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『ワイルドキャット・カンパニー』 ~俺達、過疎ゲー、ゲーマーズ~  作者: 水野 藍雷
第2章 弾薬と白い子猫
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第20話 ミッション2-3 その3

 進んだ通路は俺が予想していた通り、また迷路の様に入り組んでいた。

 今度は敵が来ても少数だと予想しており、二手に別れて探索をする。俺と組むのはミケとねえさん。いつも通りのメンバーである。


 スコーピオン小隊はチームリーダーに付いて行く仕様らしく、全員がボスの後をぞろぞろと付いて行った。

 ボス達は大変だと思うけど、NPCがケガしてもメディック兵のチビちゃんが治療出来るから、丁度良い組み合わせだと思う。

 決して、面倒事を押し付ける事が出来たなどと、思っていても口には出さない。


ミケ   『ねえ、すぴねこ。パンツァー達はどっちのルートを進んだと思う?』


 移動中にミケから話し掛けられて、逆に質問をする。


すぴねこ 『アイツ等のクリアランク、何だった?』

ドラ   『Bだったぞ』


 インカム経由でミケの替わりにドラが答えた。

 ランクBだと、シークレットミッションを全てクリアして、目標時間に間に合わなかったって事か……。

 もし、俺が予想しているシークレットミッションがNPCの全生存だとすると、激しい戦闘はしていないだろう。


すぴねこ 『裏だな』

ミケ   『やっぱり』

すぴねこ 『……ついでに、アイツ等が開始前に煽ってきた理由も、何となく分かったぜ』

チビちゃん『どゆこと?』

すぴねこ 『話を聞いた時から、普段は他人を虫けらにしか思わないドイツの皮肉野郎(ミカエル)が、深夜まで起きて皆を煽るとか、何かあると思っていたんだ』

ねえさん 『確かにその通りね……』

すぴねこ 『俺の勘だけど。あの野郎、皆を煽って俺を孤立させようとしていたんじゃねえか?』

ボス   『なるほど……』

ミケ   『ゴメン、さっぱり意味が分からない』


 俺の言っている事を理解したボスとは逆にミケが首を傾げる。


ボス   『ミカエルは、俺達の事を「すぴねこの荷物で、雑魚プレイヤー」と言っていただろ』

ねえさん 『少し違うわね。正確には「無能な捻くれ野郎の手下共、お前等はすぴねこ抜きで一度でもミッションをクリアした事があるのか? まあ、銃を撃つことしか考えない脳筋じゃ無理だろう」よ』

すぴねこ 『皮肉屋にしては、少し抑えた言い回しだな』


 どうやら英語が堪能なねえさんは、ミカエルの言葉をそのまま皆に伝えずに誤魔化していたらしい。


ミケ   『それで抑えてるの?』

ドラ   『チョット、あの野郎をぶっ飛ばしてくる!』

ねえさん 『落ち着きなさい。まだ、ボスが話している途中よ』

ボス   『まあ、怒るのも無理はない。俺だって内心では結構キテるからな。だけど、俺達が怒れば怒るほど、アイツの思う壺だ』

チビちゃん『ねえ、ボス。まだ分からないんだけど、何で怒ったらダメなの?』

ボス   『先ほどの階段。ミカエルはすぴねこがあの階段を見れば、必ず登らないと思った筈だ』

ドラ   『実際に登らなかったしな』

ボス   『だけど、もし俺達がミカエルの煽りを真に受けて、すぴねこの意見を無視したらどうだ?』

ねえさん 『もし、すぴねこの予想が正しければ、反発して階段を上った挙句に大量の敵と戦っていたわね。そして、ミッション失敗か低ランククリアが関の山ってとこかしら』

ミケ   『つまり、私達にすぴねこが居なくてもクリアしてみろ、と煽ったの?』

ボス   『そう言う事だ』


 ボスの説明で全員が納得した様子だった。


ミケ   『なるほど、理解したわ』

ドラ   『心理戦かよ。卑怯とまでは言わないけど、やり方がえぐいぜ』

チビちゃん『むー。こんなの楽しくないよ。ゲームってもっと皆で楽しむ物じゃないの?』

すぴねこ 『チビちゃん、良い事言った。ゲームは敵対していても、相手をリスペクトするべきだ。ミカエルはそれを理解していない。それに、アイツの作戦には2つのミスがあった』


 全員が俺の話の続きを待つ。


すぴねこ 『1つ目は、ねえさん以外はそれほど英語が堪能ではなく、ねえさんもミカエルの言葉を正しく伝えなかった事』

ねえさん 『そのまま伝えたら、喧嘩になりそうだったからね……』

すぴねこ 『アイツも、まさか自分の言っている事を理解していないとは思ってもいないだろうな。クッソ笑えるぜ。それと、2つ目はボスがアイツが思っていたよりも人格者だった事だ』

ボス   『……別に俺は聖人君子じゃねえぞ』

すぴねこ 『誰もそこまで思ってねえよ、悪人。だけど、もし俺がボスの立場で、あの野郎の煽りを喰らったら間違いなくキレてたぜ』

ボス   『そうか? いや、お前なら確かにキレてそうだな』

すぴねこ 『って事だ。ボスが常に考え冷静な判断を下すから、俺だって安心して提案して戦える。ボスはもう少し自分に自信を持った方がいい』

ボス   『……お、おう』


 そう言ってボスを褒め殺せば、他の皆も追従し始めた。


ドラ   『ボス、ありがとう』

ミケ   『ボス、ありがとう』

ねえさん 『ボス、ありがとう』

チビちゃん『ボス、愛してる』


 そして、流れで全員がボスに拍手をする。


ボス   『お前等、恥ずかしいからヤメロ!!』


 全員からの悪ふざけを受けて、ボスがブチ切れた。







 俺達は会話をしながら通路を探索し続けた結果、ボスのチームが2階に上る階段を見つけ、俺のチームは地下へ続く階段を見つけた。


ドラ   『どっちが正解なんだ?』

すぴねこ 『さあな。だけど、こっちは透明な壁で階段が囲まれて近づく事すら出来ないぜ』


 俺達が見つけた地下への階段は、透明なシールドに覆われて近づく事が出来なかった。


ミケ   『だけど、本当に地下があるとは思わなかったわ』

すぴねこ 『俺もそう思う』


 そう言うと、ミケがアホな事をやっている飼い主を呆れて見るネコの様な目で俺を見た。


ボス   『ショットガンでも無理か?』

すぴねこ 『鍵がねえよ』


 透明なシールドをガンガン蹴飛ばしても消える様子はなく、近くの壁にパネルはあるが、カードキーを差し込む穴があって操作が出来ない。


ねえさん 『パネルを操作すればシールドが消えると思うけど、カードキーが必要みたいなのよね』

すぴねこ 『ぶっ壊しても良いなら、パネルを壊すけど?』

ドラ   『その破壊衝動は、何所から湧き出るんだ?』

すぴねこ 『お前のくだらねえ冗談からだよ』

ドラ   『アイタタタ!』

ボス   『破壊は止めておけ。普通の鍵じゃなくパネルにしたのは、ショットガン対策だろう』

すぴねこ 『まあね。それでどうする?』

ボス   『迷路に時間を使い過ぎた。俺達が見つけた階段を上がって先に進もう。もしかしたら、登った先で何かがあるかも知れない。こっちに戻って来てくれ』


 時間を見れば、ミッション開始から50分が経過している。

 確かに迷路の探索に時間を掛け過ぎた。俺のせいかもしれないが、それは考えるのを忘れよう。


すぴねこ 『問題はそっちへ行けるかだな』


 効率重視で二手に別れて探索したけど、チョット迷路が広すぎた。ボスの所へ向かう以前に、元の場所まで戻れるかも分からない。


ミケ   『最初の階段の場所までだったら覚えているから、戻れるわよ』

チビちゃん『私も、スマホにメモしてたから、大丈夫』

ボス   『だったら問題ないな。最初の階段前の分岐路で合流しよう。チビちゃん、誘導頼む』

チビちゃん『あいさ』

すぴねこ 『ボス、了解だ。ミケも誘導頼む』

ミケ   『分かったわ』


 俺達は地下へのルートを一旦諦めると、ボスと合流して2階へと進んだ。







 2階は一本道の通路があるだけで、突き当りで3階への階段を見つけた。

 どうやら、裏ルートを通ると2階は免除らしい。


 警戒しながら3階へ進むと、今度は横に長細い部屋へと出た。

 正面には3つの扉が並んでいいて、部屋の中央には機械の付いた台座が立っていた。


すぴねこ 『どうやら台座に仕掛けがありそうだな』


 台座を無視して3つの扉を調べても扉は開かず、ボスに報告する。


ボス   『ふむ……さっぱり分からん』


 ボスが台座の前に立ち機械のコンソールパネルを適当にポチポチ押しながら呟く。

 俺も扉を調べる前に台座の機械を見たが、見た事の無い文字の羅列がモニターに表示されて解読不能だった。


「こいつはバグネックス語か……ハイパー、読めるか?」


 俺達が困っていると、今まで喋らなかったスコーピオン小隊の隊長が機械を覗き込んで、部下の一人に声を掛けた。

 この小隊長の名前は何だっけ? 聞いた気がするけど忘れた。


「少し待ってくれ」


 ハイパーと呼ばれた兵士が台座の前に移動。難しい顔をして機械を弄り始めた。

 なにやら、イベントが始まったらしい。俺達が黙って見ていると、ハイパーが機械を操作しながら小隊長と話をする。


「ロックウェル隊長。どうやら中央の扉が目的の通信エリアに行くルートらしいが、その扉を開けるには左右の扉の先にある解除スイッチを押す必要があるらしい」

「左右の扉は解除できるのか?」

「多分……これか? ……オーケー。左右の扉は解除できるみたいだ。ただし、左右の扉は同時にしか開けられないし、扉も20分で閉まってロックされる」

「と言う事は、左右の部屋を同時に攻める必要がありそうだな」

「面倒臭いけど、そうらしい」

「そうか……よし、俺達は左の部屋のスイッチを押す。お前達は右の扉にある奥の解除スイッチを押してきてくれ。20分以内にここへ戻らないと、このミッションは失敗だ」


 下手糞な三文芝居が終わると同時に、ハイパーが機械を操作して左右の扉が開いた。それと、隊長の名前はロックウェルだった。

 俺達とスコーピオン小隊は左右の扉に別れると、奥にある解除スイッチを押しに向かった。


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