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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第2章 弾薬と白い子猫
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第29話 突然の別れ その2

 あれから2週間が経った。

 俺達は順調にミッションを全てSランクでクリアして、シナリオ4を終わらせ、独占トップを走っていた。

 『鋼鉄のパンツァー』は4-1をクリアして2位、復活したロック様率いる『ブレイズ・オブ・ドリーマー』は、3-4をクリアしたばかりの3位、『暴走パトリオット』は3-2でランク圏外まで落ちている。


 ミッションの内容だけど、シナリオ3では、孤立無援の部隊を救出する作戦に強制参加。

 初っ端から、大気圏から降下ポットで敵のど真ん中に突撃、ギネス級の紐なしバンジーを体験した。

 そして、案内役のスコーピオン小隊の皆と一緒に、死にかけた部隊を救出して、ついでにバグスの主要施設を爆破した。


 シナリオ4では、バグスの反攻から惑星での拠点基地が襲撃を受けた。

 拠点を防衛した後、こちらも反撃でバグスの電力発電所を破壊しに行く。

 パワードスーツに乗り込んで敵の電力発電所に乗り込んだら、バグスの電力元が捕えた地球人の体内電気で驚いた。







 そしてゲームだけど、パッケージの売り上げ本数がとうとう4000万本を突破していた。

 最大マーケットの中国へ販売せずに、この売上は凄いと思う。


 その中国だけど、相変わらずAAW2の販売を認めていなかった。

 俺がビショップから聞いた話だと、中国から販売の打診は来ていたらしい。

 だけど、販売を認める条件に、ビショップのVRシステムをタダで技術提供しろと言ってきたから、ケビンがブチ切れて断り、この事をSNSでぶちまけた。

 他人の努力を金で分捕ろうとした中国は、ケビンのリークで世界中から叩かれていたけど、自業自得だろう。


 そして、俺が協力した前作AAWのリメイクが無事に公開された。

 ミッション数は45本。俺、頑張った。だけど、評価はまずまず。しょんぼり。

 賞金レースに挫折したプレイヤーが、それなりに楽しんでいる様子だった。


 それと、ビショップが懸念していたPvPも、少しずつ人気になっている。

 何でも世界で一番人類を強制労働させるエナジードリンクメーカーが、AAW2のスポンサーに名乗りを上げたらしい。

 確かに今、一番話題のゲームで宣伝すれば、効果は絶大だろう。

 正式発表はまだだけど、今年のEスポーツ世界大会のFPS部門はAAW2、そんな噂が既に飛び交ってプロゲーマーが練習に励んでいた。







 順調なAAW2とは逆に、過去にケビン達を騙したプロデューサーが所属している大手ゲームメーカーは、酷い事になっていた。

 まず、ケビンのインタビュー記事が載った翌週の月曜日、予想していた通り、株価がストップ安になった。

 その週は連日ストップ安で、最終的に株価が半分まで落ちていた。

 おかげさまで、400万円近く稼がせて頂きました。笑い止まらず。


 それと、リリースしたばかりのゲームが、AAW2にユーザーを取られて大コケしていた。

 契約していたスポンサーも離れ、予定だったEスポーツ大会の公式からも外される。

 このゲームは、ケビン達を騙した野郎がプロデューサーだったのだが、彼は今回の責任を負わされて会社をクビにされたらしい。

 今までの悪事が広まり、彼を雇おうとするゲーム会社はもうないだろう。


 他にも色々な出来事やプレイヤーからの妨害はあったが、俺達は確実にクリアに近づいていた。







 シナリオ4を終わらせた翌日、日課のトレーニングで早朝から公園に行く。

 いつもの様に公園の遊具で暴れ回ると、陽気のせいで汗を掻いていた。

 公園の蛇口をひねり、頭から水を被る。

 タオルで頭を拭きながらベンチで休憩していると、突然、電話時計が鳴り出した。


「もしもし」

『すぴねこか? キースリーだ』


 電話の相手はキースリーだったが、どこか慌てた様子だった。


「ん、どうした?」

『ケビンとビショップの家に強盗が入って2人が撃たれた』

「……はぁ?」


 突然の話の内容に、思わずベンチから立ち上がる。


『ケビンは病院に運ばれているが重症だ』

「そ、それで、ビショップは?」

『落ち着いて聞け……いいか、落ち着いて聞けよ。ビショップは……死んだ……』

「……え?」


 3月も半ばを過ぎ、桜の木もつぼみが膨らみ始め、春の訪れを肌で感じる季節。

 俺は突然の友の死を理解できず、ただその場で立ち竦んでいた。




 2章終り


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