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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第2章 弾薬と白い子猫
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第22話 ミッション2-3 その5

 4階に上がった先は、エントランスホールだった。

 ホールには先へと進む通路と、俺達が来たのとは別にもう一つの下り階段があった。


ドラ   『あの階段は?』

すぴねこ 『1階でスルーした階段を進めば、あそこから来るんだろ』

ドラ   『なるほど』

すぴねこ 『本当かどうかは知らんけど』


 ここに来るまでの間に合流ポイントがなかったから、多分、合ってると思う。


ミケ   『適当ね』

すぴねこ 『だったら1人で調べるか? 俺は止めねえよ』

ミケ   『遠慮するわ』


 ミケが俺を睨らみながら肩を竦める。器用な行動だな。


すぴねこ 『そりゃ残念』

ボス   『そろそろ時間が怪しくなった。先に進むぞ』


 ボスの話を聞いて時間を見れば、ミッション開始からここまで来るのに掛かった時間は121分。

 Sランクのクリアまで残り29分だった。


 エントランスホールから通路へ進む。

 移動中、バーサーカーとウォーリアーが4体現れたが、狭い通路で逃げ場がないところをボスの軽機関銃で一掃した。

 そして、通路を抜けると俺達は広い場所へ突入した。







 俺達が入った講堂ぐらい広い部屋の中央には、天井を突き抜ける巨大な装置が設置されていた。

 その装置を中心に床下から8本のパイプが伸びて接続され、装置からは地響きの様な轟音が聞こえ、中心部分からは怪しい光が漏れていた。

 部屋の四隅を見れば、人が入るぐらいのケースが4体置かれて、そのケースの天井部分には球体の装置が付いていた。


「恐らく、ここが目的の通信エリアだろう。ハイパー調べてくれ」

「了解」


 ロックウェル小隊長の命令で、ハイパーが巨大な装置へ近づく。

 そして、装置に触れるや否や、1発の銃声が鳴って、ハイパーが撃たれて床に倒れた。


「敵か!?」


 ロックウェル小隊長が叫び、俺達が銃を構えて警戒すると巨大な装置の奥からバグスが現れた。


「ライアン、マイケル、ハイパーを救出しろ」

「「了解!!」」


 ロックウェル小隊長の命令で、スコーピオン小隊の兵士2人が救援に向かう。

 その間、俺達と残りのスコーピオン小隊は近くの遮蔽物に身を隠し、バグスとの戦闘が始まった。







 巨大な装置の裏から現れたバグスの数は8体。

 構成は、ドロント兵3体、バーサーカー2体、ウォーリアー2体、スナイパー1体。


 恐らくハイパーを撃ったのはスナイパーだろう。

 もし、俺が予想しているシークレットミッションがスコーピオン小隊全員の生存だとしたら、この戦闘では撃たれたハイパーと、彼の救援に向かったライアンとマイケルを守る必要があった。

 そして、今、彼等は最前線に居る。つまり、敵AIのヘイトは彼等を攻撃対象として見ていた。


 このタイミングで護衛ミッションですか? ケビンの旦那、鬼畜過ぎじゃありませんかね?


ボス   『すぴねこ!!』

すぴねこ 『ねえさん、頼むぜ!!』

ねえさん 『任せて!!』


 慣れ親しんだチームだから、互いに呼び合う事で意思を統一させる。

 ボスに返答すると、インプラントを起動してハイパーの救援に向かい、ねえさんは俺を守ろうと背中からスナイパーライフルを取り出した。


 遮蔽物から飛び出して、護衛対象のNPC3人に向かって走ると、全ての敵が身を晒した俺にターゲットを変更。

 スローな世界で弾丸が飛び交う中を、射線を読み切って全ての攻撃を躱し、3人のNPCが居る場所まで近づいた。


すぴねこ 『邪魔だ!』


 身を乗り出して攻撃しているライアンと、ハイパーを治療しているマイケルの背中に向かってドロップキックをすれば、2人が敵の射線が届かない場所まで吹っ飛んだ。

 倒れたままグレネードを取り出して、近づいてきたバーサーカーに放り投げる。

 そこでインプラントが終了した。


ミケ   『無茶苦茶ね……』

ドラ   『アイツが暴れるのは、何時もの事だろ』


 グレネードから離れようとするバーサーカー2体を、ミケとドラが射殺。

 同時に離れた場所で俺を狙っていたスナイパーがねえさんの攻撃で床に倒れた。

 NPCがドロント兵を倒すと敵の全員が特攻してきたが、向かってきた敵をボスとチビちゃんが応戦して全ての敵を倒した。


すぴねこ 『オールクリア』

ミケ   『待って、何か光ってる!!』


 一息吐こうとしたらミケが叫び、その声に部屋の四隅を見れば、今まで何もなかったケースの球体型装置が全て光り出した。







 光る四隅の装置を警戒して、全員が俺が居る中央に集まる。

 俺達が何事かと見守っていると、ケースの中からドロント兵が突然現れた。


チビちゃん『何アレ!』

ボス   『やはり、敵はあれだけじゃなかったか!』


 敵ドロント兵は俺達を見つけると、銃を撃たずに突撃を開始。

 今までと違う敵の行動に、AAWの時のクレイジーモードを思い出した。


すぴねこ 『コイツ等、クレイジーモードだ!!』

ドラ   『マジかクソ!!』


 ドラが攻撃するが、クレイジーモードの敵は防御が硬いのに加えてシールドを完備しているため、ドラの攻撃を全て弾いた。


ねえさん 『頭以外は通用しないわよ!!』


 クレイジーモードの唯一の弱点は頭のみ。しかも、5.45x39mm弾程度だと、2発頭に撃たないと死なない。


ボス   『すぴねことチビちゃんは右奥、ミケは右手前、ねえさんとドラは左奥、俺は左手前だ』

「全員、拡散。敵を攻撃しろ」


 ボスとロックウェル小隊長の指示に全員が配置に就くと、クレイジーモードの敵へ攻撃を開始した。







 迫り来るドロント兵の胴体にショットガンをぶっ放せば、撃たれた衝撃でドロント兵が怯んだ。


すぴねこ 『チビちゃん』

チビちゃん『にゃー!』


 敵が怯んだところを、チビちゃんの銃弾が連続で頭に命中して、ドロント兵が後ろへ倒れた。

 しかし、奥のケース装置を見れば、再び球体が光ってドロント兵が現れていた。


チビちゃん『何で!』

すぴねこ 『ありゃ転送装置か何かか?』

ドラ   『まるでSFじゃねえか!?』

ミケ   『元々SFでしょ!』

ねえさん 『上、タレントも降ってきたわ!!』


 ねえさんの声に天井を見れば、天井の穴からタレント兵が現れて、俺達に攻撃を開始した。


ボス   『クソ! ねえさん頼む』

ねえさん 『了解。ドラ頑張ってね』

ドラ   『マジかぁ……』


 ボスがドラと組んでいたねえさんを、タレントの狙撃に割り振る。


すぴねこ 『チビちゃんもタレントの攻撃に回ってええよ』

チビちゃん『一人で大丈夫?』

すぴねこ 『クレイジーでもドロント1体だけなら、余裕』

チビちゃん『流石だね』


 そう会話をして、俺一人で対処しようとしたら、再びケースの球体が連続で光って2体同時に敵が現れた。

 1体だけでお腹いっぱいです。勘弁してください。


すぴねこ 『ゴメン、やっぱり無理』

チビちゃん『ドンマイ』


 チビちゃんは俺の横に戻ると、ドロント兵にアサルトライフルを向けた。


 俺とチビちゃんが右奥で戦っている間、ミケは余裕でドロント兵を倒していた。

 ミケが使うHK417A2-20は、7.62x51mm NATO弾だから、威力が強くクレイジーモードのドロント兵でもヘッドショット1発で仕留めていた。


 ボスは軽機関銃で威嚇射撃をしている間に、怯んでいる敵をロックウェル小隊長が仕留めるといった様子で、NPCとの連携が上手くいっていた。


 ドラは逆にNPCが機関銃で威嚇射撃をしている間にひょっこり前に出ると、床に地雷を設置して素早く元に戻る。

 そして、敵が地雷を踏んで吹っ飛んだところを、普通に撃ち倒していた。

 クレイジーモードのバグスは頭が唯一の弱点だが、それは体を包む透明なシールドに覆われているからであり、地雷でシールドの耐久度が無くなれば普通のドロント兵に戻る。面倒な攻撃方法だが、陰キャのドラのお得意な倒し方だった。


 最後にねえさんだが、余裕な表情で短銃でタレント兵を次々と破壊していた。

 恐らくクレー射撃のノリで、倒していると思われる。







 倒しても倒しても球体から現れる敵に、こちらの疲労が蓄積されていった。

 いい加減にしろと思い始めた頃、あれ? もしかしてあの球体を破壊すれば、敵来なくなるんじゃね? と思い付く。


すぴねこ 『チビちゃん、ちょっと任せた。ねえさん、余裕ならチビちゃんのフォロー頼む』

チビちゃん『へ?』

ねえさん 『オッケー』


 2人に湧き出るドロント兵を任せると、ショットガンから弾を抜き、替わりにスラッグ弾を装填。

 そして、球体に照準を絞るとトリガーを引いた。


 ショットガンから放たれたスラッグ弾が球体に命中。

 すると、発光していた球体の光が消えて敵が現れなくなった。


すぴねこ 『おっしゃ、俺の勘もまんざらじゃねえぜ!!』

ねえさん 『迷路で迷ってたのは誰だったかしら?』


 余計な事は言わんでよろしい。


チビちゃん『私、ドラ君の応援に向かうね』

すぴねこ 『了解、俺はあの玉を破壊してくる』


 敵が沸かなくなった事から、チビちゃんが地雷が尽きてヒィヒィ言っているドラの応援に行き、俺はショットガンの弾丸を全てスラッグ弾に変更して、全ての球体を破壊しに向かった。

 ちなみに、何となく気分的に、ドラが担当している球体を最後にした。







 俺が全ての球体を破壊、残った敵を一掃して戦闘が終了する。


ミケ   『オールクリアね』

ドラ   『もう敵は来ねえよな』

すぴねこ 『フラグ立てるの止めろや』


 俺達がホッとしていると、部屋の入口が騒がしくなった。

 全員が銃を構えて待ち構えて居ると、爆弾を運んできた兵士と一緒にクソ軍曹が現れた。撃っていい?


「ご苦労だったな。お前達の健闘で無事に爆弾を運ぶことが出来た。補給物資も運んで来たから、必要なら受け取ってくれ」


 そう言い残すと、軍曹は配下の兵士と一緒に巨大装置の近くまで爆弾を運んで設置を始めた。


 その様子を眺めていると、インフォメーションが流れた。

 内容を確認すれば、ミッションクリアとシークレットミッションのクリアだった。

 シークレットミッションは、俺が予想していた通り、スコーピオン小隊の全員の生存で、どうやらシークレットはこれだけだったらしい。無事にSランクを取得出来た。


ボス   『やっと終わったか』

ドラ   『今回はきつかったな』

チビちゃん『最後のクレイジーモードの時は、本当に焦ったね』


 会話をしている皆を他所に、俺とドラが弾丸とグレネードを補充する。


ドラ   『タダだぜ、ラッキー』

すぴねこ 『外に出ると金が掛かるからな、今のうちにありったけ補充だ』

ミケ   『卑しいわね……』


 そんな俺達二人をミケが物乞いを鼻で嗤うかの様な目で見ていた。


ねえさん 『あら? まだミッションから抜けれないけど、どうしたのかしら?』


 ミッションを出ようとしたねえさんが、スマホを弄りながら首を傾げる。

 その声に、俺とドラ、口では俺達を馬鹿にしておきながら自分も補給しているミケの手が止まった。


ボス   『何かあっ……お?』


 ボスが話し掛けるのと同時に床が揺れ始めた。







 揺れる床に俺達が慌てていると、部屋の天井が崩れて何かが落ちて来た。


すぴねこ 『ギガントスじゃねえか!!』

ドラ   『ぎゃーーラスボス!!』


 ドラが叫んだ通り、前作AAWのラスボスのギガントスが天井を突き破って俺達の前に現れた。

 ギガントスは全長6m。4本脚で立ち、腕も4本生えている。腕の上2本は手の替わりに口径の大きい機関銃が付けられ、下の腕は何も持ってないが、近づく敵をその巨大な拳でぶん殴るから武器など必要なかった。

 そして、両肩にはミサイルランチャーを乗せ、強大な破壊力で全てを粉砕する。

 その存在は、まさに生きる破壊兵器と言えた。


「お前等、雑魚の分際でここまで来たのは褒めてやろう」


 ギガントスが俺達に向かって話し掛ける。

 この敵は、バグネックスでも上位種族であり、地球人の言葉を理解でき話す事ができた。


「だが、ここまでだ。これ以上の狼藉は我が許さん!!」


 そう言うと、ギガントスがEMP爆弾を掴み、爆弾を後ろへ放り投げた。


「くっ、退却だ!」


 軍曹の命令で全員がギガントスに銃を撃ちながら後退する。

 俺達もオートモードで動けないが、自動で体が動き後ろへ下がった。


「逃がすか!!」


 ギガントスが俺達に向けて機関銃を構えた。


「そうはさせねえ!!」


 弾丸が放たれる前に、軍曹の銃撃がギガントスの顔面に命中。

 その攻撃にギガントスは攻撃を止めて、軍曹に視線を向けた。


「ここは俺が喰い止める! お前達は逃げろ!!」


 軍曹はそう叫ぶと、ギガントスに銃を撃ち、一人で立ち向かった。


「小賢しいわ!!」


 ギガントスは軍曹の攻撃をものともせず、手を伸ばして軍曹を掴み持ち上げた。


「ぐあっ……お前達……俺からの最後の命令だ……地球を、地球を守れ!!」


 そう言うと、軍曹は胸からグレネードを取り出してピンを抜いた。


「あばよ」


 その言葉を最後に、軍曹がグレネードの爆発に包まれる。

 俺達は軍曹の犠牲により無事に部屋から脱出した。




 結果

  クリアタイム  148分03秒

  死亡者数    0人

  シークレットミッション  オールクリア


 判定

  Sランククリア


 報酬

  クリアボーナス       Sランク 20000D

  取得スキルポイント     Sランク 5ポイント(MAX)

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