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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第2章 弾薬と白い子猫
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第26話 ミッション2-4 その3

 俺がアシストした結果、10分ほどで全ての敵を倒すことに成功する。

 こちらの被害は、ドラとボス、それとNPC数人が撃たれたが、死亡者は居なかった。

 チビちゃんがボスとドラにメディカルキッドをぶち込んでいる間、他の皆は溝を渡る方法を模索していた。


すぴねこ 『ミケ、ライト貸してくれ』

ミケ   『自分のは?』

すぴねこ 『アサルトに着けっぱなしで持って来てない』

ミケ   『仕方がないわね』


 ミケからウェポンライトを受け取って、肩に装着する。


すぴねこ 『反対側を調べてくる』

ミケ   『何を言ってるの?』


 俺の言う事にミケが首を傾げる。

 確かに、溝の反対側へ渡る方法を探していて、その反対側を探してくると言われたら、コイツ馬鹿かと思われても仕方がない。

 説明するより実際にやって見せた方が納得するだろうと、溝の反対側まで伸びている壁に張られたパイプに飛び乗った。


ミケ   『チョット、危ないわよ』

すぴねこ 『足場作りのバイトやってたから、平気』


 パイプの上に乗り壁を背にして溝を渡り切り、反対側の床へと降りる。


ミケ   『本当、運動神経だけは良いわね』

すぴねこ 『だけってのが気になるが、今のお前でも、この位なら出来るぞ』


 ミケに答えながら周辺を調べる……敵の死体しかないな。


ミケ   『出来るわけないじゃない』

すぴねこ 『何故出来ないと思う?』

ミケ   『……どういう意味?』

すぴねこ 『考えてもみろ。今のお前はビショップのVRで、俺と同様の身体能力を手にしているんだぞ』

ミケ   『だからと言って、出来るとは限らないじゃない……』

すぴねこ 『そうか? 身体能力は問題ないんだから、今の俺が出来る事をお前が出来たとしても、何も不思議じゃない。なら、何故出来ないか。それは、お前がまだ現実の体を引き摺っていて、出来ないと思いこんでいるからだ』

ねえさん 『つまり、意識の問題って事かしら?』


 俺達の話を聞いていたねえさんが質問する。

 しかし、探しても移動の手掛かりが何もないな。


すぴねこ 『その通り。確かにスタミナや体幹の部分はVRでもカバーしきれていないが、瞬発力や筋力は既に手にしている。後は意識を開放するだけだ』


 昨日、ビショップと遊んだ時、足が不自由なのに俺と同じ様に動いているのを見て、何故、ビショップだけが出来て他のプレイヤーが出来ずにいる理由を考えた結果、この答えに辿り着いた。


ドラ   『その意識の開放の仕方が分からねえよ』

すぴねこ 『それは知らん。自分で考えろ』

ボス   『今更だけど、凄いのを作ったな』

すぴねこ 『作ったのは俺じゃないけどな』


 チビちゃんは俺の話を聞いて「えいっ! えいっ!」と声を出してジャンプをしていたけど、どうやら意識を開放しているらしかった。そして、開放出来ずに落ち込んでいた。


 探索した結果、ドラがリフトを見つけて、リフトを使って高い所にあったスイッチを押すと、溝の両端から橋が伸びて渡る事ができた。

 つまり、俺の行動は無駄だった。


すぴねこ 『しょぼん』

チビちゃん『ドンマイ』

ミケ   『常識的に考えれば、反対側に解決方法があると思う事が変なのよ』


 確かにその通りで何も言えん。


 ここまでに掛かった時間は70分。

 迷路を迷わず進めた事で、目標時間までには余裕でクリアできるだろう。


ボス   『そろそろ行くぞ』


 ボスに促されて、俺達は部屋の奥にあった通路を進む事にした。







 移動中、何度か敵を倒しながら通路を進んだ。

 地下に突入した頃と比べ、敵との遭遇回数は多くなり、このミッションも終盤に近付いたと思われる。

 ちなみに、遭遇戦だとボスの軽機関銃が活躍していたが、尺の都合で省略。


ドラ   『ボス……活躍が潰されたな』

ボス   『……もう慣れてる、気にするな』


 互いに励まし合う姿が見苦しい。

 だけど、一方的な戦闘というのは、勝っている本人は楽しいかもしれないが、負けている側と見ている側からしてみればツマらない。

 つまり、何が言いたいのかというと、ボスが強すぎるのが悪い。


ドラ   『チョット、待ってくれ』


 移動中、突然ドラが立ち止まって顔を顰めた。


すぴねこ 『クソか? ミッション中だ、ここで漏らせ』

ドラ   『違げえよ』

すぴねこ 『Let's now!』

ドラ   『だから違うって言ってるだろ、クソ野郎。見つけたんだよ』


 クソをしろと言ったら、クソ野郎と言われた。


すぴねこ 『トラップか?』

ドラ   『違う、シークレットルームだ』


 どうやらドラは第六感スキルでシークレットルームを見つけたらしい。

 何もない通路の壁に近づくと、壁を押してシークレットルームの入口を開けた。


ミケ   『嫌な予感しかしないんだけど』

すぴねこ 『右に同じく』


 ダニエルはミッション終盤になると、プレイヤーを惑わせる仕掛けをしてくる時がある。

 前作ではこれに何度も騙されて、ミケがダニエルを嫌いになる原因となった。


ドラ   『だったら見なかったことにするか?』

ボス   『そうはいかないだろう。一応確認だけはしよう』


 シークレットルームに入ると部屋の中央に台座があって、その上にアイテムが置かれていた。


チビちゃん『これは?』

ねえさん 『バリアシールドね』

ボス   『AAWの頃の終盤に購入できたアイテムか……』


 ねえさんとボスが言う通り、台座に置かれていたバリアシールドは、前作でも終盤にならないと手に入らないアイテムだった。

 このバリアシールドを使うと、3分間全員のプレイヤー周辺にバリアを発生させて攻撃を防ぐ事が出来るが、あくまでもダメージが入らないだけで、殴られると気絶されて動けなくなるし、グレネードを喰らうと爆風で吹っ飛ばされるから、このアイテムを過信すると酷い目に遭う。

 ちなみに、バグスの技術をパクったアイテムなので、バリアが発生する構造は不明である。


すぴねこ 『このアイテムがここにあるって事は……つまり』

全員   『ラスボスが強い!』


 全員が思っていた事を口にしてから、ため息を吐いた。


ミケ   『最後に大きな地雷がありそうね』

チビちゃん『何時もの事だけどね』

ねえさん 『でも、見つけたのはラッキーよ。ラスボスが何かは分からないけど、これが有ると無いとじゃ雲泥の差があるわ』

ボス   『このアイテムはすぴねこが持ってろ』

すぴねこ 『俺で良いのか?』

ボス   『お前がピンチの時が、このアイテムの一番の使い処だからな』

すぴねこ 『嫌な事をほざきやがる。まあ、遠慮なく使わせてもらうよ』


 台座からバリアシールドを取る。


すぴねこ 『…………』

チビちゃん『すぴねこ君。どうかしたの?』

すぴねこ 『……インフォが流れない』


 そう、シークレットルームで貴重なアイテムを入手したのにも関わらず、何故かシークレットミッションクリアのインフォメーションが流れなかった。


ねえさん 『そう言えば、そうね。どうしてかしら?』


 つまり、これはシークレットではない?

 うーん……隠し部屋に貴重なアイテムを置いてまで何もないのは、今までのAAWとはやり方が違う気がする。

 バリアシールドを手にしたまま、シークレットエリアを出ると、外で待機していたロックウェル小隊長が俺に話し掛けて来た。


「これは……バリアシールドか。これがあれば、3分間バリアを発生させて攻撃を防ぐ事が出来るぞ」


 説明ありがとう。だけどもう知ってる。

 どうやら、彼はアイテムの使い方を説明してくれたらしい。

 何となく、ロックウェル小隊長がこのアイテムを欲しそうな気がして、もしかしたらと思いながらバリアシールドを渡してみた。


「……良いのか? 貴重なアイテムだぞ」


 お? 選択肢が出た。

 どうやら、俺の勘が当たったらしい。このアイテムはNPCに使わせることにしよう。


すぴねこ 『そっちで使ってくれ』


 俺の答えを聞いて、ロックウェル小隊長が頷いた。


「分かった。こちらとしても助かる」


 彼の返答後、シークレットミッションクリアのインフォメーションが現れた。


すぴねこ 『シークレットクリア!』


 コロンビアポーズでドヤ顔。


ドラ   『一発で見つけるお前が凄げえ』

すぴねこ 『今までロックウェルって、ボスにしか話し掛けなかったのに、今回は俺に話し掛けて来たからな。結構分かりやすいヒントだったよ』

ミケ   『今の分かりやすかった?』

チビちゃん『全然』


 チビちゃんが理解できないと頭を横に振る。


ねえさん 『すぴねこって、時々謎な名探偵をやるのよねぇ……』

ドラ   『人はそれを、頭がおかしいと言う』


 せっかく見つけたのに、酷い言われようだな。

 だけど、ケビン達と何度もTRPGで遊んでいれば、この程度の仕掛けならすぐに分かるさ。


ボス   『だけど、アイテムが無くなった分、ボスは大変だぞ』

すぴねこ 『そこはあれだ……皆、がんばれ』

ドラ   『他人事だな』

すぴねこ 『文句は、シナリオを書いたケビンに言ってくれ』


 ジロ目のドラに肩を竦めて地下通路を先へと進む。

 そして、俺達は地下通路を抜けると、バグスの格納庫へ到着した。


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