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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第3章 遺志を継ぐもの……
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第21話 史上最強の女 その2

 怪しいメールの話をした後、チャーリーに銃の耐久度について確認したら、耐久度を設けていると答えが返ってきた。

 チャーリー曰く、耐久度というスキルを作って、その耐久度がプレイヤーの頑丈さではなく、実は銃の頑丈さでした。というプレイヤーからしてみれば「ふざけんな、コノヤロウ」と思わざるを得ないジョークらしい。

 そのためだけに、わざわざ銃に耐久度を入れたとか、馬鹿だと思う。

 しかも、プレイヤーから「ふざけんな、コノヤロウ」というクレームが本当に来て、仕事が増えたと愚痴をこぼしていた。正に自業自得。


『メールの件はこっちでも注意深くチェックしておくぜ。まあ、何もないと思うけどな』

「こっちでも、何かあったら連絡する」

『了解だ。エンディングで何か展開があったらヨロシクな。楽しみに待ってるぜ』


 チャーリーとの長話を終えて皆の所に戻ると、ボス以外は全員ログアウトしていた。

 そして、そのボスはしかめっ面でスマホをチェックしていた。


「ずいぶん時間が掛かったな」


 俺に気付いたボスが顔を上げて話し掛ける。


「まあ、色々とミステリーやらホラー要素が絡んできたんでね」

「なるほど。碌な事じゃないらしい」

「残念なことに正解だ」


 ボスは俺と会話を終わらせると再びスマホを見て、色々と調べている様子だった。


「それで、さっきから何を調べているんだ?」

「エリート兵が出て来て敵も強くなったからな。そろそろあの銃だとキツイだろう。で、買い換える銃を選んでいる」


 ボスが使っている銃は、ゲーム開始当初から使用しているミニミ軽機関銃で5.56x45mm NATO弾を発射するが、装甲が固くなった敵に対してだと、今のままでは威力が不十分らしい。


「って事は、とうとうAA-12か!」


 威力が不十分って事は、強力な銃を求めているという事だろう。

 だったら、俺のオススメはフルオートショットガンのAA-12だ。

 12ゲージのショットガンをフルオートで撃てるんだぞ。どんな敵だってイチコロだ!


「まずお前は、頭の中からショットガンを外せ」

「違うのか!?」

「弾がデカ過ぎて持てねえよ」


 そう、AA-12の威力は銃の中でも最大クラスだけど、ショットガンシェル自体が大きすぎて、持ち運びできる弾数が限られているのが問題だった。


「それじゃ何を買うんだよ」

「MK48 Mod0だ」

「なんだ、結局ミニミじゃん。だったら何を悩んでいるんだ?」


 ボスの買う予定のMK48 Mod0は、7.62x51mm NATO弾使用のミニミ軽機関銃で、弾丸が大きくなった分だけ威力があった。


「いや、他にも良い銃がないかチェックしていただけだ」

「だったらAA-12を……」

「だから、お前は頭の中からショットガンの選択肢を外せ。俺は安定重視なんだよ!」


 ボスは怒鳴るとため息を吐いて、再びスマホと睨めっこを始めた。







 ボスの銃はさておいて、俺も新しい銃を買う事にする。

 何故なら、チャーリー曰く、耐久度の減った銃は何時暴発するか分からないらしい。

 ミッション中に銃が暴発したら、ネタと考えれば面白いかもしれないが、賞金レースの最中だとシャレにならない。


 という事で、新しい銃を買い替えるわけだが、ポンプアクションのショットガンは、世間一般的にモスバーグかレミントンの2択しかなかった。

 だけど、それだと味気ないと言うかツマラナイ。俺はチキンな性格のボスと違ってチャレンジャーだ。


 そこで、俺が選んだ銃はKel-Tec社のKSGという、ブルパップ方式デュアルマガジン・セレクトフィード・ポンプアクション・ショットガンだった。ふむ……分類が長くて訳が分からん。

 ちなみに、KSGの名前の由来は、()っけー()ョット()ンではなく、K()el-Tec社の()ョット()ンが正しい。


 この銃の仕様を一から説明すると、まずブルパップ方式とは、引き金より後方に弾倉や機関部を配置する銃の事を言って、この形にすると銃身が短くなるというメリットがある反面、発破が顔の近くで発生して音がうるさい、発煙で目が痛い。ついでに、慣れないと使い辛いというデメリットがあった。


 次にデュアルマガジンだけど、この銃の弾倉数はチューブマガジンなのに7+7+1で合計15発も装填する事ができた。

 何故に足し算? と思うが、この銃はチューブマガジンが2つ実装されていて、それぞれのマガジンに7発装できる。だからデュアルマガジン。


 そして、セレクトフィードだけど、この銃はチューブマガジンが2つあるのに対して、銃口は1つしかない。

 だったらどうやってマガジンを切り替えるのかと言うと、グリップの後ろにある薬莢の射出口に切り替えスイッチがあって、リロードすると選択した方のチューブマガジンから弾を装填する。

 撃った後は、そのままリロードすれば同じマガジンから弾が装填されて、スイッチを切り替えてからリロードすると、もう片方のチューブマガジンから弾が装填する仕組みだった。

 ちなみに、焦ってスイッチを切り替えてから、リロードせずにトリガーを引いても弾は出ない。

 つまり、装弾数を15発と言わず7+7+1と言ったのは、片方のチューブマガジンを打ち終わった後、スイッチを切り替えないと次の弾が装填できないという意味も込められている。


 この銃のメリットは装填できる弾数が多い事。

 そして、片方に普段使うパックショットを入れて、もう片方にスラッグ弾もしくは特殊弾を装填することで、必要に応じて弾を切り替えて撃つことができる事だろう。


 デメリットとしては、装填する場所がグリップの後ろにあって、慣れないと弾を入れにくい事。

 それと、撃ち終えた薬莢がグリップの後ろから真下に落ちて腕に当たるという、微妙な嫌がらせを銃から受けるという事だろう。


 以上で説明は終わるけど、敢えて言おう。独自の仕様を持った銃は名銃と言わず、ただの珍銃だ。







 KSGをスマホで購入してから、受け取りカウンターで銃を受け取る。

 KSGのピカニティーレールに、ダットサイトとライトウェポンを取り付けて持った途端、体が重く感じた。

 どうやら、KSGとAK-19の両方を持つと重量オーバーで制限が掛かるらしい。買う前に調べろと自分にツッコみを入れる。


 KSGはチューブマガジンが2つある分だけに3.1Kgと重いが、デュアルマガジンのショットガンの中では一番軽い方だった。

 既存しているデュアルマガジンのポンプアクション・ショットガンなんて2つしか知らないけど。

 取り敢えず、AK-19をしまい、替わりにGlock 19Mを装備して身軽になった。バイバイAK-19、お帰りGlock 19M。


 試射しに射撃場へ移動していると、ロックを見つけた。

 随分久しぶりだけど、アメリカと日本だと時差があるから仕方がない。それに一週間ログインしてなかったし。

 彼は壁に寄り掛かり腕を組み瞑想している様子だったから、邪魔しては悪いと無視して通り過ぎようとする。


「チョット待て」


 通り過ぎた途端、肩を掴まれて振り返ると、不機嫌そうなロックが俺を見下ろしていた。


「……あ、久しぶり。酷いツラだけど、もしかして寝起き?」

「おかげ様でな。寝ていたら叩き起こされた」


 冗談を言ったら、本当に寝起きだったらしい。


「なんか俺のせいみたいに聞こえたけど、耳が悪くなったかな?」


 小指で耳をほじくるジェスチャーをすると、それが腹が立たしかったのか、ロックが俺の頭をガシッと掴んで顔を近づけた。


「一週間、何も進展がなかったと思えば、お前が戻ってきた途端、あっという間に追いつきやがって……おかげでオーナーに呼び出されて、これからミッションに行くハメになったじゃねえか」

「それは、どう考えても俺のせいじゃない」


 そう言って、頭を掴む手を払いのける。


「いや、絶対にお前のせいだ。一体、お前は何なんだ。今まで無名だったのが不思議で仕方がねえ」

「そりゃ、今まで過疎ゲーしか遊んでなかったし」

「だとしてもだ。クソ! 今すぐプレイ動画をアップしろ。お前のプレイを見てみたい」

「んなもん、撮ってねえよ。そうだなぁ……俺のプレイスタイルって婆さん譲りらしいから、それでも見れば」

「お前の祖母が何だって?」


 ロックが片方の眉を潜めて俺を睨む。


「俺の婆さん、昔は有名なネットゲーマーだったから。Assault gun girlで検索すれば今でも動画があるぞ」

「……は?」


 俺が婆さんのプレイヤー名を言った途端、何故かロックが口をポカンとして動きを止めた。

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