第二十二話 イケイケメンメン・コンテスト 3
控え室に行くと、
「君、すごい肉体なんだね」
「ちょっと触らしてくれ!」 などと数人のメンズたちが俺の胸や腕やらを
ベタベタ触りはじめた。
聖に触られるのは大丈夫なのに、他の男から触られるのはなんか…キモイ。
一人の色白なかわいらしいメンズから
「君はもちろん、攻めだよね。ステキな体だよね」
と、ニコっと微笑まれ言われた。
なんのことやら分からない。
俺が「攻め」の意味を知るのは、ずっと後のことだ。
全員の特技が終わり、少しの休憩の後ステージに上がり、最終候補10名が
発表された。
「5番!日野万太郎さん!」 日野の名前が呼ばれた。
ちなみに日野の名前は万太郎と言う。
日野は「あたりまえだ」とでも言いたげな目で俺を見てから一歩前に出た。
「21番!大岡城さん!」
9番目に俺の名前が呼ばれた。
3Bの連中は大喜びだった。
俺は日野の方をチラッと見て、ニッコリ微笑んであげた。
日野は下唇を噛んで俺を睨んだ。
俺は、とりあえず最後まで残れたことにホッとしていた。
選ばれた10人を残し、他のメンズたちは舞台を下りた。
これから審査員からの質問を受ける。
「やっぱり、大岡君も10人に残ったんだね」
俺に話しかけてきたのは、さっき俺の体をいつまでもペタペタと触って
「攻め」発言をした12番の登戸祐二君だった。
色が白く、165cmくらいの秋田から来た高校一年生のかわいい子だ。
男の俺でさえ、かわいいと思えてしまう…
−−−いやいや、俺には聖がいるだろうと、自分に言った。
「まぐれだよ、きっと。みんなカッコイイし、君みたいにかわいかったり
するのに、俺選ばれていいのかなぁ、なんて思ってる」
俺は頭をかきながら登戸君に言った。
「そんなことないよ!大岡君はカッコイイです!ヌンチャクもできるし、
僕、あこがれちゃいます!…っ言うか好き…」
「え?」 最後の方は小さい声だったから聞こえなかったが、登戸君は
そう言って、俺の上腕二等筋を触りながら褒めてくれた。
登戸君のスキンシップの意味があまりわからないまま、審査員からの質問が始まった。
審査員の人が俺に質問をした。
「尊敬する人はどなたですか?
―――無難な質問だ!
「ブ、ブルース・リーさんです!」
俺は披露したヌンチャクと結びつくように答えた。
「理由は?」
「彼の功夫に対する愛と強い精神が---」
実のところ、彼の映画は聖に無理矢理見せられていたが、彼自身を語れるほどの
知識は持ち合わせていない。
が、目を輝かせて彼の話をする聖の話を思い出しながら、まるごと言った。
言い終えて俺が聖を見ると、親指を立てて喜んでいた。
「みなさんたぶん、おモテになると思いますが、理想の女性のタイプは?」
―――げっ、理想のタイプ?
俺は一生懸命考えた。
―――聖を思い浮かべたが、アイツは男の中の男だ…
聖と出会う前の俺の理想女性は…?
−−−だ、ダメだ、わからない。
「大岡さんのタイプは?」
俺の番になってしまった。
「えーっと、自分より強い人…」
―――ち、ちがーう。
M的な発言をしてしまった。
「じゃ、女子プロレスラーの人とかかしら?」 審査員の女性に聞かれた。
「は、はい。あっ、いえ、心の強い人という意味です」
―――あせったぜ。俺、強い女が好きだったのかよ…
自分でも気がつかなかったが俺はMの様だ…
10名の最終審査が終わり、一度審査員が席を離れ、
俺たちも舞台の袖に待機した。
また登戸君が俺の傍に来て
「大岡君は強い人が好きなんだ…午前中に控え室に来た大岡君の彼女も強いの?」
少し悲しそうな顔で聞かれた。
「えっ?ぁあ?あれテキトーに答えただけ。タイプの女性って考えた事なかったし、
別に女の子だけが対象じゃないし~」
―――やべっ、俺なに言ってんだ。聖のこと考えてたら、とんでもないことを
口走ってしまったぞ!
俺は「そっちの人」だと思われてドン引きされたらどうしよう~と、内心あせったが、
なぜか登戸君の顔は明るくなり、目がキラキラになった。
―――ど、どうしたんだ?!登戸君?!