第26話 ミッション5-3 その4
扉を潜ると、先ほどと同じぐらいの大きさの部屋に入った。
部屋の正面には以前にも見た事のある、敵が沸くワープ装置が4台並んでいた。
すぴねこ 『ワープ装置を4台見つけた。こいつがカラテカの正体だ』
ボス 『破壊できるか?』
すぴねこ 『任せろ!』
残り3つのグレネードを取り出して、ワープ装置に向かって次々に放り投げる。
グレネードが炸裂する前にワープ装置が光り出したが、グレネードが爆発して敵が現れる前に破壊する事に成功。
そして、グレネードが足りなくて破壊できなかったワープ装置から、ドロント兵が姿を現れた。
すぴねこ 『ウェルカム』
ドロント兵が俺に撃たれて出オチで死亡。そのまま、ワープ装置にスラッグ弾を放った。
ボス 『オールクリア。ムーブ、ムーブ』
どうやらボス達は残りの敵を始末したらしい。ボスが皆を急かせて移動を開始。
一方、俺の方はスラッグ弾を3発使用して、ワープ装置の破壊に成功していた。
すぴねこ 『これで本当にオールクリアだな』
ボスが部屋に入るなり、俺を睨んだ。
ボス 『すぴねこ。あまり無理はするな』
すぴねこ 『そいつは悪かった』
俺が全く気持ちの籠っていない謝罪をしていたら、部屋の天井が音を鳴り響かせて左右に割れ始めた。
チビちゃん『まだ何か来るの?』
ミケ 『少し休みたいわね』
俺達が銃を構えて警戒していると、天井から巨大な敵が落下してきた。
ドラ 『ビリケン様だ!!』
天井から落ちて現れたのはビリケン様改め、ヘビータンクだった。
そのヘビータンクは、ホバーリングで空中に浮かぶと、俺達を睨んでいた。
ボス 『撤退だ。前の部屋に戻れ!!』
俺達が今居る部屋には隠れる場所がなく、ヘビータンクのミサイルを喰らえばひとたまりもない。
ボスはそう判断すると全員に退却の命令を下した。
ねえさん 『鍵が掛かっているわ!』
すぴねこ 『どけ、俺が開ける!』
ボスの命令に戻ろうするが、いつの間にか扉は閉まって鍵が掛かっていた。
KSGにブリーチング弾を装填して扉に向かう。
ボス 『俺が囮になる。全員、散開!!』
ボスが軽機関銃を乱射して囮になると、後の皆はヘビータンクのミサイルの攻撃範囲から逃れようと散り散りに離れた。
ボスが囮になっている間に扉に辿り着くと、ドアノブにブリーチング弾を撃ち込むが、鍵は壊れず扉を開ける事ができなかった。
すぴねこ 『クソ、完全に閉じ込められている!』
ミケ 『ここで戦うしかないわ』
一方、ボスはヘビータンクから放たれた2発のミサイルの内の1発を乱射で撃ち落とすが、もう1発を避ける事が出来ず、ダメージを受けていた。
チビちゃん『すぴねこ君、ボスがヤバイよ』
すぴねこ 『ボス、交代だ』
ボス 『駄目だ。インプラントが発動出来るまで、引っ込んでろ!』
ボスが怒鳴り返してヘビータンクに向かって機銃を撃つが、ヘビータンクはホバーリングで攻撃を回避。
そして、装填が完了したミサイルランチャーをボスに向かって構えた。
すぴねこ 『その前にコイツを喰らいな!』
ヘビータンクが撃つより早くKSGのトリガーを引く。
銃口から放たれたスラッグ弾がヘビータンクの胴体に命中すると、装甲は破壊できなかったが衝撃で僅かに仰け反り、ボスを狙っていた照準がズレた状態でミサイルが放たれた。
ねえさん 『全員、ミサイルを撃ち落として!』
ねえさんの声に、ねえさん、ミケ、ドラ、チビちゃんの銃口から一斉に弾丸が放たれ、ミサイルは2発とも空中で爆発していた。
ドラ 『今のは上手く行ったけど、こんなの続けられねえぞ!』
すぴねこ 『よし、装填完了!』
皆がヘビータンクのミサイルを撃ち落としている間、俺はスラッグ弾と、もう片方のマガジンにテイザーXREPを1発と催涙弾を3発装填していた。
ヘビータンクを相手だと、テイザーXREPのスタン効果は僅か5秒。しかも、1発与えたら2発目以降は効果がなかった。
だけど、その間にヘビータンクの背中のジェネレータを破壊できれば、まだ勝算がある。
すぴねこ 『背後に回る』
皆にそう言うと、部屋側面の壁に催涙弾を3発撃ち込んでから、暗視ゴーグルで目を覆う。
そして、煙幕に隠れながら移動して、見つかる事なくヘビータンクの背後へと回り込んだ。
インプラントのリキャストまで後1分。リキャストが終わるまでボスは耐えられない。
背中のジェネレーターに照準を合わせると、相手がミサイルを撃つ構えになるまで待機する。
そのヘビータンクは、ボスの射撃を嫌がり動き回って弾丸を避けていた。
そして、ボスのマガジンの弾丸が切れると同時に、停止してミサイルランチャーを構えた。
すぴねこ 『喰らえ!』
止まったヘビータンクのジェネレーターに向かってスラッグ弾を放つ。
だけど、スラッグ弾が背中に当たる直前、ヘビータンクがホバーリングで横にスライドして弾丸を避けた。
すぴねこ 『マジっすかぁーー!』
ドラ 『このクソエイム!!』
ミケ 『信じた私が馬鹿だったわ』
ボス 『オワタ』
すぴねこ 『コイツ、ぜってー後ろに目が付いてるって!』
ねえさん 『さっきは当てたのにねぇ……』
そのヘビータンクだが、ミサイルを撃つ邪魔をした俺がよっぽどムカついたのか、振り返って俺にミサイルランチャーを構えた。
チビちゃん『……あ』
ヘビータンクが振り返るのと同時にチビちゃんの声が聞こえたと思ったら、ヘビータンクの背中にコンと言う音が鳴った。
そして、ヘビータンクの背中が爆発すると、ジェネレーターが吹っ飛び装甲が剥がれていた。
そのチビちゃんを見れば、M203グレネードのトリガーを引いたまま、口をポカーンと開けて呆けていた。
チビちゃん『なんかタイミングバッチリだったみたい。テヘへ』
そう言って笑いながら頭を掻くチビちゃん。天然ボケの攻撃に、おいしい所を全部持って行かれた。
結局、最後は締まらなかったけど、奇跡的に助かった俺達は、裸になったヘビータンクを全員で攻撃して無事に倒す事ができた。
ヘビータンクを倒すのと同時に、天井から階段が降りて来て、上のフロアへ行けるようになった。
ミケ 『一先ず、休憩ね』
ボスが自動回復している様子を見ながらミケが呟く。
ちなみに、ダメージを受けたのはボスだけではなく、俺とドラ、そして普段は前に出ないミケもダメージを受けていていた。
チビちゃん『はーい、回復するよー。トリャ』
チビちゃんは怪我人を集めると、床にエリアメディカルキッドを叩きつけて、全員のHPを回復させた。
ドラ 『だけどさ。まだ序盤の段階でビリケン様が出てくるんだぜ。この先、何が出てくるのやら……』
ねえさん 『まだミッション開始から30分しか経ってないわ。序盤も序盤ね』
すぴねこ 『ロック様が丸1日経ってもクリア出来てなかったんだから、そんな事は最初から分かっていただろ。この調子でいけば、クリアだけは何とか出来ると思うぞ』
ボス 『そうだな。Sランクでクリア出来なくても、諦めずに出来る限り進もう』
全回復したボスが会話を纏め、俺達は階段を上って先へ進む事にした。
階段を上ると、部屋には味方の脱出ポットの残骸が壁にめり込んでいた。
ポットの中には味方の兵士は居らず、代わりに補給物資が積まれていた。
ドラ 『こいつはありがてえ。さっきの戦闘で結構消耗してたんだ』
すぴねこ 『補給があるって事は、この先も敵がわんさか居るって事だけどな』
ミケ 『やっぱりそう考えるのが正解よね……』
会話をしながらも補給物資を手に入れる。
俺も使用したグレネードと、ありがたい事にスラッグ弾が補給出来たから、積めるだけ積め込んだ。
ボス 『補給は済ませたな。先に進むぞ』
ボスに頷くと、俺達は部屋の扉を開けて奥へと進んだ。




