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第一話 いきなり彼女ができました

本編はR指定なしの青春ものですが、BL・女装が含まれます。嫌悪感のある方はお気をつけください。

この日、僕は神様に感謝した。

いや、感謝したはずだった…



6月、龍星高校三年B組は、少しざわついていた。


「こらー、静かにしろ!」 担任・サエドンが手を叩きながら、続けた。

「お父様の帰国に伴い、香港より転校してきた崎田 聖さんだ」

「わからないことも多いと思うから、みんな、いろいろ教えてやってくれ!」

サエドンの横には、黒髪セミロング・170cm位のかわいいモデル並みの女子が

立っていた。


サエドンの後に続き、彼女が自己紹介を始めた。

「崎田 聖と申します。小さい頃より香港で生活していたので日本のことは

 あまりよく分かりません。いろいろ教えていただけると嬉しいです」

彼女・聖は、静かに丁寧に話した。


男子の目はすでに聖に釘付けだ。

そんな中、サエドンが俺に向かって言った。

「城!おまえの隣だ。世話係、頼んだぞ!」


えっ、えーー、俺?


聖は俺の隣の席についた。

「よろしくお願いします」 そう言うと、聖はニコッと笑った。

「…あぁ、どうも…」 俺はドキドキして小声だ。

そして、男子たちのうらやましそうな視線をもろに浴びた。


女子も聖を見ている。

だが、彼女たちの視線の意味は、男子の視線のそれとは違う。

俺の横に座った聖に対しての嫉妬の眼差しだ。


なぜなら、自分でいうのもおこがましいが、俺・大岡城は校内一のいい男だからだ。

ファンクラブもある。

おふくろは元モデルで、親父もそこそこいい顔をしている。

俺は二人のDNAをばっちりと受け継いだ。


俺の人気はルックスだけのものではない、無口で女に媚びないクールな男。


学内はもちろん、他校からの女子、街を歩けば逆ナンにも合う。

そんな俺は、残念ながら特定の彼女はいない。

彼女もほしい!デートもしたい!あんな事もこんな事もしたい!

が、しかし…女子との絡みは無しだ。


ただ単に、照れ屋なだけなんだぁぁぁ。

女子とお話をするなんて…恥ずかしすぎる!これが本音だ。


そんな俺の隣に転校生が、それも、すんげーかわいい女子が座った。

俺は、緊張のあまり少し、クラクラしていた。


ホームルームが終わり、サエドンが教室から出て行くと、男子が聖の回りに

集まりだした。

「モデルとかしてるの?」

「彼氏いるの?」

「クラブとか入るの?」

「香港で生まれたの?」

質問ぜめだ。

そして、聖はみんなの質問に一つ一つ丁寧に答えていった。

その口調は静かで女らしく、それがまた男子の心をくすぐる。

俺もくすぐられた。


それにしても!みんな!なんでそんなに気楽に女子とお話できるんだ!

うらやましすぎるぜ。

特に健児、おまえは男子女子構わず馴れ馴れしい上に、おもしろい。

おちゃらけた性格だ。

違う意味、女子にも人気がある…

今度生まれ変わったら俺は、絶対おまえになりたい。

いや、なる!!


授業の合い間の10分ごとの休憩に男子が聖の所に来る。

また質問を浴びせる。それを繰り返し、午前中の授業は終わった。


昼メシの時間になり、聖が俺に聞いてきた。

「城くん、食堂ってあるの?」


どうやらお弁当をもってきていないらしい。

俺も持って来ていないので一緒に食堂に行こうと誘った。

席を立った時、

「崎田さん、学食行くなら案内してあげるよ」

そう言ってきたのは、いつも真面目くさった学級委員の石田と数人の男子。


「ううん。城くんに連れて行ってもらうから、大丈夫。みんなありがとう」

聖はそう言うとニコッと笑いかけた。

「いや、僕は学級委員だし、転校生の面倒は僕が…」

なぜか眉間にしわを寄せ、奥目づかいで話している。

いつものキャラとはちがうぞ!学級委員の石田くん!


「先生に面倒見ろって言われたの俺だから」

俺は石田に向かってぶっきらぼうに言った。

「うん、だから大丈夫よ。委員長さん」 聖は笑顔で俺に続いて言った。


「ぼ、ぼ、ぼ、僕は、い、い、石田と申します!委員長じゃなくて

 い、石田でい、い、いいですぅ」

どもりすぎだ…石田。聖の笑顔にやられたらしい。



「ずるいぞー、城!」

健児と他男子たちの視線と声を背に、俺と聖は教室を出た。


学食に向かう廊下で聖が俺に言った。

「城くんって人気者なの?女の子たちがみんな見てるよ?」

「えっ?」

床を見ながら歩いていたので気がつかなかったが、男子も女子も俺たちを

見ていた。


「あぁ~、やっだぁ。城~どうして女と二人で歩いているのよぉ」

飛んでやってきたのはA組の靖子とそのお仲間。

靖子は俺のファンクラブの会長だ。

うざい、こういうのは彼女にしたくない。


「あなた?転校生って!なんで城と一緒にいるのよぉ」

靖子は聖に言ったが、俺が代わりに返事をした。

「うっせーな、先生に頼まれたんだよ」

「え~、やだぁ~どうして城なのよ!」

俺は靖子の声を無視して、とっととその場を離れた。


食堂に入るなり、今度はD組の木本が現れた。

「よっ!城、なになに!こんなかわいい子うちの学校にいたっけ?」

「転校してきた、崎田です。よろしくお願いします」 聖が微笑んだ。

「あ、あ、ど、ど、どうも。木本ですぅ」

どうやら木本もやられたらしい。

頭をかきながら真っ赤になっている。


「食券あそこで買って、中にいるおばさんに渡せばいいから、

 サンドイッチとかは、あっちの売店」

俺は事務的に言った。


「うん、わかった。城くんは何を食べるの?」 聖に聞かれ、

「俺?俺、A定…」

今日のA定は、ミックスフライ定食だ。

白身のフライにカニクリームコロッケ、そして俺の大好きなエビフライ入りだ!

結構このエビフライがデカイ!


「じゃ、私も城くんと同じのにする」

聖はそう言うと、小さなクマ柄の手提げ袋から、これまたかわいらしいお財布を

出した。

か、かわえ~なぁ。女の子らしいよなぁ。


おばさんからA定を受け取り、空いている席に座ったが、なぜだか聖は俺の隣に

腰を下ろした。

「と、隣に座るの?向い方じゃなくて?」 俺はあせって聞いた。

「うん?いけないの?」 首をかしげて言われた。

かわいい…


聖は続けて言った。

「あのね、香港って恋人同士とか、よくね、並んで座るの」

こ、恋人同士ぃーー?俺は少しうれしさまじりの眩暈を感じた。

この時、俺の頭からは湯気が出ていたに違いない。


聖は俺のあせりも知らず、隣に座りA定を食べ始めた。

そして、こともあろうか俺の大切なエビフライを俺の皿から取り言った。

「私、エビフライ大好き!頂だい!城、これあげる」

「ええーー!」

聖は自分の皿のキャベツの千切りを、全部俺のキャベツの千切りの上にのせた。


俺はてんこ盛りのキャベツを見ながら言った。

「キャベツ…食べた方がいいよ…消化の手助けもしてくれるし、健康にも…」

「城って、男なのにちゃんと体のこと考えてるんだね、すごいね」

聖は首を傾げて言った。


うっ、かわいい…ってか、俺のこと「城」って呼んでるぅ。

しょうがない、今日は俺たちの出会いの記念に大好きなエビフライは聖に

あげることにしよう。


「おうおうおう~なんだなんだ、最近の若いヤツは早えーなぁ。ぐわっははは」

サエドンが俺たちの向かい側にA定をバン!と置き座った。

サエドンの響き渡るデカイ声で俺たちは回りの注目を浴びた。

サエドンは先生なのに結構オープンだ。

というか、校風というのだろうか、この学校の先生たちは結構自由に生徒を

いじくってくれる。


「先生、声大きいよ…はぁ…」 俺が溜息まじりに言うと

「んだっ!いーじゃねーか。城!おまえイケメンのくせして彼女とか女っ気ない

 んだから、このまま付き合っちゃえ。よし!決まりだ、がははは~なっ!崎田」

俺は聖も困っているだろうと彼女を見た。


「はい!そうしま~す!」 聖は素直に答えた。

―――ええーーー。うそ…だろ…。


俺は聖の返事にあせりまくり、キャベツだけを口に運んでいた。

「なんだ!城、おまえそんなにキャベツが好きなのか?ホラ、じゃやるよ、これ。

 しょーがねーなぁ、ったく!」

サエドンは自分のキャベツの千切りを全部俺の皿の上のキャベツにのせた。

龍星高校のイモムシとは俺のことだ…

そして、俺が二番目に好きなカニクリームコロッケを「代わりにこれ、くれ」

と、勝手に取っていった。

昼メシを食べて、校内を少し案内し、5時限目の授業が始まる5分前に教室に戻り、

中に入るとクラス全員の視線が俺らに向けられた。


健児が飛んできた。

「城~、おまえら付き合う事になったって本当か?!」

「はい、そういうことになりました」 

聖が(それがなにか?)みたいな顔で言った。


「きゃー、いや~城くん~」 とか

「マジかよ!」 とか

「がっくりだよ…」 などと、みんなは騒ぎ出した。

学食で大きな声のサエドンとの会話を聞いていた生徒が、みんなに広めたようだ。


石田に限っては、いきなり俺にスリーパーホールドかけてきた。

石田がプロレス好きだということを初めて知った。

今日は新しい石田の発見が多い日だ。


こうして、俺と聖は、彼女の転校一日目から学校公認のカップルになった。

…あっ、美男美女の---



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