表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第2章 弾薬と白い子猫
53/108

第21話 ミッション2-3 その4

 突入した右の部屋は天井が高く広い場所だった。

 照明がなく暗い部屋だが、一定間隔でライトで照らされた透明なケースが5×5で20体ほど置かれていて、それが照明の替わりになって真っ暗というわけではない。

 ケースは水溶液で満たされ、その中には死んだように眠るバグスが浮かんでいた。


ドラ   『足湯、砂風呂、半身風呂は知ってるけど、頭まで浸かる全身風呂は初めて見たな』

すぴねこ 『さぞ天国に昇るぐらい気持ち良いんだろ』


 窒息で死ぬまでは苦しそうだけどな。


ねえさん 『本当に死んでれば、楽なんだけど……』

チビちゃん『あれはどう見ても、来るよ』

ミケ   『奥のスイッチを押して戻るときに、ケースが開いて襲ってくるパターンよね』


 女性3人が会話をしている横で、ボスが何かを考えている様子だった。


ボス   『……今の内に潰しとくか』

すぴねこ 『破壊できればな。やるか?』

ボス   『試しにやってみよう。すぴねこ、撃て』

すぴねこ 『了解』


 ボスの命令に従い、一番近くのケースに向けてショットガンを放つが、ケースは壊れなかった。


ボス   『やっぱり無理か……』

すぴねこ 『んー。なんか行けそうな気がするんだけどなぁ』


 そう言って、続けてショットガンをケースに撃ち込む。

 諦めずに3発撃つとケースが粉砕して、中に居たバグスが床に倒れて、ゆっくり立ち上がろうとしていた。


ミケ   『本当に出来ちゃった……』

すぴねこ 『おはよう。モーニングショットを奢るぜ』


 ホルスターからグロック19Mを取り出して、起き上がる寸前のバグスにヘッドショットを決める。


すぴねこ 『1発だと壊れないけど、3発目で破壊できるのがダニエル仕様だな』


 ショットガンに弾を装弾しながら呟くと、ドラが呆れたような目で俺を見ながらため息を吐いた。


ドラ   『それを見つける、お前が凄げえよ』

ねえさん 『普通、1発撃って無理なら諦めるわ……』

ボス   『どうやらケースに耐久度が設定されているらしいな。よし、ここは俺とチビちゃんで全部のケースを破壊する。皆は奥へ行ってくれ』

チビちゃん『皆、頑張ってね』


 少しズルをした気もするが、楽に出来るならそれに越した事はないだろう。

 ボスとチビちゃんをこの部屋に残すと、俺、ミケ、ドラ、ねえさんはさらに奥の部屋へ進んだ。







 奥の部屋に進むと、先ほどと同じ様に天井の高い部屋だった。ただし、こちらは普通に照明があって部屋は明るい。

 部屋の奥には床から天井へ伸びている何本かの巨大なパイプが伸びていて、そのパイプの近くにある台座を調べるとスイッチボタンが見つかった。


ドラ   『コイツかな? まあ、コイツしかないんだけどな』

ミケ   『いいからさっさと押して、戻るわよ』

ドラ   『はいはい。ポチッとな』


『#&%@…%)侵&者!'&、+?$*…~#"(。……#&%@…%)侵&者!'&、+?$*…~#"(。』


 ドラがボタンを押すと同時に、部屋の中にバグス語のアナウンスが流れ、照明が落ち、壁に付いていたパトランプが赤く光ってサイレンが鳴りだした。


すぴねこ 『あーあー。ドラ、やっちまったな』

ドラ   『チョッ、俺のせいかよ!!』


 ドラに冗談を言いながら全員が銃を構えて警戒していると、天井の排気口から新手のバグスが現れた。


ねえさん 『タレントよ。皆、パイプの裏に隠れて!!』


 新たに現れたバグスの名はタレント兵。

 両手両足を切断されて、足の替わりにホバーを、両腕にはマシンガンの様なエネルギー銃を付けられ、宙に浮きながら攻撃をしてくる。

 攻撃力は低いが、ちょこまかと空を飛ぶため照準を合わせるのが難しく、厄介な敵だった。

 タレント兵の非人道的な改造姿を見る度に、別に肉体を改造しなくてもロボットでいいじゃんと思うが、そこはバグスと人類の文化の違いという奴だろう。


 全員がパイプの裏に隠れて、タレント兵に攻撃を開始。

 俺も飛び回るタレント兵を撃つが、ショットガンだと弾速が遅くて中々当たらず、グロック19Mで応戦した。


ボス   『コンタクト! ケースの蓋が開いて、バグスが動き出した』

チビちゃん『まだ、半分も倒してないよ~~!』


 俺達が戦っている最中、インカム経由でボス達の通信が入る。

 どうやら、スイッチを押した事で、ボスの方でも異変が発生したらしい。


すぴねこ 『文句は後でドラと急かしたミケに言ってくれ!』

ミケ   『え、私もあやまるの!?』

ドラ   『へへへ、姉御。死なば諸共ですぜ』

ミケ   『変な冗談はヤメテ!』

ねえさん 『2人共早く倒しなさい。戻って応援に行くわよ』

ドラ   『へいへい』

ミケ   『もう、すぴねこが変な事言うから!』


 はて? 変な事など何一つ言ってないのに、俺のせいにされた。

 ミケが反政府ゲリラが政府高官を射殺す様な目で俺を睨んだ後、俺の替わりにタレント兵を撃ち殺した。心の中で哀れなタレント兵に合掌。


 俺もミケに負けじとタレント兵を攻撃する。

 タレント兵の攻撃はうざったいが、防御力は殆どない。というか、裸。両手両足を切断されて、空飛ぶ裸。

 バグスに拉致られた挙句、両手両足を切断されて、ハードコアな露出プレイ……最初にこのタレント兵を見た時、キャラデザ担当のキースリーの精神を疑った。


 タレント兵は倒しても倒しても次々と排気口から現れたが、その殆どをミケとねえさんが倒す。

 こちらも全員が軽く被弾したが、現れたタレントを全て倒すと、急いでボスの救援に向かった。







 ボス達の救援に向かうと、2人は部屋の端でドロント兵10体に囲まれ、立ち往生していた。

 2人は倒れたケースを遮蔽物にして何とか耐えているが、かなり危険な状況だった。


すぴねこ 『まだ撃つな!!』


 大声を出して、攻撃しようとしていた全員を止める。

 囲んでいるドロント兵を撃ち殺しても良いが、そうすると半数以下になって、ボスとチビちゃんに自爆をする可能性がある。

 そう判断すると、ショットガンから弾を輩出して、替わりに催涙ガスの入ったフェレット弾を装填した。


すぴねこ 『ボス、チビちゃん。ゴーグルを付けて、息を止めろ!』


 二人に叫ぶと、ショットガンのトリガーを引き、ボス達諸共ドロント兵の集団にフェレット弾を発射。

 全てのドロント兵が催涙ガスの煙に包まれ呻くと、煙の中から暗視ゴーグルを付けたボスとチビちゃんがこちらへ逃げて来た。


ねえさん 『早く後ろに隠れて』

ボス   『助かったぜ』

チビちゃん『怖かった~~』


 ボスとチビちゃんを裏に隠すと、俺達も近くで倒れているケースの裏に隠れて反撃を開始。

 案の定、ドロント兵を半数倒すと、全員がボスに特攻してきたから、自爆される前に全ての敵を撃ち殺した。


すぴねこ 『オールクリア』


 俺がショットガンに弾を装填している間に、チビちゃんが自分とボスの体力を回復させていた。


チビちゃん『今のでメディカルキッドが尽きちゃった』

ボス   『生きているだけで儲けものだ』

ドラ   『んだんだ』

すぴねこ 『今回の戦犯が偉そうだな』

ドラ   『ボタンを押したのが、たまたま俺だっただけだろ!』


 騒ぐドラを全員が無視して、スコーピオン小隊と別れた部屋へ移動する。

 扉を潜って出るまでたったの13分。先にケースを破壊したおかげで大変だったけど、予想より早く戻る事が出来た。







 俺達が部屋に戻ると同時に、左の部屋へスイッチを押しに向かったスコーピオン小隊も帰ってきた。


「どうやらそっちも無事に戻ったみたいだな」


 スコーピオン小隊も全員無事だったらしい。ロックウェル小隊長が俺達を見て笑みを浮かべる。

 この隊長は、最初に会った時から部下思いの良い兵士で、俺の中では好感度が高かった。

 どこぞの軍曹と交代して、このNPCをレギュラーとして登場して欲しい。


「ハイパーどうだ?」

「……少々お待ちください」


 スコーピオン小隊のハイパーが台座の機械を弄ると、中央の扉が開いた。

 開いた扉の先には、4階へと続く階段が見えていた。


「よし、アンダーソン。外に連絡して、ここまでの経路を報告しろ」

「了解」


 ロックウェル小隊長がアンダーソンに命令すると、今度は俺達向かって話し掛けてきた。


「お前達、物資は足りてるか? こっちは多少余裕がある。必要なら受け取ってくれ」

ボス   『ありがたい。助かる』


 ボスが礼を言うと、ロックウェル小隊長が「気にするな」と言って、部下が集合している場所へと戻っていった。


ミケ   『まるで本物の人間みたいね』

ねえさん 『いつかNPCにも心が生まれるかも。その時が楽しみね』


 ねえさん……もしかしてVRでLGBTに寛容な男を求めるつもりか? そのネタはドラだけで十分だ。


チビちゃん『メディカルキッドを2個確保したよー』

ドラ   『俺達の治療は大した怪我じゃないから、しなくていいぜ』

チビちゃん『んーそう? でも、すぴねこ君だけは治しとく』

すぴねこ 『ふぁ?』


 ショットガンの弾薬を補充していたら、チビちゃんが俺の延髄にメディカルキッドをぶっ刺した。

 理不尽な治療で体力が回復する。


「ロックウェル隊長、連絡完了です。彼等もこちらへ向かうそうです」

「分かった。それじゃ、俺達は先に進もう」


 アンダーソンの報告にロックウェル小隊長が頷く。

 そして、準備を整えた俺達は、中央扉の先にある4階へ続く階段を上った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ