第9話 ミッション5-1 その5
俺が指摘した場所まで戻って何かないか探し始める。
ドラ 『なあ、本当にあるのか? 俺の第六感スキルに何も反応ないぜ』
すぴねこ 『心がピュアなヤツには見つけられないんだろ』
ドラ 『珍しく俺の事を褒めるじゃねえか』
すぴねこ 『俺は何時もお前の事をリスペクトしてるぜ。ただ、二十歳過ぎて心がピュアとか、気持ち悪いと思うけどな』
ドラ 『こんなに捻くれた褒め方は初めて聞いた』
ドラが呆れたように天を仰ぐが、そのまま動かなくなった。
ドラ 『……ん? あれ? もしかしてアレか?』
ドラの声に全員が視線を追えば、天井に空気ダクトの穴が見えた。
ミケ 『眉唾だったけど、本当にあるとは思わなかった……』
ドラ 『なるほど。最初から見えてれば、俺のスキルが反応しないわけだ……』
すぴねこ 『ドラ、すまん。やっぱりお前の心は濁っていたか』
ねえさん 『心が濁っていてもドラは気持ち悪いキャラだから問題ないわ』
ドラ 『あれ? それを言っちゃう?』
ねえさん 『それがドラの売りでしょ』
ドラ 『まあね』
ねえさんから酷い事を言われたドラが嬉しそうに笑っていた。チョット俺には理解できない。
チビちゃん『だけど、どうやって登るの?』
背の小さいチビちゃんが首を傾げる。
天井の高さは3m以上。手を伸ばしても届かない高さがあった。
ねえさん 『ダクトの中にロープが置いてあるわ。アレを使えって事じゃないかしら?』
ねえさんの指摘に再びダクトを見れば、ロープらしき紐が置かれていた。
ボス 『よし、ねえさん。肩車するから取ってきてくれ』
ねえさん 『了解』
ボスの次に背が高いねえさんをボスが肩車して立ち上がり、ねえさんが手を伸ばしてロープを下へ垂れ流した。
すぴねこ 『確認してくる』
ボス 『頼む』
先行してロープを登ると、ダクトに入り奥へと進んだ。
ダクトは身長2mのボスが這いずれば、ギリギリ通れるぐらいの大きさだった。
そして、ダクトが伸びている方向は、俺が予想していた通り、先へ通じる通路へと延びている様子だった。
這いずって進み行き止まりに到着すると、下に降りられる金網の扉が施錠されていた。
すぴねこ 『こいつは、どこかで鍵の存在があったな』
ボス 『開けられるか?』
インカムから聞こえる心配する声に、ニヤリと笑う。
すぴねこ 『マルチキーに感謝しな』
金網の隙間から下の通路に誰も居ない事を確かめると、ショットガンに開錠用のブリーチング弾を装填して南蛮錠を撃ち抜く。
金網の扉が開いて、接続部分を支えに音を立ててぶら下がった。
すぴねこ 『右よし、左よし、全てよし、スゲエよし。安全は確保したぞ』
通路に降りて安全を確保して皆を呼ぶ。
ミケ 『たまに聞くけど、それ何のネタ?』
すぴねこ 『アメリカ陸軍のマラソンソング』
ミケ 『……今度、本当かどうか調べてみるわ』
調べて赤面しろ。
全員がダクトを通って集合する。スマホからMAPを確認すれば、半分ぐらいの距離をショートカットして、シールド発生装置までもう少しだった。
ねえさん 『隠し通路を通っても、シークレットは出なかったわね』
そう言えば、隠されていたのにシークレットのインフォメーションが流れなかったな。
チビちゃん『もしかしたら、通ってない場所にあるのかな?』
ボス 『すぴねこ、シークレットを探すか先に進むか、お前に任せる』
ボスはクリアする事よりも、ビショップと俺の約束を優先してくれるらしい。
確かにシークレットを探すのはアイツとの約束だが、今は俺の事をずっと待ってくれたボス達に恩を返したい気持ちの方が高かった。
すぴねこ 『クリア優先だ。先に進もう』
ミケ 『そうね。近道は確保したから、次からクリアは楽になるわ』
ボス 『分かった。先に進むぞ』
そうして、俺達はシールド装置のある部屋へと進む事にした。
途中何度か敵と遭遇したが大した相手ではなく、被害を最小限に抑えてシールド装置のある部屋の前までたどり着いた。
ミケ 『すぴねこ。AK借りてもいい?』
すぴねこ 『ん? 弾切れか?』
ミケ 『あとマガジンが1つだけ。予備で欲しい』
ここまでの戦闘で俺達の装備もかなり消耗して、後1回の戦闘がギリギリだった。
すぴねこ 『分かったけど、持てるのか?』
背中からAK-19を取り出して、ミケに放り投げる。
ミケ 『ギリで重量オーバーだから、グロックを預かってて』
ミケは腰からホルスターを外して俺にGlock 19Mを渡すと、AK-19を構えて具合を確かめた。
すぴねこ 『ほら、予備の弾倉だ。AKはマガジンを交換してからコッキングレバーを引かないと、弾が装填しないから忘れるなよ』
ミケが弾倉を受け取ってポケットにしまいながら顔を顰める。
ミケ 『了解……セーフティーレバーが右にあると何か違和感があるわね』
すぴねこ 『そこは慣れの問題だな』
ボス 『準備は整ったか?』
ミケ 『ゴメン。オッケーよ』
ボス 『よし、突入だ』
俺とドラが扉の横で配置に付く。
ドラ 『今日の瞬間クッキング』
3分じゃないのか。
すぴねこ 『ドラ先生。本日の料理は何ですか?』
ドラ 『今日は、誰もが驚くグレネードの詰め合わせです』
どうやら最後という事で、未使用のグレネードを全部放るらしい。
すぴねこ 『それは大判振る舞いですね』
ボス 『いいから早よやれ』
漫才に呆れたボスからツッコミが入った。
ドラ 『時間もあまりないという事で……まずはフラッシュのピンを抜きます』
俺が扉を開けると同時に、ドラが目に入った敵に向かってフラッシュバンを投げる。
素早く扉を閉めると、中から破裂音がした。
ドラ 『お次はグレネードを大量放出』
再び俺が扉を開けると、今度は俺と合わせて5つグレネードを部屋の奥へと放り投げた。
ドラ 『これでお料理完成です』
ボス 『突入!』
ドラとボスの合図で全員が部屋へと突入した。




