表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/25

第二十四話 聖の両親

大学も受かり、コンテストも終わった。

高校生活も残すところ、数日間の登校と卒業式のみとなった。

卒業式まで登校する日も少なかったが、3Bの仲間とつるんで遊びに行ったり

していた。


健児は俺と同じ私立大学に、あっ、日野もだ…

相川は体育大学へ

石田は国立大学へ

聖は「オレはファッションデザイナーになるぜ!」 と言い服飾専門学校へ

行くことになった。

3Bのみんなも進学や就職がそれぞれ決まっていった。



卒業式2日前、卒業式に参列するため聖の父親が日本に帰国した。


「今、成田なんだけどマンションに着いたら、父さんが城の家に挨拶に

 行きたいって言ってんだけど、いいか?」

聖から連絡が来た。


おやじとおふくろは、いそいそと部屋を片付け始め、俺は一応ジャージから

それなりの服に着替えた。

―――初めて会うからなぁ、聖のお父さんと…

俺は受験よりコンテストより緊張していた。

―――聖のお父さんだったら、きっとダンディなんだろうなぁ~

などと俺はまた勝手に想像していた。



4時過ぎにチャイムが鳴った。

俺の心臓も鳴り始めた。

―――き、来ちゃったよ。うぅぅぅドキドキだぜ。


おふくろが玄関に出向き、リビングに聖たちが入ってきた。

聖の横にはずんぐりむっくりした男性と、ものすごく美人な女性が立っていた。

不釣合いな二人だったが

「おう、城。オレの父さんと母さんだ」 聖が言った。



―――えっ…お、おとう…さん!ええーー、お母さん?

   聖のお母さんは亡くなっているはず…

   あっ、継母か…


「じょ、城です」

俺は一応、聖の両親に挨拶をした。

「いつも聖がお世話になっているようで、ありがとう、城くん」

その継母はやさしい口調で言った。

「いや~、熊山から聞いて、城くんが傍にいてくれて本当に感謝してます」

お父さんは深々と俺に頭を下げた。

ちなみに熊山とは理事長のことだ。


「いえいえ…」 などと俺も頭を下げた。

―――しかし、このおやじからよく聖みたいなきれいな子供ができたよなぁ。

    あっ、お母さん似か…聖は。でもこの女性は継母だよな?

    つーことは、亡くなったお母さんもそうとうな美人だったのか…

    このおやじ、見かけによらずモテまくり体質?

    もしかして、金で囲ってるとか?

    いやいや、それはないよな…

などと、俺は想像を張り巡らせていた。


「もぅ、この子ったら小さい時から暴れん坊で、お腹の中にいた時なんて

 ボンボン蹴って、早く出せーみたいな。ほほほほ~」

聖の継母の話で、おふくろたちは盛り上がっていた。


―――そうなんだ、腹の中にいたときから暴れてたんだぁ、聖…

    腹の中…?継母なのに腹の中?


俺はわからなくなり、昨日買った雑誌の話を口実に聖を自分の部屋に連れて行った。


「聖のお母さん…」

「ん?オレの母さんがどうした?結構美人だろ?城のお母さんも綺麗だけどな。

 オレ、まじ母さんに似てよかった、父さん似だったら城も困るだろ?」

聖はそう言い笑ったが、

「ま、継母じゃないの?!」 俺は聞いた。


「…へっ?」 聖の顔がハニワのようになった。

「なに?なんの話?オレの母さん、あの人だけだけど…?」


「転校してきた日、言ったじゃないか。お母さんいないって。で、お父さんは

 香港の女の所だって…」

俺の言葉に聖が笑い出した。

「おいおい、オレの母さん勝手に殺すなよなぁ。母さんは家にいない。

 それに香港の女の所って母さんの所って意味だしぃ」

そういって聖はまた笑い出した。


俺は勝手に聖の生い立ちを創作していたのか…


この後知った事実は、聖のお父さんが「崎田権次郎」。

「GONJILO」 という世界的有名な日本人ピアニストだった。

俺でも知っている名前だ。

ピアニストにしては少し短めの指だが、女性が弾いているのではないだろうかと

思わせる綺麗なやさしい音色を奏でることで有名だった。



―――しかし、聖がお母さん似でよかった…

みんなで食事をしながら、俺はそればかり考えていた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ