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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第3章 遺志を継ぐもの……
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第14話 ミッション5-2 その2

 処理施設を調べた結果、死体を処理する壁は床に物があると反応するらしく、一歩足を踏み入れると壁が動き出した。

 壁の高さは2m。動く速度は、ママチャリを全力で漕ぐより早く、のんびり走らす原チャより遅い、時速40キロと言ったところ。

 そして、壁は動き出すと止まらないらしく、近くの回転ドリルへ運ぶ仕様だった。


すぴねこ 『動く壁は全部で5か所。ドリルは10か所。ゴールまではざっと50m。余裕だな』

ミケ   『そう言えるのは、すぴねこだけよ』


 呆れているミケを鼻で笑う。


すぴねこ 『マラドーナも驚きの5人抜きを見せてやるよ。んじゃ行くぜ』


 まず最初に俺が処理施設に入ると、壁が動き出した。

 潰される前に避けようとするが、床の血糊で足が滑って転びそうになる。


すぴねこ 『おっとっと……マジか! この床、滑るぜ』


 体勢を整えて、襲い掛かってきた壁を回避する。


ドラ   『なるほど。壁が来ても逃げれば楽勝と思っていたけど、滑るのか……』

すぴねこ 『そうらしい。ボスのハゲ頭並みに床が滑る』

ボス   『剥げてねえよ!』

チビちゃん『ボスって現実だとロン毛だよ』


 衝撃の事実に転げそうになる。

 そして、目の前には新たな壁。その壁をスケートの様に足を滑らせて回避した。


ドラ   『……なぜ、キャラをガチムチ黒人ハゲにした?』

ボス   『好きな漫画のキャラだから』

すぴねこ 『腹筋が……今は勘弁してくれ』


 味方が笑わせて俺を殺そうとしてくる。


ミケ   『最初に冗談を言ったすぴねこが悪いわ』


 腹筋を堪えながらもなんとか最後の壁を躱して、処理施設を抜け出し反対側に到着した。


すぴねこ 『ゴール。まさか味方が妨害してくるとは思わなかった……』

ボス   『俺は何もしてねえ』


 確かにボスは何もしていない。だけど、存在が俺を笑わせる。

 それから、ボス以外の皆も血糊で転びそうになりながらなんとか障害を乗り越えて、通路の前まで到着した。







チビちゃん『ボス、頑張って~』

ボス   『安心しろ。もうパターンは読んだ』


 チビちゃんの応援に最後に残ったボスが応え、一歩足を踏み入れる。

 ボスは本当にパターンを読んだのか、安定した動きで壁を避けてこちらに近づいてきた。

 だけど、最後の壁を避けようとしたタイミングで、避けようとした先の天井から死体が落下してきた。

 そして、死体が床に落ちると、ボスが予想していたよりも早く壁が動き出した。


ボス   『……マジ?』


 パターンを崩され予測不能になったボスが慌てる。そんなボスに壁が襲い掛かってきた。

 慌てふためくボスが壁から逃げようとするが……。


ミケ   『あ、コケた』

ドラ   『終わったな』


 すっ転んだボスが壁に捕まり、回転ドリルの方へ押し出される。


ボス   『滑って起き上がれねえし、逃げられん!!』

チビちゃん『ボス!!』


 チビちゃんが叫んだ後、手を合わせて合掌。まだ死んでないから、少しだけ気が早いと思う。


ねえさん 『すぴねこ、助けてあげて』

すぴねこ 『仕方がねえな』


 ため息を吐いてインプラントを発動。ボスの救出に処理施設に飛び込んだ。

 おろ? インプラントを発動させると、床が滑らなくなった。

 ボスがドリルに巻き込まれる前に、その背中に向かって飛び蹴りを喰らわす。


すぴねこ 『おらっ!』

ボス   『グハッ!』


 蹴飛ばしてボスを壁から追い出すと、ボスの居た場所に俺が立ち、目の前にはドリルに向かう壁。

 その壁をひょいと乗り越えると、倒れたままのボスの襟首をつかんで引き摺り、処理施設を脱出した。


すぴねこ 『貸し1つな』


 インプラントを解除してから、ボスの手を引っ張り起き上がらせる。


ボス   『すまねえ……助かった』

ドラ   『そう言えばアンダーソンの野郎は?』


 1人残ったアンダーソンを見れば、彼はひょいひょいとトラップを回避して、何事もないかのように俺達の所へ到着した。


すぴねこ 『ボスと違って優秀だな』

ボス   『お前も一度サイボーグ化してみろ。重さは感じないけど、動きが鈍くなるぞ』

すぴねこ 『やだよ。どんくせえ』


 サイボーグは確かに頑丈で強いが、俺のプレイスタイルとは合わない。

 そう言い返すと、ボスが肩を竦めていた。







 通路を進むと直ぐに下へ降りる階段があった。

 階段を降りた先は処理施設の真下なのか、ドリルで砕かれた死体があちこちに転がり、天井と壁の至る所で血が流れて、床は踝まで血が溜まっていた。


ミケ   『……最悪』

ねえさん 『血の匂いがしないだけ、まだマシよ』


 フロアの様子に、ミケが吐きそうになって口元を押さえる。

 だけど、ねえさんの言う通り、現在のVRだと臭いや味覚はまだ実装されておらず、血の匂いはしていなかった。


ドラ   『血じゃなくてペンキだと思えば良いんだ』

チビちゃん『スプラトゥー……』

ミケ   『チビちゃんそれ以上は言っちゃダメよ』

チビちゃん『あうあう』


 ミケに言われて、チビちゃんが慌てて口を塞ぐ。

 どんなに倒し方を知っていたとしても、大企業に喧嘩を売ってはいけない。


すぴねこ 『そう言えば、誰だったっけ? 吸血鬼のモデルになった血が好きな女』

ボス   『エリザベート・バートリだな』


 俺の質問に、マニアックな歴史に詳しいボスが応じた。


すぴねこ 『ああ、そうそう。そんな名前だったな』

ドラ   『それで、何が言いたいんだ?』

すぴねこ 『いや、別に。血を見たら何となく頭に浮かんだだけだけど』

ドラ   『ボケろよ!』

すぴねこ 『お前じゃねえし、いちいちボケねえよ!』

ねえさん 『待って、何か音がするわ』


 俺がドラに言い返していると、ねえさんが銃を構えた。

 全員が銃を構えて警戒していると、全身血まみれの敵が現れた。


チビちゃん『ゾンビ?』


 チビちゃんがわくわくした様子で銃を向ける。


すぴねこ 『それに近いかもな』


 この血まみれの敵は、致命傷にも関わらずバグスの改造で強化されて死ねず、前葉頭に埋められたチップの命令で、ただ生物を襲うだけの存在なのだろう。


「あの顔は……確かコブラ隊でバグスに捕まったヤツだ。クソッ!」


 アンダーソンがゾンビの顔を見て知人だと気付き、悔しそうな表情を浮かべて叫んだ。


ボス   『NPCとは言え、これ以上生きるのは辛いだろう』


 ボスはそう言うと、Glock 19Mを抜いてゾンビの頭を撃ち抜いた。

 だけど、その銃声が合図だったのか、至る所にある死体の山から、ゾンビが次々と俺達の前に姿を現した。

 どうやら、倒した敵は罠だったらしい。


すぴねこ 『今の敵は、スルーするのが正解だったらしいな』

ボス   『だが後悔はしてないぞ』


 俺達が話している間もゾンビが姿を現して、その数は100体を超えた。


ボス   『全員、攻撃開始』


 ボスの命令に、全員が銃を撃ち始める。

 俺もショットガンを背中にしまって、AK-19でゾンビの頭に弾丸を撃ち込んだ。







 ゾンビの動きが遅いが、如何せん数が多かった。

 そして、無視しようにも、近づくと張り付いて口から酸の様なゲロを出してくるから、無視も出来ない。

 そんな最中、チビちゃんだけはグレネードをバンバン飛ばして喜んでいた。


ドラ   『ボス、キリがねえよ!』


 次々と現れるゾンビにドラが悲鳴を上げる。


ミケ   『序盤でこんなに弾を消耗するとは思わなかったわ』


 ミケはライフルの弾がもったいないからと、HK417A2-20をしまって、Glock 19Mを使ってゾンビを撃ち殺していた。


ボス   『戻るにしても、塞がれて近づく事も出来ないな……』


 ボスの言う通り、俺達が降りた場所は、ゾンビに行く手を塞がれて戻る事が出来なかった。


チビちゃん『ねえ、見て見て、あそこ! 通路が見えるよ』


 チビちゃんの示した場所を見れば、死体の山がグレネードで崩れて、奥に別の通路が見えていた。


ねえさん 『ボス。このままだと、倒す前にこっちの弾が尽きるわ!』

ボス   『全員、あの通路へ。すぴねこ、しんがりを頼む』

すぴねこ 『了解!』


 ボスの命令で、全員が見つけた通路へ向かう。

 しんがりを任された俺は、AK-19の弾丸を全て撃ち尽くしてから、最後に通路へ入った。


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