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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第3章 遺志を継ぐもの……
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第29話 ミッション5-3 その7

 ギガントスの攻撃を何度も躱して、カウンターで反撃すること5回目。相手のHPの高さが嫌になる。

 だけど、ダメージを負ったギガントスは体力を減らすと、新たに攻撃パターンが変わった。


 突如、今までどんな攻撃を喰らっても動かなかったギガントスは、攻撃を中断させると後ろ脚を上げて床を削り始めた。


すぴねこ 『来るぞ!!』


 ボス達に叫んでから、ギガントスの前から側面に回る。

 その直後、一番距離が離れていたねえさんに向かって、ギガントスが突進してきた。

 馬の様に4本脚で走るけど、相手は全長6mの巨体だ。その走る姿は馬というよりも、暴走するアメリカントラックを彷彿させた。


ねえさん 『チビちゃん!』

チビちゃん『わ~~逃げろ~~!』


 俺の声を聞いて準備していたねえさんと一緒に組んでいたチビちゃんは、突進するギガントスを見るなり全速力で右へ走り出していた。

 ギガントスは2人を追うが間に合わず、勢いそのまま壁に激突して破壊していた。本当、後で誰がその壁を直すんだ?


 ギガントスは4本の手で瓦礫を乱暴に払いのけると、今度は一番距離の離れているドラに向かって走り出した。


ドラ   『うわっ、来た。来るな、来るな!!』


 そう言うドラだが足が震えて動かず、その場に留まっていた。

 だけど、暴走するギガントスがドラまで残り10mを切ったタイミングで、ギガントスの足元が爆発した。


ドラ   『ドッキリ大成功! 前作と動きが同じだったから助かったぜ』


 ドラが震えていたのは演技。まあ、分かっていた。

 コイツがヘタレじゃなくて、ネットで炎上しても気にしないぐらい図太い神経の持ち主なのは誰もが知っている。


 ギガントスが暴走すると、全身を守っていたシールドは上半身だけになり、下半身のシールドは解除される仕様だった。

 敵キャラを設計したキースリー曰く、シールドは動かない場合のみ発生して、動くと解除されるらしい。ただし、下半身のみ。

 だから、別に地雷じゃなくて銃での攻撃でもダメージを与える事は出来るけど、せっかく一番距離が離れているプレイヤーに来ると分かっているのだから、地雷を仕掛ければ簡単に大ダメージを与える事が出来た。


「ガアアアアアアアーーーー!!」


 地雷を踏んで大ダメージを受けたギガントスが、部屋全体に響き渡る雄叫びを吠える。


ボス   『伏せろ!!』


 ボスの命令に全員が床に伏せて、ギガントスの様子を伺う。

 ギガントスが4本の腕を高々と上げると、一気に振り下ろした。

 そのモーションの後、胴体から光の輪が発生して部屋中に全体攻撃を放った。


 この攻撃の正体はソニックブーム。空気の刃が全方位に広がって相手を切り裂く。

 過去にドラがこの攻撃を喰らって、頭が真っ二つに割れてフェイタリティー(死亡)した。

 ちなみにその時に撮った、俺がドラの頭を持ち上げてピースしているツーショット写真は、今でも大切に持っている。グロ注意。


 全体攻撃を終えたギガントスが、今度はミケに狙いを定めて走りだす。

 その隙に再びドラが地雷を仕掛けに向かっていた。







 ギガントスが3度目の地雷を踏んでダメージが深刻になり、片膝を付いていた。

 その様子に毎回思うのだが、3度も地雷を踏むとか、少しは学習しろ。


 そのギガントスだが、延髄を守っていた装甲が割れて、心臓の様なコアが露わになっていた。

 そのコアこそ、ギガントスの最大の弱点。これを破壊する事が、唯一ギガントスを倒せる方法だった。


すぴねこ 『ドラ!!』

ドラ   『おう!!』


 近くに居るドラに叫ぶと、インプラントを発動する。

 そのドラは、俺が叫ぶのを待っていたのか、ギガントス背後から近づいて背を向けると、中腰になって両手を前に出していた。


 ドラに向かって走り、ツーマンセルでドラの手を台座に足を乗せ高く飛び上がる。

 その衝撃でドラが後ろに吹っ飛ぶが無視して、ギガントスの胴体を掴んでよじ登った。


 スローな世界の中、ギガントスが俺を振り払おうと暴れて身をよじるが、それを堪えて背中に張り付く。

 そして、ホルスターからグロック19Mを取り出すと、目の前のコアに銃口を押し付けた。


すぴねこ 『レスト・イン・ピース(安らかに眠れ)? いや、テメエは苦しんで死ね!!』


 そう言うと、グロックのトリガーを連続で引いて、銃弾を連続で放った。


「ガッ……ガアアアアアアアーーーー!!」


 コアを撃たれたギガントスがさらに暴れ、それに耐えきれず振り払われる。

 4mの高さから真っ逆さまに落下するが、空中で体勢を変えて足から着地すると、そのまま床を転がってダメージを軽減した。

 そして、ギガントスの方は暴れ馬の様に暴れ回り、最後には体力が尽きたのか床に倒れて動かなくなっていた。







すぴねこ 『いててててて……やったか?』


 起き上がるのが怠くて床に倒れたままギガントスを見る。


ねえさん 『すぴねこ、ご苦労さん。今回はすぴねこの勝ちね』

すぴねこ 『まあ、何時も土台がもたもたしているせいで負けてるからな』

ドラ   『土台って俺かよ!』


 ねえさんとは、毎回コアの破壊をどちらが先にするかの勝負をしていて、今回は俺の勝ちだった。


ミケ   『どっちだって良いじゃない勝てたんだから』

チビちゃん『だよね』


 俺達が互いに労う中、ボスは会話に混ざらず、スコーピオン小隊が倒れている方へ近づいた。


ボス   『アンダーソン、無事か?』

「……ああ、大丈夫……とは言えねえな」


 そう言ってアンダーソンが自分の部下を見れば、全員が息絶え絶えで、中には既に死亡している兵士も居た。

 そして、そのアンダーソンは、右腕が引き裂かれて消失していた。


「だけど、こうして生きているんだ、感謝している。腕は……できれば治してくれないか?」

ボス   『少し待ってろ。チビちゃん!』

チビちゃん『あいさ』


 チビちゃんがアンダーソンに近づいてメディカルキッドを床に投げ捨てると、アンダーソンの腕がにょきにょき生えて、おまけで生きている周辺の兵士も回復させていた。


「バグスはクソだけど、メディカルキッドを生み出した生体テクノロジーだけは褒められるな」


 アンダーソンは生えた腕を見てため息を吐いていると、この場に居る全員の無線にスピットマン中佐の無線が入ってきた。


『……こちらHQ(本部)、スピットマンだ。敵本拠地を攻撃していた地上部隊が全滅した。同時にバグスの反撃が始まって南部基地が崩壊したらしい。この無線を聞いている兵士は、直ちに要塞まで撤退しろ。繰り返す、地上部隊が全滅した。直ちに要塞まで撤退して、救助の艦が来るのを待て!』


 それは、勝利を目の前にして敗北した、地球軍の撤退命令だった。







「さて、俺達のせいでミッションが失敗しちまったな……それに脱出しろって言うけど、相変わらず本部の連中は無茶を言いやがるぜ」


 アンダーソンが薄ら笑いを浮かべて本部を皮肉る。

 時刻を見れば、目標時間の140分はとっくに過ぎて、155分を経過していた。

 Sランクのクリアは既に失敗していて、制限時間まであと5分。

 5分ではマザーコンピューターの破壊どころか到着すら出来ず、今回のミッションは失敗に終わるだろう。


「なあ……お前達は、この戦争の全ての局面で最高の結果(Sランク)を生んできた。天国の隊長(ロックウェル)もきっと喜んでいるだろうな」

ボス   『……そうだな』

「一番最悪な状況になっちまったけど、俺もお前達もまだ生きている。だったら、やる事は1つだけだ。マザーコンピューターを破壊しに行こうぜ。照れくさいけど俺達が地球を守る最後の希望だ」


 そう言うと、アンダーソンが立ち上がってボスに手を差し出した。


ボス   『もちろんだ』


 ボスが出された手を握り返すと、アンダーソンは照れた様に笑っていた。







 俺達が2人の握手を見守っていると、突然、3通のインフォメーションが流れてきた。


 ログを見て確認すると、まずミッションの失敗が書いてあって少し落ち込む。

 だけど、その次のログには、シークレットミッションクリアが書いてあった。

 やはり、アンダーソンの救出がシークレットだったらしい。


 そして、最後のインフォメーションに、全員が眉を潜める。

 そこには、キャンペーンモード全シークレットミッション達成ボーナスとして、ミッション5-4を一度だけプレイ可能な事と、そのミッションにゲストとしてアンダーソンが参加すると書いてあった。


 ただし、そのミッションが失敗すると、また5-3からやり直しという厳しい条件だった。




結果

  クリアタイム  156分12秒

  死亡者数    0人

  シークレットミッション オールクリア


 判定

  ミッション失敗


 報酬

  クリアボーナス       なし

  取得スキルポイント     なし

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