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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第3章 遺志を継ぐもの……
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第27話 ミッション5-3 その5

 俺が予想していた通り、今回のミッションは激戦の連続だった。

 通路は一本道なのだが、ボスの言うカラテカ式なのか、前に進んで敵のワープ装置を破壊しないと次々と敵が襲い掛かってきた。

 腹が立つのは、弾薬が切れそうになると、丁度良く弾薬が積まれた脱出ポットが部屋に転がっていて、補給が出来た事だろう。

 そのおかげで、諦めようにも諦める事が出来なかった。


 敵も雑魚は当然の事ながら、ガーディアン、エリート兵の数も多かった。

 最後の方だとヘビータンクが再び現れて、全員が半死状態になりつつもなんとか勝利を手にした。

 戦いで何度も死にかけ、何度も諦めそうになったけど、ここまで誰も死なずに来れたのは褒めても良いと思う。


 そして、ミッション開始から100分経過して、俺達は本拠地の管理ルームの前に到着していた。


ボス   『やっと最後の場所まで来たって事か?』

チビちゃん『まさか脱出ポットが進路を外れて、敵がいっぱい居る場所に落ちてるとは思わなかったね』


 道中、ドラがMAPを入手して確認すれば、俺達が落ちたのは敵本拠地の正面側で、地球軍の地上部隊に応戦するために大勢のバグスが待機していたエリアだったらしい。


ドラ   『誰も死んでねえのが奇跡だぜ。もうこのミッションは二度とやりたくねえな』

ミケ   『もし部屋の中に敵が居たら、ギリギリってところかしら』

ねえさん 『残り40分、確かにそうかもね』


 ミケとねえさんが現在時刻を確認する。

 もし、管理ルームの中で後1回戦闘があると想定したら、少しだけ余裕をもってクリア出来るだろう。


すぴねこ 『……………』


 だけど、俺は扉を見て、何かが気になっていた。

 それが何なのかは分からないのだが、とても重要な事を忘れている。そんな気がしていた。


ドラ   『とっとと開け……って、うおっ!』


 ドラが扉の横のプレートを弄って正面の扉を開けようとした途端、突然、建物全体が揺れて転びそうになった。


チビちゃん『な、何?』

ボス   『イベント発生か!?』


 警戒して周辺を見回すが敵が現れる事なく、突然発生した地揺れも収まって全員が首を傾げる。


ミケ   『一体何だったのかしら?』

ドラ   『さあな。それよりも入ろうぜ』

すぴねこ 『……待ってくれ』


 今の地揺れは明らかにおかしい。

 このままミッションをクリアするのに抵抗を感じて、ドラを呼び止めた。


ドラ   『あ? 何だよ』

すぴねこ 『…………』

ミケ   『……さっきからずっと黙っているけど、どうしたの?』


 ミケが、痴呆老人を仕方なく介護する低賃金介護士の様な目で俺を見ていた。


すぴねこ 『何かが足りない……』

ドラ   『何がだよ。あれだけ敵をブッ倒して、まだ倒し足りねえのか?』

すぴねこ 『違う! だけど、何かが足りねえ。順調なのは分かっているが、何かを忘れている』


 そう言い返すと、ドラが顔を顰めた。


ドラ   『あれが順調か? 敵がぞろぞろ現れて何度も死にかけたのに。一体、何を悩んでいるんだ』

ミケ   『そうよ。何も悩む必要がないじゃない』

ボス   『待て。こういう時のすぴねこは、みょうちくりんな勘が働く』

チビちゃん『何時もの謎探偵だね』

ねえさん 『だけど、そのほとんどが厄介ごとなのよね……』


 周りのヤジを無視して思考に耽る。

 ここまで1本道で分岐点はなかった。だけど、あのケビン達はそんな単純なミッションを作るのか? そいつは天地がひっくり返ってもありえねえ。

 それに、先ほどの地揺れ。恐らく何かのイベントが発生したに違いない。


 足りないのは何だ? ミッション開始からここまでの流れを思い出す。

 まず、俺達は作戦指令室に居た。

 そして、そこにはスピットマン中佐がモニターに現れて、大勢の兵士と一緒に……!?


すぴねこ 『そうか! アンダーソンが居ない!!』


 俺が叫ぶと、全員が驚いてこの場に居ないNPCを思い出していた。







ミケ   『そう言われてみると……確かに居なかったわね』

ドラ   『単に今回のミッションで出てこないだけじゃねえのか? それか、この部屋の先に居るとか』

すぴねこ 『だったら、何で今回だけスピットマンは、ブリーフィングの前に業務連絡をした?』

ドラ   『それは……何でだ?』


 俺の質問にドラが首を傾げる。


すぴねこ 『あの業務連絡でスピットマンは言っていた。「困っていたら助けろ」と』

ボス   『確かにそんな事を言ってたな』

すぴねこ 『それに、アイツも戦場で会おうと言っていたのに、何所にも見当たらねえ。今回のシークレットはアンダーソンの救出だ!』


 そう言うと、全員が驚いていたけど何所か納得している様子だった。


ミケ   『だけど、ここまで一本道だったわよ。アンダーソンどころかスコーピオン小隊の誰も見なかったわ』

ねえさん 『もしかして、さっきの地揺れがフラグだったの?』

ドラ   『マジかよ……もし、それが本当なら、ここまで来ないとSクリアの条件が開放されねえのか!?』

チビちゃん『だけど、今から戻ると言っても……』


 チビちゃんが現在時刻を確認して顔を顰める。

 今回のミッションの目標時間は140分。そして、既に100分が経過していた。

 今からアンダーソンを探すとしたら、恐らくミッションのクリアは無理だろう。


ボス   『……戻ろう』


 俺の話を聞いて考えていたボスが、苦渋の末に戻る事を決断する。


ミケ   『ボス! ゴールは目の前なのよ!?』


 ミケが驚いていると、今度は迷う事なくボスが頷き返した。


ボス   『皆、済まない。このまま中に入ればクリアすると思う。だけど、NPCだとしても俺はアンダーソンを見捨てる事ができない。それがロックウェルとの約束だからな』


 ボスの話を聞いて、チビちゃんがボスに抱きついた。


チビちゃん『そんなボスが、大好き!』

ねえさん 『だけどボス。下手したら、このせいで賞金が手に入らないかもしれないわよ……本当にそれで良いのね』


 チビちゃんに抱きつかれて困っているボスに、ねえさんが真剣な表情で確認してきた。


ボス   『自分でも馬鹿な考えだと思っている。たかがNPC、しかもシナリオで動くゲームキャラだ。死んだとしてもやり直せば、また生き返る。だけど、ここでアンダーソンを見殺しにするのは、俺はどうしても出来ない』

ねえさん 『……仕方がないわね。今回は付き合ってあげる』


 ボスの返答に、ねえさんは表情を緩めて笑うと、仕方がないと言った様子で肩を竦めた。


ドラ   『本当に困ったリーダーだ。だけど、リーダーの命令には逆らえねえな。俺も行くぜ。それでミケはどうするんだ?』


 苦笑いをして肩を竦めるツンデレドラに、ミケが凍てつくビーム光線を出す様な目で睨み返した。


ミケ   『まるで私だけが悪者じゃない。もちろん、アンダーソンを助けに行くわ』

ねえさん 『それで、すぴねこはどうするの?』


 ねえさんに問われて肩を竦める。


すぴねこ 『言い出しっぺは俺だから当然行くぜ。それに、望みが無いわけじゃない』

チビちゃん『どういう事?』


 首を傾げるチビちゃんに片方の口角を尖らせて笑う。


すぴねこ 『ダニエルの性格は最低だけど、攻略不能なミッションは絶対に作らねえ。きっと、戻った先に何かがある! ……多分』

ミケ   『その最後の「多分」って言葉がなければ、信じられたのに……』

チビちゃん『大阪人の「知らんけど」と一緒だよね』


 知らんがな。


すぴねこ 『それに、クリアするだけのゲームなんて遊んだってツまらねえ。ビショップだったら、きっとそう言っただろうな』


 締めにそう言うと、ミケが肩を竦めて笑った。


ミケ   『そうね……ビショップ君なら、そう言っていたかも』

ボス   『よし、決まったな。戻ろう!』

『『『『『了解!』』』』』


 全員の気持ちが固まると、俺達は目の前の管理ルームへ入る事なく、来た道を戻る事にした。







 10分掛けて来た道を戻ると、最初にヘビータンクと戦った部屋の扉が開いていた。

 ヘビータンクを倒した時は、この扉は鍵が掛かっていたままだったはず。それが開いているという事は、この先に何かがあるのは間違いない。


すぴねこ 『扉が開いてる。本当に信じられねえ!』


 俺が喜んでいると、ドラが顔を顰めて俺を睨んだ。


ドラ   『信じられねえって、お前が戻れって言ったんじゃねえか。信じられねえのは、その無責任な発言だ!』

すぴねこ 『おいおい。戻ると決めたのはボスだぜ。俺はただ考えた事を口にしただけだって』


 確かにアンダーソンが居ないと言って煽ったのは俺だけど、戻ると決めたのはボスだから俺じゃない。


ボス   『確かに責任は俺にある。だけど、そういう風に言われると本気でムカつくな』

ミケ   『人生で一番最低の無責任を見たわ』


 開いている扉を通り抜けて合流した部屋に入ると、天井から何かが突き破って入ってきた様な穴が床下にまで開いていた。

 上へ行く方法はないが、下は瓦礫が階段の替わりになって降りられそうだった。


ねえさん 『脱出ポットが天井から何かが落ちてきたにしては、穴が大きいわね』

ドラ   『俺の記憶が正しかったら、この穴を開けたのはクソ野郎だな』

ミケ   『ギガントスね』


 ドラとミケの言う通り、後で直す事など考えずこの穴を開けた馬鹿はギガントスだろう。


ボス   『前に見た時はこちらの装備が整っていなかったから勝てる相手じゃなかったが、今の俺達なら十分に勝てる』

チビちゃん『前作で何度も倒した相手だもんね』


 チビちゃんの言う通り、今作ではまだギガントスと戦っていないが、前作のAAWでは何度も倒した相手だった。

 もちろん、弱点だって当然知っているし、攻略方法だって忘れていない。


ボス   『ドラ、地雷は持って来てるな』

ドラ   『もちろんだ。まあ、前作と動きが同じか分からないから、見極める必要があるけどな』


 そして、ギガントスの攻略の鍵を握るのは、俺の身体能力とドラの持つ地雷だった。


ボス   『なら問題ない。降りるぞ』


 ボスの命令で俺を先頭に瓦礫を伝って下のフロアに降りる。

 そして、先へ進むと、俺達はアンダーソン率いるスコーピオン小隊と、ギガントスを見つけた。

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