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第十四話 城、オレもだ!

恥ずかしさを我慢して、俺は次の朝マンションロビーに下りて行った。

朝食の時、おやじとおふくろは普段と変わりなく過ごしてくれていた。


ロビーには、いつも後から来る聖が先に来て待っていてくれて

「おはよう!」 いつも通りの聖がそこにいた。

「お、おはよう…」 俺は、カメムシくらいの小さい声で言った。


聖の顔が見れなくて、横を通り過ぎて行こうとしたら聖が手をつないできた。

俺は振りほどこうとしたが、聖がものすごい力で握り、離そうとしなかった。

うっ…この握力には負ける。


「ちゃんと、おにぎり食ったか?」

「う…ん」 俺はまたカメムシ音量で答えた。


「お母さんに手伝ってもらって一生懸命作ったんだからな」

「う…ん」 俺の声はミジンコ音量になっていた。

「しょ、しょっぱかった…」 俺はボソボソと言った。


「ははは~。あれ、お母さんのアイディアだよ。昔、お父さんと喧嘩したときに

 お父さん部屋にこもっちゃったんだって。喧嘩してたけど、やっぱお母さん

 心配で、おにぎり三つ作って、その一つに塩の塊入れたんだって」

―――おふくろ、よくそういうこと考えるよな…


「でも、お父さんちゃんと食べてくれたって。それで仲直りしたらしいよ」

―――おやじも…食ったのか。


聖は続けた。

「城、おまえもちゃんと食ってくれたのか?まぁ、オレらは別に喧嘩したわけじゃ

 ないけどさぁ」

「うん…三つとも食べた。…うまかった…」 俺が言うと聖は

「そうか!サンキュー」 と言い、学校に着くまで聖は俺の手をギュッと

握ったまま一度も離さなかった。


学校の門近くに来ると、チリンチリン~と後ろから自転車のベルが聞こえた。

「いよーーー!お二人さん。今日も仲良くお手手つないで登校かーーい。

 青春だねぇ!うらやましねぇ~」

と、サエドンがいつもの大きな声で、3Bからプレゼントされた自転車に乗って

うれしそうに通り過ぎて行った。


通り過ぎたサエドンの後姿を見ていたら

「ずっと一緒だから…」

「えっ?」

聖の言葉に俺は今日初めて聖の顔を見た。


「オレら、この先もずっと一緒だから。オレもおまえのこと好きだし」

―――ええ!!い、いまなんて?好きって、好きって言った?

「浮気すんなよな。特に他の男に走ったら、おまえ北高の細田みたいに

 なるからな」


「もう一度、言ってくれ!」 俺は聖に言った。

「なにを?」

「さっき言ったこと」 俺は詰め寄った。


「浮気したら、北高の」

「ちがう!その前だ!」

「…いいだろ、さっき言ったんだから…」 聖は照れているようだった。


「いいから、もう一度言え!」

「…オレも、おまえのことが…好きだ」

「ま、マジ?」

「マジ…」


俺は思わず、校門の前で聖を抱きしめた。

「ちょっ、おい、みんな見てっだろーが」

俺は聖をもっと強く抱きしめていた。

聖は振りほどこうとしたら簡単に俺の腕なんて離れられたはずなのに

そのまま俺の腕の中にいた。


その日、校内は昨日の「日野告白事件」と「朝の校門前ラブシーン」の

話題で持ちきりだった。


朝、俺と聖が抱き合っていたと言う話が、3時間目ではキスをしていたという

話になり、4時間目辺りにはプロポーズをし卒業したら結婚する、ということ

なっていた。

そして、昼休みが終わるころには、聖が妊娠している…というわけのわからぬ

噂が上っていた。

妊娠説はいくらなんでも行きすぎだ、と先生達も苦笑していた。

ありえないし…

サエドンはひっくり返って笑っていた。





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