第10話 ミッション5-1 その6
部屋は機械に囲まれていて、部屋の奥中央に光る装置が置かれていた。
恐らくあれがシールド発生装置だろう。違っていたら、腹いせに破壊する。
俺達が内部に入ると同時に、部屋の奥でグレネードが爆発。
敵はフラッシュバンで目が眩んだところに、ドラが投げたグレネードの爆発を喰らい、装甲が柔らかい敵が軒並み倒れていた。
すぴねこ 『ガーディアン3、わぉ。ライトタンク5、ウォーリアー5、タレット6』
死骸を見れば、クレイジーモード以外の装甲の柔らかいバーサーカーとドロント兵は、全てグレネードで死んでいた。
俺が報告した敵以外にも、姿は見えないがゴーストメイデンも居るだろう。
ボス 『ゴーストメイデンに注意しろ』
どうやらボスも俺と同じ考えだったらしい。全員に注意を促していた。
そして、俺達が遮蔽物に身を隠して配置に付くと同時に、敵も体制を整え銃撃戦が始まった。
クレイジーモードのウォーリアー5体、ライトタンク2体。それと、ガーディアンの1体が俺達に向かって突進してくる。
そして、背後に控えるノーマルのガーディアン2体は、最前線の俺にグレネードを放出してきた。
グレネードの爆風を避けるため、ミケが隠れている遮蔽物に慌てて退避する。
ミケ 『うげ、こっちに来た』
すぴねこ 『嫌な顔すんな。俺とお前の仲だろ』
ミケ 『チョッ! 馬鹿な事言わないで!!』
露骨に嫌な顔をしたミケに冗談を言えば、何故か慌てた様子で否定してきた。
俺の居た場所で敵のグレネードが爆発して激音が部屋に鳴り響いた。
ドラ 『もっかいフラッシュ!』
ドラがフラッシュバンを投げると同時に、全員が遮蔽物に身を伏せる。
フラッシュバンが裂けると、光に目がくらんでゴーストメイデンが姿を現した。
ねえさん 『ドラ、ナイス!』
姿を見せた3体のゴーストメイデンの機械ユニットを、ねえさんとミケが撃ち抜いて倒す。
敵が怯んでいる間に、俺はショットガンを連続でリロードして全部の弾を抜くと、胸から特殊弾を全部出して最初にテイザーXREPを3発装填した。
すぴねこ 『チビちゃん。ガーディアン行くで』
チビちゃん『ビリビリ行っちゃて~~』
すぴねこ 『そこで痺れろ、諦めろ』
ガーディアン3体に向けて、ショットガンのトリガーを引く。
全ての弾が命中して、ガーディアンが一時的に行動不能になった。
ガーディアンが行動不能になったのを見て、チビちゃんのHK416に付けたM203グレネードからグレネード弾が放たれる。
チビちゃんの攻撃で、ジェネレータを守るユニットが次々と破壊されていった。
さて、どうする。敵を倒す優先順を間違えると、こちらの被害が大きくなる。
ウォーリアーはミケとねえさんが何とかするだろう。
ガーディアンは電流で後30秒ぐらいは釘付けとなって、チビちゃんが相手をしている。
ボスは自爆特攻してくる敵を相手に、威嚇射撃で動きを封じている。
ドラは……スニークして何かするらしい。隠れながら奥のガーディアンへ向かっていた。
ここは、ボスとチビちゃんの援護だな。
一瞬で状況を判断して、ショットガンにスラッグ弾を装填する。
すぴねこ 『チビちゃん。手前のガーディアン残りは何所だ?』
チビちゃんにグレネードで破壊しきれなかった、ガーディアンのユニットの部位を尋ねる。
チビちゃん『左腕』
すぴねこ 『了解』
ガーディアンの左腕の関節部分にショットガンの照準を絞る。
そして、トリガーを引くと、ガーディアンの左腕を貫いてユニットを破壊した。
すぴねこ 『ユニット破壊』
ドラ 『後は任せろ』
ドラの声がすると同時に、手前のガーディアンの装甲が剥がれる。
ドラの方を見れば、サプレッサーを付けたGlock 19Mの銃口から煙が出ていた。
どうやらドラは、背後が弱点の敵を狙っていたらしい。
それならばと、後は誰かに任せて、スラッグ弾でライトタンクの頭を撃ち抜く事にした。
ミケ 『手前のガーディアン、キル』
ねえさん 『ウォーリアー終了』
すぴねこ 『ライトタンク後1』
「キャーーーーーーーーーー!!」
ドラ 『うぎゃ!!』
チビちゃん『ドラ君、本日4回目のスヤァ』
次々と状況が変わる中、ドラがずっと隠れていたゴーストメイデンの攻撃を受けて気絶する。
すぴねこ 『アイツ、モテるなぁ。何一つ羨ましくないけど』
呟きながら、最後のライトタンクの頭を撃ち抜く。これでスラッグ弾が尽きた。
ミケ 『女難の相があるんじゃない。そんな顔してないけど』
そう言いながら、ミケが姿を現したゴーストメイデンを倒した。
ちなみに、ドラのキャラは無駄にイケメンツラで、ブサイクではない。現実は見た事がないから知らん。
ドラ 『…………』
ミケのHK417A2-20の弾薬が尽きて、俺が貸したAK-19を撃ち始める。
ミケ 『何で5mm弾の銃なのに、7mm弾より反動が大きいのよ……』
すぴねこ 『それがロングストロークだ。AK-47の時は、7mm弾だったからもっと反動が凄かったんだぞ』
ミケ 『それだから、当たらない銃って言われるのよ!』
横で愚痴るミケを放っといて、敵に気付かれたドラの救出に向かおう。
すぴねこ 『ボス。援護頼むぜ』
ボス 『気を付けろ!』
すぴねこ 『ドラ、我慢しろよ』
ボスに声を掛けてから、ガス弾を装填してドラの居る場所にショットガンを撃てば、ドラは煙に包まれ姿が見えなくなった。
そして、遮蔽物から身を乗り出すと、走りながらゴーグルを装着して目を保護する。
電流を解除したガーディアンが、ドラから近づく俺に狙いを変えてグレネードを放ってくるが、爆破する前に移動して被害を最小に抑える。
さらに、生き残っていたドロント兵の横をすり抜けると、そのドロント兵が自爆。
爆風で吹き飛ばされてダメージを負いながらも、なんとかドラの元までたどり着いた。
すぴねこ 『ドラ何所だ? あ、踏んでたわ』
煙の中からドラを見つけると、ドラのゴーグルを下げて目を保護する。そして、近くの遮蔽物まで引き摺った。
ドラ 『げほっ、げほっ! マジで勘弁してくれ……』
すぴねこ 『撃つときは、自分の周りも注意しろ』
気絶から回復したドラが咳き込みながら文句を言ってきたから、ヘルメットを小突く。
残りガーディアン2体だが、もうテイザーXREPは既に使用したから通じない。スラッグ弾は弾数制限で尽きてる。
チビちゃんのグレネードも切れたのか、HK416をにゃーにゃー言いながら撃っていた。
手持ちの弾丸は、通常のバックショットが2発とガス弾。
まじかぁ。マトモな弾が2発しかないやん。
すぴねこ 『ドラ。囮になるから、後ろから頼むぜ』
そう言いながら、ショットガンにパックショットを全て装填する。
ドラ 『2体同時に行けるのか?』
すぴねこ 『インプラントは残してるし、このぐらいなら前作で散々やっただろ』
ドラ 『分かった。気を付けろ』
すぴねこ 『行ってくる』
ドラにそう言うと、ガーディアンに向かって走り出した。
ボス達にグレネードを撃っていたガーディアンが俺に気付き、盾と剣を取り出すと接近に切り替えた。
すぴねこ 『掛かってきな。今の俺はロイ・ジョーンズJrより速いぜ』
インプラントを起動。世界がスローになった。
ガーディアンが正面左右から迫る。
やられる前に右の敵の顔面にショットガンをぶっ放せば、相手は顔を殴られた様に仰け反った。
その間に左の敵が剣を振り下ろしてくるが、体を側面にして剣を躱す。
そのまま地面を蹴り上げ側転。エアリアルでガーディアンの間をすり抜けた。
2体の背後に回ってショットガンを片手で構える。
敵のユニットを見れば、チビちゃんのグレネードで、左の敵は両足、右の敵は右足と左腕が既に壊れていた。
ショットガンのトリガーを引き、左の敵の右腕のユニットを破壊。弾の切れたショットガンを投げ捨てた。
すぴねこ 『ドラ、コイツは残り左腕だけだ』
ドラ 『了解!』
左右のガーディアンが振り向くと同時に、剣と盾で俺に襲い掛かってきた。
だけど、インプラント起動中なら、どんなに速い攻撃でもカタツムリレベルで遅い。
掠っただけで死にかけるレベルの連続攻撃を、ウェイトシフトとステップで躱し続ける。
そして、後ろに下がったと見せかけて身を乗り出すと、左のガーディアン前に躍り出た。
すぴねこ 『Hell Yeah!!』
目の前で両手の中指を突き立てて相手を煽る。
ガーディアンのAIは、突然起こした俺の何も意味のない奇襲を理解出来ず、動きを止めた。
その直後、ドラがガーディアンの最後のユニットを銃で破壊してジェネレーターを守っていたシールドが解除。すぐにねえさんがスナイパーライフルでジェネレーターを撃ち抜いた。
そして、装甲が剥がれたガーディアンをボスの軽機関銃がトドメを刺していた。
インプラント終了。時間が元に戻る。
最後のガーディアンへ振り向いた途端、盾を前面に押し出したタックルが襲い掛かり、体を弾き飛ばされた。
ボス 『すぴねこ!』
チビちゃん『すぴねこ君!』
床を転がる俺を見たボスとチビちゃんが悲鳴を上げる。
ドラを救出する時に負ったダメージもあって、HPが10%を切っていた。
すぴねこ 『痛くないけど痛てえな、コノヤロウ……』
ゲームだから痛覚なんてないけど、気分的に痛い。
フラフラと立ち上がる俺にガーディアンが迫り、剣を振り下ろしてきた。
すぴねこ 『演技だバーカ』
よろけたのは演技。左へ飛び退き剣を避ける。
俺と対面して後ろを見せるガーディアンに、ミケとボスの銃弾が襲い掛かり、ジェネレーターを守るユニットが爆発した。
ジェネレーターがむき出しとなったガーディアンが、一瞬迷う。
そして、武器を持たない俺を後回しにして背中を見せて、ミケに向かってグレネードを構えた。
俺を無視したガーディアンに笑みを浮かべる。
すぴねこ 『それを待ってたぜ』
ミケから預かっていたGlock 19Mを取り出すと、目の前のジェネレーターを撃ち抜いた。
ジェネレーターを撃ち抜かれたガーディアンが驚き、絶叫を上げる。
直後、ねえさんのスナイパーライフルから放たれた弾丸が、ガーディアンの頭を撃ち抜いた。
すぴねこ 『なんか、FPSで接近戦ばかりやってる気がする……』
ミケ 『ショットガンなんか使っているからでしょ』
すぴねこ 『……ぐぬぬ』
チビちゃんに回復してもらいながら呟くと、ミケが教会で念仏を唱える坊主を見る様な目で俺にツッコミを入れてきた。
ボス 『ドラ、そっちはどうだ?』
目的のシールド装置装置を調べて来たドラに、ボスが話し掛ける。
ドラ 『まさか、シールド発生装置もシールドに覆われているとか思わなかったけど、うし! これでイケるぜ』
ドラがコンソールのボタンを押下すると、光っていたシールド発生装置から光が消えて、インフォメーションが2回流れた。
1つ目はミッションクリアのインフォメーションだったが、2つ目はシークレットミッションクリアだった。
驚く俺達がシークレットの内容を確認すると、3時間以内のクリアがシークレットのクリア条件だった。
ねえさん 『……つまり普通にクリアしようとしたら、3時間以上掛かるって事なのね』
チビちゃん『すぴねこ君が近道を見つけて正解だったね』
すぴねこ 『近道を隠してあるのに、遠回りしないとシークレットを見つけられないとか、クソゲーだしな』
『ガー……こち……こちらスコーピ……聞こえ……るか?』
俺達がSランククリアにホッとしていると、インカムから雑音の入った通信が入ってきた。
『こちら、スコーピオン小隊のアンダーソンだ。聞こえるか?』
ボス 『聞こえるぞ』
ボスが応じると、通信先のアンダーソンが話し掛けて来た。
『要塞のシールドが解除されたのは確認できた。こちらも砲台の破壊を終わらせたのだが……最後の砲台を破壊した時に、ギガントスが現れた。その時、隊長が俺達を庇って……』
アンダーソンの声が途絶える。そして、悲痛な声で再び口を開いた。
『ギガントスに連れ去られた。クソッ!!』
アンダーソンの報告は、俺達に衝撃を与えた。
結果
クリアタイム 156分01秒
死亡者数 0人
シークレットミッション オールクリア
判定
Sランククリア
報酬
クリアボーナス Sランク 50000D
取得スキルポイント Sランク 5ポイント(MAX)




