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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第3章 遺志を継ぐもの……
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第17話 ミッション5-2 その5

 ドラが手に入れたMAPを頼りに捕虜収容所を進み、敵と遭遇することなくセキュリティールームの前に到着する。

 アダムの話によると、通路を真っすぐ進めば捕虜が捕らわれている場所へ着くが、ドラが入手したMAPを解析した結果、その前にセキュリティールームへ行って、牢屋前の扉をロック解除をする必要があった。


ドラ   『準備は良いか?』


 ドアの左右に俺とドラが張り付き、他の皆が後ろで銃を構え待機する。


すぴねこ 『別に良いけど、時間がないから長いネタは無理だぞ』

ドラ   『んじゃ、今の俺達は、FBIだ』

すぴねこ 『それなら、まあ良いか』


 どうやら今回はモノマネをするらしい。


ドラ   『そんじゃ3、2、1……』

すぴねこ&ドラ 『FBI(FBIだ、) OPEN UP(開けろ)!!』


 大声で叫びドアを乱暴に開けて、部屋中を銃で乱射しながら突入。

 セキュリティールームの中に居た4体のエリート兵は、突然現れて暴れ出した俺とドラに仰天しているのか動きが止まっていた。

 そして、俺達の行動に戸惑いながらも、後の皆も部屋の中へと突入する。

 正気に戻った敵が銃を構えるが、もう遅い。撃たれる前に俺とドラで敵を撃ち殺し、一気に全滅させた。


すぴねこ 『オールクリア』

ミケ   『……何これ?』

ドラ   『CQBクロース・クォーターズ・バトルの基本はドッキリだぜ。フラッシュバンを使わなくても、如何に相手を驚かせて身動きを封じ込めるのがコツだ』


 ミケの問いかけに、ドラがドヤ顔で応じる。


すぴねこ 『つまり、AIの思考に人類が勝ったって事だ』

ねえさん 『呆れたの間違いじゃないのかしら?』

ボス   『エリート兵に同情を禁じ得ないな』

チビちゃん『でも何でFBIなの?』

ドラ   『たまにニュースで目にするだろ。FBIが間違って犯人の隣の家に突入したとか、誤報だったのに突入して家を破壊したとか。そんな感じ』

ミケ   『おかげで部屋が滅茶苦茶じゃない』


 ミケが呆れた様子で肩を竦める。


ドラ   『通り魔的リフォーム』

すぴねこ 『悲劇的ビフォーアフター』

ボス   『ドラ。ジョークは後回しにしろ。今のお前の仕事は、ゲートのロックを解除する事だ』

ドラ   『あいあい』


 ボスの命令にドラが肩を竦めて、セキュリティールームのコンソールを調べ始めた。


ドラ   『苦労してもバグス語を覚えていて正解だったな。アンロックの横にアラームのボタンがあるぜ』

すぴねこ 『押すなよ。押すなよ。絶対に押すなよ』

ドラ   『そのフリは、押せって事か?』

すぴねこ 『フリじゃねえ』


 ここまでがテンプレ。冗談のやり取りの後、ドラがアンロックのボタンを押して、牢屋前の扉を解除した。


ボス   『よし、進むぞ』


 ボスの命令に全員頷くと、セキュリティールームを出て奥へと進んだ。







 捕虜が居ると思われる場所への移動中、何度かエリート兵と遭遇した。

 エリート兵は真正面から戦うと強かったが、グレネードで吹っ飛ばしたり、ショットガンの催涙弾で炙り出して戦いに勝利する。


ミケ   『やっと着いたわね』


 牢屋前の監視室に入って、ミケが一息つく。

 ここまで来るのに、既に1時間20分が経過していた。

 もし、ミッションがここからの脱出まで含まれるのなら、できればここでロックウェル小隊長を見つけたい。


ドラ   『敵影はねえな。それじゃ、牢屋の鍵を開けるぜ』

ボス   『全員、一応警戒だけは怠るな』


 ドラが監視室のボタンを押すとガチャンと音がして、牢屋の鍵が全て解除された。

 そして流れるシークレットクリアのインフォメーション。内容はアダムと捕虜の救出だった。


 インフォメーションを確認していると、開いた扉の奥からパンツ一丁の兵士達が疲れた様子でぞろぞろと通路に現れてきた。

 そのホモが喜びそうな光景に、思わずねえさんを見る。

 ちなみに、俺と同じ考えだったのか、全員がねえさんを見ていた。


ねえさん 『……何で皆、私を見ているのかしら?』


 俺達の様子にねえさんが首を傾げる。


チビちゃん『ねえさんが喜びそうだなと思ったの』


 チビちゃん、発言がストレート過ぎやしませんか?


ねえさん 『私、オカマだけど、別にホモじゃないわよ』


 その発言に、全員が仰け反って驚いた。


ドラ   『嘘だろ……』

ねえさん 『あのね……性同一性障害って言っても、心が完全に逆転しているのはごく僅かよ。大抵の人は何割か元の性別が残っているの』

ボス   『それは知らなかった』

ねえさん 『まあ、普通の人なら知らなくて当然ね。それで、私の場合は女7男3の割合で、自分自身は女で居たいけど、好きな相手は女性でも男性でも構わないのよ』

ミケ   『つまり……性同一障害で同性愛者って事?』

ねえさん 『レズじゃなくてバイセクシャルかしら。好きになったら男でも構わないと思っているけど、今まで男を好きになった事はないわね』

すぴねこ 『捻くれてるなぁ……』

ねえさん 『人格が捻くれている貴方ほどじゃないわよ』


 俺達が会話をしている間、アダムが救われた同胞に喜んでいた。


「仲間を助けてくれて、ありがとう。お前達に助けてもらった事は一生忘れない」


 アダムが目を涙で滲ませて礼を言う一方、アンダーソンはロックウェル小隊長を探すが、彼の姿は見えず落ち込んでいた。


「アンタ達、もしかしてロックウェル隊長を探しているのか?」


 NPCの動向を見守っていると、捕まっていた兵士の1人がアンダーソンに話し掛けて来た。


「隊長の行方を知っているのか!?」

「ああ、彼なら連れ去られようとした俺の替わりに、自分から志願して連れ去られた。研究ドローンに連れていたから、恐らく実験室に運びこまれたと思う。頼む。俺の替わりに、彼を助けてくれ!!」


 NPCがアンダーソンの腕に縋りつき悲願する。


「元々俺達は隊長の救出に来たんだ。必ず助け出す」

「実験室は少し戻って道を曲がった先にある。急いでくれ」


 彼の話を聞いてMAPを確認すると、確かに実験室があった。

 アンダーソンの会話が終わると、今度はアダムが俺達に話し掛ける。


「俺は捕虜だった全員を連れて武器庫に向かい、装備を整えてから脱出経路を確保する。お前達はロックウェルって人の救出に向かってくれ」

ボス   『分かった』


 俺達は途中でアダムと別れると、アンダーソンを連れて、ロックウェル小隊長が連れ去られた実験室へ向かった。







 実験室に行く途中、やや広めの通路に入る。

 そこは、荷物を搬送するためなのか、車や荷物が至る所に置かれていた。

 その通路を半ばまで進むと、俺達の反対側から、バグスが現れた。


すぴねこ 『コンタクト!』


 敵の数と兵科は、エリート兵が5体、ドロント兵が4体、ライトタンクが3体に、バーサーカーが4体。

 敵が攻撃する前に、各々が遮蔽物に身を隠して銃撃を開始。


ボス   『俺が応戦する。全員、俺のサポートに回れ』

『『『『『了解』』』』』


 特攻してくるバーサーカーとクレイジーモードのドロント兵を、ボスが軽機関銃で応戦。

 身を乗り出して軽機関銃を放つボスに敵の攻撃が集中するが、怯む事なく次々と敵を倒し続ける。

 ボスの攻撃でダメージを負った敵を他の全員でトドメを刺し、まずは雑魚を殲滅。


ボス   『残りHP20%……回復に入る』

チビちゃん『お疲れさま』


 ボスが遮蔽物に隠れて、自動回復を開始した。


すぴねこ 『ねえさん。インプラントを使ってくれ』


 ボスの替わりに俺がリーダーになって、ねえさんに指示を出す。


ねえさん 『そんな事したら、エリート兵もインプラントを使ってくるわよ!』

すぴねこ 『それが狙いだよ』


 ここまでの戦闘で分かった事は、エリート兵の戦闘スキルは高いけど、性格がバカ正直だった。

 つまり、アイツ等は、こちらがフェイントを仕掛ければ、素直に騙される。


すぴねこ 『……数多くの戦争を経験して、性格の歪んだ人類をAI如きが舐めるなって事だ』


 そう説明すると、全員から称賛されずに白い目で見られた。


ドラ   『お前は詐欺師か何かか? 警察に行け』

ミケ   『性格が歪みすぎてるだけでしょ』

すぴねこ 『失敬だな、君たちは』

ねえさん 『つまり、私だけインプラントを使って、すぴねことミケはインプラントを温存するって事ね。本当によくもまあ、こんな作戦を思いつくわね』


 俺の作戦を理解したねえさんが肩を竦めて、インプラントを発動させる。

 敵のエリート兵はねえさんのインプラント発動に触発されて、同じ様にインプラントを発動。

 インプラントを発動させたエリート兵を中心に、敵側から激しい銃撃が襲ってきた。


すぴねこ 『25秒間、耐えろ!』


 全員が完全に遮蔽物に身を隠し、敵の猛攻を防ぐ。

 遮蔽物に身を隠している間に、ショットガンの弾丸を抜いてスラッグ弾に変更した。


 25秒経過。

 敵の激しい攻撃が収まると同時に遮蔽物から身を乗り出して、ライトタンクに向けてトリガーを引くと、放たれた弾丸がライトタンクの頭を撃ち抜いた。

 それで敵の数が半分以下になり、一番敵を多く倒したボスに向かって、残り2体のライトタンクが自爆特攻を開始。

 一方、エリート兵は、その場で攻撃を続けていた。どうやら、この敵は自爆行動を起こさないらしい。


 近寄るライトタンクにスラッグ弾を連続で放つ。

 俺がスラッグ弾で開けた装甲に、ミケとねえさんの弾丸が命中。この攻撃でライトタンクを全て倒す事に成功する。


すぴねこ 『ミケ!』

ミケ   『いつでも!』


 ショットガンに弾を装填しながら叫べば、ミケは銃をエリート兵に向けて構えていた。


すぴねこ 『行くぞ!』


 俺とミケのインプラントが発動して、スローの世界に入る。

 遮蔽物を飛び超えて敵に向かって走り出せば、俺が予想していた通りにエリート兵はリキャスト中で、インプラントを発動できずにいた。


 エリート兵から放たれた弾丸を回避。

 俺が囮になって、ミケがエリート兵に弾丸を放つ。

 インプラントが発動しているミケの攻撃は精密を極め、敵の頭を次々と撃ち抜いた。


 残り2体。

 サイドステップで弾丸を躱し、そのまま前転して一番近くの敵が隠れる遮蔽物の脇へと移動する。

 相手が振り向く前に中腰でショットガンのトリガーを引き、弾丸が敵の胴体に命中。

 敵が後ろに倒れて背後が見えると、最後のエリート兵が俺に向かって弾丸を放っている最中だった。


 射線を見極め、ショットガンを横にして構える。

 弾がショットガンに当たり衝撃で後ろに倒れると、俺の真上を幾つもの弾丸が通り過ぎた。

 その隙にミケがトリガーを引く。銃口から放たれた弾丸は側頭部を撃ち抜き、最後の敵を倒した。







ミケ   『すぴねこ、無事!?』

すぴねこ 『何、悲痛な声を出してんだよ、俺は無事だぜ。しかもノーダメージだ。褒め称えろ』

ミケ   『こんなところでやり直しなんて嫌だし、無事なら良いわ』


 起き上がって応えると、ミケがプイッと顔を背けた。


すぴねこ 『冷てえ女』


 ミケとのやりとりの後、ドラがショットガンを指さして話し掛けて来た。


ドラ   『それよりも、本体は無事なのか?』

すぴねこ 『ショットガンを本体と言うな。俺はどこぞのアニメのメガネ(新八)か何かか?』


 言い返して、ショットガンを確認すると、銃弾を弾いた銃砲がへこんでいた。


すぴねこ 『ありゃ? このゲーム、銃に耐久ダメージなんてあったのか?』

ドラ   『試しに撃ってみろよ』

すぴねこ 『……ふむ。取り敢えず死ね』


 ドラに銃口を向けてトリガーを引く。


ドラ   『うおっ! って、あれ? 撃たれてないのか?』

すぴねこ 『リロードしてないから、弾は出ねえよ』

ドラ   『ざけんな! マジで撃たれたと思ったじゃねえか!』


 冗談に腹を立てたドラが俺の足を蹴飛ばすが、別に痛くない。

 それでショットガンだけど、今度は誰も居ない場所に向かって1発撃った様子だと、特に問題はなさそうだった。


ボス   『銃に問題がなければ、先に進むぞ』

すぴねこ 『了解』


 そして、俺達は先へと進んで、実験室の中へと突入した。


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