第二十一話 イケイケメンメン・コンテスト 2
俺たち出場者はスタンバイのため舞台袖についた。
袖から会場の様子を覗いてみたら、両親と聖、サエドンと3Bのみんなが
来てくれていた。
―――みんなぁ、忙しいのにありがとう…
俺は心の中で涙した。
コンテストが始まり、一番から順に名前を呼ばれ、マイクの前に行き
出身地と名前と年齢を言わなければならない。
五番の日野が名前を呼ばれ出て行ったが、緊張しているのか
右手右足、左手左足が一緒になっていた。
―――ひ、日野…。かわいそうに…。
俺の番になり、マイクの前に立った。
ライトはステージ上にしか当たっていなかったが、薄暗い客席の中の
聖たちの姿は思いのほかよく見えた。
健児たちが作ってくれたのか大きな垂れ幕が異常に目立っていた。
俺が自己紹介を始めると3Bから合いの手が入った。
「城~~」
「がんばれ~」
「いよっ、大岡ぁ」 とかはよかったんだけど…
「よっ、中村やーー」 歌舞伎じゃないし…
「たまや~~」 花火でもないし…
叫んでいたのはサエドンだ。
石田に注意されているのが見えた。
審査員は苦笑いで後ろを振り向き、会場は爆笑だったが、
俺よりサエドンの方が目立ってどうすんだよ…
俺は首を捻りつつ 自分の位置に戻った。
でも緊張がほぐれた。
一度控え室に戻り、特技披露の順番を待った。
控え室に残っているメンズたちでモニターに映し出されている会場の模様を
見ていた。
歌を歌ったり、ギター演奏したり、モノマネで笑いをとっているやつなど
みんなさまざまな特技を披露しアピールしていた。
俺の特技と似ているメンズは誰もいなかった。
みんな結構、優雅だったり繊細な格好良さをアピールしていた。
俺はワイルド過ぎたか…少し心配になってきたが、今更しょうがない。
たて笛持ってきてないし…
日野はダンスを披露した。
ダンス…「ロック」「ポップ」「ハウス」…「ブレイキング」…などではなく、
一人社交ダンス…だった。
ちゃんと燕尾服を着て、ステージの端から端までを目一杯使って一人で器用に
踊った。
日野が控え室に戻ってきて俺のところにきて言った。
「どうだ!僕のダンス!」 自信満々だ。
「うん…なかなかよかったよ」 俺は一応褒めておいた。
控え室が、大爆笑だったことは言わなかった。
「だよなぁ~僕のダンス光ってただろう?ふぁっふぁっふぁっ」
と日野は爺さんのような笑い方で去っていった。
「21番から25番までの方、スタンバイお願いします」
スタッフの人に呼ばれた。
俺は舞台に向かった。
「21番!大岡城。功夫の型とヌンチャクをやります!!」
俺はステージ中央に立ち、おもむろにTシャツを脱いだ。
俺の顔と鍛えられた体のイメージが違うからだろうか、きゃ~、きゃ~と
言う女子の声が聞こえた。
俺は汗と涙の染み込んだヌンチャクを握り締めたまま、最初にボディビル部の相川の
リクエストでボディービルダーのポーズをまねした。
胸筋はまったく動かなかった…が、うけた。
本人はいたってまじめにやったのだが、なぜか笑いを取った。
……おかしいなぁ?
俺は首をかしげつつ、次に功夫の型を披露した。
「いよっ!カンフースター」
「鶴仙人!」 などと合いの手をいれてくるのはサエドンだ。
―――や、やりずれ~~
最後にヌンチャクだ。
毎晩毎晩、聖に指導を受けて頑張ってきたヌンチャク。
俺は頑張ってきた自分を回想しながらも最後にヌンチャクを脇に挟み
「あちょぉぉぉぉぉぉぉ」 奇声を発した。
なりきるということは恐いものだ。
俺の気分はすでに香港の功夫スターになっていた。
ばっちり決まった俺は、会場から割れんばかりの拍手をいただき、
一礼をして控え室に戻った。