきたことがあったが、
大したことはなく、そのまま夏休みになり聖は父親のいる香港に帰って行った。
聖が香港にいる間、俺は健児やクラスの男子たちと遊んだり、大学受験のために
勉強をしていた。
たまに聖から香港の楽しそうなメールと写真が送られてきて、俺は少し寂しかった。
やはり、あっちの方がいいのかなぁ。
8月も終わりを迎え、日本に戻ってきた聖を空港までおやじと迎えに行った。
到着ロビーから出てきた聖は、ピンクのワンピースが良く似合っていて
変わらない笑顔で俺に手を振った。
「疲れてない?」 俺が聞くと、
「ううん、ぜ~んぜん。だって4,5時間だもん。でも、早く会いたかったな、城に!」
―――うっ!かわいいことを言ってくれるぜぃ。
クーラーの効いているロビーだが、俺はテレテレの汗をかいた。
マンションに着くと聖は
「後でお土産を持っていくね」 と言い、部屋に一人で戻って行った。
俺はまだ聖の家に行った事がない。
やはり、女の子一人が住んでいる家に、彼氏だからと言ってお邪魔するわけにも
いかない。
しかし…覗いてみたい。
きっと、かわいらしいキャラクターで埋めつくされているんだろうなぁ~。
ベッドはピンクのカバーだったりしてぇ~…へへへ~
俺の妄想は爆裂&炸裂していた。
夕食の時間に合わせ聖が家に来て、おやじとおふくろには、有名ブランドの
色違いのキーケースを。
俺には、中に手を入れて左右のボタンを押すとパンチをするモペットタイプの
パンチ人形をくれた。
おやじたちと俺の土産の差はなんなんだろう…
聖は自分の分の人形も持ってきていて、
「ホラッ、こうやって戦えるんだよ~。楽しいでしょ?」 と、
俺の人形に向かって自分の人形でパンチを始めた。
……た、たのしいです。