表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第3章 遺志を継ぐもの……
77/108

第16話 ミッション5-2 その4

すぴねこ 『オールクリア……一体、なんだったんだ?』

ドラ   『こっちもクリア。結構ダメージを喰らったな』


 どうやら向こうも無事に生き残ったらしい。


ミケ   『すぴねこ、平気?』

すぴねこ 『2発撃たれた。残りHP60%ってとこだな』

ねえさん 『なんか叫んでいたけど、一体、何があったの?』


 ねえさんからの質問に、俺達がインプラントを使用したら、相手が同じインプラントを発動させて対応してきたことを説明する。


すぴねこ 『あれは、動体視力だけじゃなくて、足と腕の筋力増加インプラントまで入れているな』

ねえさん 『ナーフの替わりに、敵を強化したのね……』


 どうやら、この敵の存在が、ケビンがナーフをしないと言っていた理由らしい。

 だけど、せっかく育てたキャラがナーフで弱体化するのは一番嫌だけど、敵を強くし過ぎてゲームバランスをぶっ壊すのも、プレイヤー離れに繋がると思う。


ドラ   『インプラントもサイボーグの次にチートだからな』

ミケ   『私達がインプラントを発動させる前までは普通に戦っていたわ』

ねえさん 『つまり、あの敵の前でインプラントを使うと危険なのね。先に知ってて良かった』


 どうやら、ねえさんは先の戦闘でインプラントを使わなかったらしい。何となく人柱になった気分。

 俺達が対策を話していると、チビちゃんが話し掛けて来た。


チビちゃん『ねえ、すぴねこ君。回復に戻った方が良い?』

すぴねこ 『いや、時間がもったいない。もう1戦ぐらいは行けるさ』


 HPが減って視野が狭くなっているが、俺の回復のためだけにチビちゃんだけど移動させるのは危険だし、時間がもったいないから断った。


ボス   『今、アンダーソンが喋っているが、コイツ等はエリート兵と言って、捕まえた捕虜でも強いやつだけを厳選して改造したバグス兵らしい』


 ボスの話を聞いて、俺とミケが顔を見合わせ、同時に顔を顰めた。


ミケ   『エリート兵ね……行動パターンが読めないから、やり辛いわ』

ドラ   『倒した時はすぴねこをぶっ殺した気分になって、スッキリしたけどな』

すぴねこ 『ドラ。テメェはこれが終わったら後でPvPサーバーに来い。俺様自らこの手でぶっ殺してやるよ』

ドラ   『おっと、煽り過ぎたか? だけど残念だな。今日はもう1ミッションやる予定だろ。体力を温存したいから遠慮しとくぜ』


 ドラの笑い声を聞き、舌打ちをする。


ボス   『……すぴねこ。お前、ビショップに行動パターンを解析されたな』


 前からケビンはAIが単純なパターンしか動けない事に不満があったのは聞いていた。

 どうやら彼は、ビショップに頼んで新しいAIを組んだらしい。


すぴねこ 『だろうな。本当は今すぐログアウトして問いただしたいところだけど、さすがに無理か……』


 賞金レースの真っ最中だし、デペロッパーの皆もビショップが死にケビンが入院中だから、今はそれどころではないだろう。


ボス   『すぴねこが無事なら、このまま進もう。まずは、合流を目指すぞ』

すぴねこ 『了解っと、だけどその前に……』


 ボスとの会話を終わらせると、俺は敵兵士に気絶させられたNPC兵士に近づいた。







「ヘイ、起きろ!」


 インカムを切ってから気絶中の兵士の前でしゃがみ、頬をペチペチ叩く。

 食事もまともに取れなかったのか、兵士は少しやつれて無精ひげを生やしていた。そして、筋肉ムキムキのパンツ一丁の全裸姿。

 恋人、家族には見せられない格好だが、バグス兵に改造されずに済んだだけマシだったと思う。


「う、うーん。ここは?」

「ハレルヤ。ようこそ天国へ」

「…………」


 冗談を言うと兵士が黙った。


「よしなさい」


 ツッコミを入れるミケだけど、彼女はパンツ一丁の兵士を見て、普段は相手を射殺す目が泳いでいた。

 そして、この場にオカマのねえさんが居なかった事を神に感謝する。


「俺は……助かったのか……はっ、そうだ! まだ、奥に捕虜が居る助けてくれ!!」


 捕虜だった兵士は意識を取り戻すと、必死の形相で俺の襟首を掴んできた。


「オーケー。NPCにしては名演技だぜ。今年のゴールデンラズベリー賞は間違いなしだ。だからその手を離せ」


 全裸で筋肉ムキムキの兵士に捕まれても嬉しくない。

 掴まれた手を振りほどくと、兵士は少し落ち着いたのか話し始めた。


「俺はゼブラ隊のアダムだ。1週間前の戦闘で他の奴らは死んだけど、俺だけ生き残ってここへ収容された」

「お前は運が良い。あともう少しでバグスに改造されて、俺に殺されてたぞ」

「…………」


 冗談を言っても無反応。どうやら今のワードはヒットしなかったらしい。


「それで他に捕虜は居るのか?」

「ああ。俺が来た場所の奥に行けば、大勢の捕虜が捕まっている」


 今度のワードはポテンヒット。アダムが捕虜の居場所を教えた。


「そこにスコーピオン小隊のロックウェルは居たか?」

「俺はそのロックウェルってヤツを、見た事も話した事もねえから知らねえ。だけど、つい先日も兵士が大勢送られてきた。もしかしたらその中に居るかも」

「そうか……分かった」


 アダムとの会話を終えて立ち上がる。


「なあ、お前達は捕虜の救出に来たんだろ。俺も手伝わせてくれ!」


 アダムが縋りついて懇願してきたけど、どんなに鍛えた兵士でもパンツ一丁で戦うのは、ただの自殺願望者だろう。


「武器もないのにどうやって戦うつもりだ?」

「武器なら牢屋に入れられる前に取られたのが、この先の部屋に眠っている」


 アダムの話を聞いて、ミケと顔を合わせる。


「どうやら、弾の補給が出来そうね」

「そうみたいだな。それと、何となくコイツの護衛がシークレットに絡んできそうだ」


 ミケが頷くのを確認して、再びアダムに話し掛ける。


「よし分かった。まずその武器庫に案内してくれ。その間は俺達がお前を守ってやるよ」

「分かった。こっちだ」


 そして、俺とミケはアダムの誘導で、武器庫へと向かう事にした。







 パンツ一丁のアダムの誘導で移動しがてら、ボスへ報告する。

 ボスの方は施設の管理室に入って、捕虜収容所のMAPと鍵を手に入れていた。

 ドラからデータ転送されたMAPをスマホで確認すると、どうやら俺達の進む先が正解だったらしい。


 ボス達は急いで戻るが、現時点でミッション開始から既に50分経過している。

 目標時間まで残り1時間10分。少しでも時間を稼ぐ為に、俺とミケは先行する事にした。


「ここが、倉庫室だ」


 アダムが部屋の前で止まると、振り向いて話し掛けてきた。

 ちなみに、ここに来るまでの間、一度だけ3体のエリート兵と遭遇したが、発見される前にありったけのグレネードを放り投げたら、落とした場所が良かったのかこちらが銃を撃つ前に全滅した。いかに強くても、油断していればただの雑魚である。


 倉庫室の扉に手を掛けると、鍵が掛かっていた。

 もしかして、ボスの方で見つけた鍵はここで使用するのか?

 そう考えながら、ショットガンに開錠用のブリーチング弾を装填して鍵を撃ち抜き、扉を無理やりこじ開ける。


ミケ   『鍵の意味がないわね』

すぴねこ 『仕様なんだから、仕方がない』


 文句は俺じゃなくて、設計したデペロッパーの連中に言え。


ドラ   『そう言えば。ショットガンで鍵を開けられるのって、まだ誰も知らないらしいぜ』


 俺とミケの話を聞いたドラが、こちらの動向に気付き会話に混ざってきた。


すぴねこ 『そうなのか? ショップアプリの商品説明にもそう書いて……いや、そういえば、鍵については何も書いてなかったな』


 確かブリーチング弾の商品説明には、「細かい粒を発射して物を破壊する」とは書いてあったが、鍵を破壊するとは一言も書いてなかった。

 どうせ性格の捻くれているチャーリーが、敢えて書かなかったのだろう。


ドラ   『もしかして、ロッドとミカエルも知らないのか?』

すぴねこ 『俺はアイツ等に教えてねえから、お前等が誰も言ってなきゃ知らねえよ』


 アイツ等が俺を馬鹿にする時は、必ずと言っていいほど俺のショットガンを馬鹿にする。

 そんな連中にわざわざ教える義理はない。


すぴねこ 『まあ、現実のブリーチング弾を知ってりゃ、気付くヤツは居るだろ』







 ドラとの会話を終わらせて、武器庫の中に入る。

 武器庫の中は、多くの兵士から奪った銃や弾丸がずらりと並んでいた。


すぴねこ 『おお……ガンショップが開けそうだな』

ミケ   『ガンショップなんて入った事あるの?』

すぴねこ 『普通にあるけど?』


 モンタナに行った時は何時も夏だからハンティングは禁猟時期で出来なかったけど、銃を撃つだけなら空き缶を相手にできたし、ケビンの家には俺専用の銃を預かってもらっている。


ミケ   『そうなんだ……』


 そう言うと、ミケが驚いていた。

 これは毎年のようにアメリカのモンタナ州に行っている俺と、海外旅行と言ったらハワイぐらいしか行った事のないミケとの常識の違いなのだろう。


すぴねこ 『ボス、あとどれぐらいで着く?』

ボス   『5分も掛からねえ』

すぴねこ 『分かった。それなら待ってるよ』


 俺とミケが弾丸とグレネードを補充している間、アダムは軍服を着てM4カービンを入手していた。

 それで視線のやり場に困っていたミケの目が元に戻って、再び邪気眼が発動。視線が痛い。

 アダムは装備を整えると、俺に向かって話し掛けてきた。


「俺はメディック兵なんだ。もし怪我をしていたら治療するぞ」

「そいつはありがてえ」


 俺が腕を差し出すと、アダムはメディカルキッドを優しく刺して、俺のHPを回復してくれた。

 良い腕してやがる。今度、うちのチビちゃんにキッドの使い方を指導してくれ。


 それから3分もしない内にボス達も武器庫へ入り、無事に合流する。

 そして、ボス達も補給を済ますと、全員でロックウェル小隊長を探しに奥へと進んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ