第12話 ミッション2-2 その4
ミケが機銃で雑魚を倒す傍ら、俺も敵が集まっている場所を狙って主砲を撃って敵を吹き飛ばす。実に気持ちが良い。
俺達の後ろではボスとドラが巨大な蜘蛛の関節を狙って主砲を放ち、チビちゃんとねえさんは敵戦闘機を破壊しつつ、俺とミケが取りこぼした雑魚を倒していた。
それでも倒しきれない敵は、戦車がプチッと轢き殺していた。
「敵を轢くってのは気持ち良いな!」
俺は操縦手のAIから、戦争は人間の醜態を美徳に変えるという事を学ぶ。
ドラ 『クソッ! 当たらねえ』
俺の後ろのボスとドラが巨大蜘蛛の関節を狙って主砲を撃つが、まだ距離が離れているため当てるのが難しいらしい。
ボス 『むやみに撃っても意味がない。タイミングを見計らえ』
ドラ 『そうは言っても、せめて戦車が止まれば……すぴねこ、もう一度そっちの操縦手の頭を蹴飛ばして戦車を止めてくれ』
すぴねこ 『俺の戦車が的になるから、ヤダ』
ドラ 『チッ!』
トンネル内では全速力だった戦車だったが、今は操縦手が落ち着きを取り戻して、速度を落とし移動している。
だけど、停止までしたら集中砲火を受けるから断固断る。
ねえさん 『敵の戦闘機は粗方片付いたわ。ドラ、交代よ』
ドラ 『頼んだ!』
上空から来る敵戦闘機を全て撃墜したねえさんが、ドラに変わって砲手にチェンジ。
ドラは車体から出ると、彼女の替わりに雑魚に向かって機銃を撃ち始めた。
そして、ねえさんが主砲を撃てば、巨大蜘蛛の関節に命中させて1本目の右足を破壊した。
ボス 『流石だ』
ねえさん 『タイミングだけは先に計算していたのよ』
ボス 『よし、そのまま右側の足を破壊するぞ』
ねえさん 『了解』
ボスとねえさんは、片側の足を重点的に狙って主砲を撃ち始めた。
タレットを2つだけ落とされたけど上空の戦闘機は殲滅し、蜘蛛の足もボスとねえさんが2本目を破壊する。
雑魚も粗方蹴散らして順調に進んでいると思ったら、蜘蛛の胴体部分が光るやいなやレーザービームを放ってきた。
ドラ 『ぐわっ!』
ねえさん 『うおっ!』
蜘蛛のレーザービームはドラとねえさんが乗る戦車に命中して、男2人の悲鳴が耳に入る。ねえさん、地が出てますがな。
チビちゃん『ドラ君、ダメージは?』
ドラ 『マジかよ。今の1撃で64%!?』
ねえさん 『それと主砲が損傷よ。今、装填手が修理を始めてるけど、しばらく撃てないわ』
ドラ 『修理なら俺も出来そうだ。手伝ってくる』
修理にどれだけ時間が掛かるか分からないけど、ねえさんの攻撃を失ったのは痛い。
チビちゃん『すぴねこ君、ねえさんの替わりに蜘蛛へ攻撃して』
すぴねこ 『了解』
ミケ 『待って、ビリケン様が来た!』
すぴねこ 『この状況でか!?』
ミケの慌てる声にモニターを見て、新敵の姿に舌打ちする。
彼女の言うビリケン様とは、ヘビータンクの事を言っていた。
ヘビータンクは全長4mの大きな体をしたバグスで、装甲と銃器が重すぎて普通に動けないらしく、下半身をぶった斬って替わりにホバーリング装置を入れた結果、何故か重量級なのに空を素早く飛びながらミサイルを撃ってくる、軽量級なのか重量級なのか分からん敵だった。
この敵は雑魚敵の中では1,2を争うほど素早く、そして装甲はガーディアンがシールド展開しているのと同等に固い。
弱点はライトタンクと同じく背中にあるジェネレーターだけど、ホーバーリングで常に優位な状況に立つため、真っ当に戦って倒すのは難しいと言うか、無理。
ちなみに、見た目は大阪通天閣に居るビリケン様。なので、俺達の間ではヘビータンクをビリケン様と呼んでいる。
『こちらHQだ』
忙しい最中、突然インカムに今回の作戦指揮を取るスピットマン中佐の声が入ってきた。
『残念な知らせがある。北と中央の戦車隊が敵の攻撃を受けて全滅した。残るはお前達だけだ、なんとしても作戦を成功しろ。以上』
何となくこの展開は予想していた。
スピットマン中佐の一方的な通達に、横の装填手が落ち込むが、操縦手は何故か逆に雄叫びを上げた。
「これでミッションを成功したら、俺達は英雄。アベンジャーズの仲間入りだぜ!」
「アホウ。お前がアベンジャーズになったら、マーベラスの黒歴史だ」
操縦手にツッコんでいると、インカムからチビちゃんの切羽詰まった声が入ってきた。
チビちゃん『作戦変更! ボスはそのまま蜘蛛を撃って。すぴねこ君はビリケン様を攻撃』
ボス 『了解』
すぴねこ 『あいよ!』
ねえさん 『直ったら援護するから、それまでの間は1対1で頑張って』
すぴねこ 『ビリケン様とタイマンとかシンドイわぁ……』
インカムでの通信を終えて、操縦手に話し掛ける。
「操縦手、空飛ぶデブとのガチファイトだ。気合入れろよ!」
「あんなクソデブにリンダが負けるわけねえ。行くぜ!!」
操縦手がアクセルを踏み戦車を走らせる。
そして、俺の乗る戦車とヘビータンクの1対1の戦闘が始まった。
すぴねこ 『ミケ、撃って撃って撃ちまくれ、ビリケン様に攻撃させるな!』
ミケ 『了解!!』
雑魚敵の掃除はチビちゃんに任せて、俺とミケが乗る戦車はヘビータンクに突撃を開始。
ミケの機関銃がヘビータンクを襲うが、相手は空中を横へスライドして攻撃を避けた。
そして、攻撃を避けたヘビータンクの両肩からミサイルが発射される。
すぴねこ 『操縦手!』
「任せろ!!」
戦車は避けずに速度を上げて前進。
ミサイルは戦車の僅か上を通り抜けると、背後の地面が爆発した。
ミケ 『無茶するわね』
すぴねこ 『クレームは操縦手に言え!』
爆煙の中を戦車が履帯をスライドさせてドリフト急ターン。ヘビータンクに向き合うと同時に主砲をぶっ放す。
俺が撃った砲弾は全く違う空の彼方へと飛んで行った。ホームラン!
ミケ 『どこ狙ってるのよ!』
すぴねこ 『間に合わねえから、狙ってねえんだよ!』
飛んでいるハエに輪ゴムを飛ばして当てるのと似ているから、狙っていたらまず当たらない。
ヘビータンクには運頼みの攻撃が一番効果的だと思っている。
まあ、ビリケン様に運で勝てるかと問われれば、相手はご利益の神様だからまず負けるだろう。
ミケ 『左に追い詰めるわ』
すぴねこ 『オーケー、カモン!』
ミケがワザと左へ逃がす様に機銃を撃つと、ヘビータンクは彼女の思惑に引っかかって左へホバーリングして逃げ始めた。
その間に照準を予測したポイントに合わせ、主砲を放つ。
放たれた弾丸を見たヘビータンクは、咄嗟に上昇して攻撃を再び回避した。
すぴねこ 『チョコマカと……』
ヘビータンクから再びミサイルが放たれる。
「あらよっと!!」
操縦手が攻撃を回避。戦車のすぐ横でミサイルが爆発して爆煙を上げた。
この攻撃で戦車にダメージが入る。
ミケ 『ダメージ45%。撃ち返して』
すぴねこ 『残念、装填中』
攻撃の直後で硬直状態の相手を見たミケが叫ぶが、装填中で撃つこと出来ず。
ミケ 『もう!!』
俺の替わりにミケが機銃を発射。
この攻撃は僅かに当たり、ビリケンが距離を置いた。
ボス 『3本目を破壊。残り1本で倒れるぞ』
ヘビータンクと戦っている間に、ボスが巨大蜘蛛の右足の3本目を破壊に成功。
モニターで蜘蛛を見れば、巨大な体を右足1本で支えていて既に移動できない状態だった。
チビちゃん『光った!!』
ボス 『操縦手、爆弾を守れ!!』
蜘蛛からのレーザービームが発射される前にチビちゃんが戦車の中に退避。そして、戦車が移動してトラックの前に進む。
その直後、空に1本の光線が走ると、トラックの身代わりにボス達が乗る戦車が攻撃を受けた。
チビちゃん『キャーー!!』
ボス 『直撃を喰らった、ダメージ80%。履帯損傷、主砲、機関銃共に使用不可だ!』
チビちゃん『生きてるの? 私、まだ、生きてるの?』
ボスとチビちゃんの戦車が大ダメージを負って移動不能に加えて、全ての武器が使用不可。
こちらが反撃できないと見た巨大蜘蛛がとどめを刺そうと、胴体に光を集中し始める。
ねえさん 『待たせたわね』
蜘蛛のレーザービームが放たれる前に、ねえさんとドラが乗る戦車の修理が完了。ねえさんが一言呟き、主砲を発射。
砲弾は巨大蜘蛛の最後の右足間接に命中し、片側の足を全て失った巨大蜘蛛は最後のレーザービームを上空に放ちながら横に倒れた。
チビちゃん『ナイスキル!!』
ボス 『よくやった!』
ねえさん 『何とか間に合ったわ!』
すぴねこ 『こっちの支援も頼む。ビリケン1対1はシンドイ』
ドラ 『応急処理だから、装填に3分掛かるんだな。それまでガンバレーー』
すぴねこ 『だーーっ、クソ!!』
ヘビータンクに4回連続で主砲が外れて、頭を掻きむしる。
巨大蜘蛛は倒したが、ヘビータンクとの戦いは未だ続いていた。
ヘビータンクとの戦いは、こちらが劣勢に立たされていた。
主砲は1度も命中せず、ミケの機銃は命中するけどダメージは微々たるもので、相手はまだまだ余裕を見せていた。
俺達の方は、操縦手が避けて避けて避けまくるからミサイルの直撃は喰らっていないが、それでもミサイル爆撃によるダメージを少しづつ受け続け、戦車の損害率は75%を超えていた。
ミケ 『ビリケン様が攻撃した直後なら僅かな間だけ動きが止まるから、そこを狙うしかないわ』
何度目かのヘビータンクの攻撃を避けた直後、ミケが話し掛けて来た。
すぴねこ 『んなこたぁ分かってる。だけど、この操縦手、腕は確かだけど攻撃されたら全力で回避するから、まともに狙えねえんだよ』
その操縦手は「アベンジャー舐めるな」と叫んでトリップしていた。本当に何か薬でもやってるんじゃねえか?
ミケ 『……分かった。操縦手が回避する前に私が何とかするから、今度は上手に当てて』
すぴねこ 『だから、俺にエイムを期待すんじゃねぇ』
ミケが何をやるつもりかは分からないが、このままだと埒が明かない。次の攻撃は全て任せることにした。
ミケの指示通り、追い駆けていた主砲の旋回を止めて正面に向ける。
ヘビータンクは攻撃しない俺達を訝しむ事なく、ミサイルを2発発射した。
その直後、ミケのインプラントが起動。
ミケは戦車の機関銃ではなく、手持ちのライフルでミサイルに向かってトリガーを引いた。
放たれた弾丸はミサイルのストライカーに2発とも命中し、ミサイルが空中で爆発。
ミケの神技に驚きながらも、爆煙の先に居るヘビータンクに向かって照準を合わせる。
すぴねこ 『美女からの熱いキスだ。ありがたく受け取れ』
煙が風に吹かれて相手が見えると同時に、主砲を発射した。
俺が放った主砲は、攻撃直後で動けないヘビータンクに命中して爆発した。
しかし、ヘビータンクは全身に大ダメージを受けてはいるが、それでもまだ生きていた。
ミケ 『うそ……!?』
ヘビータンクが俺達にミサイルランチャーを構える。
「操縦手、避けろ!」
「残念だが間に合わん。今日は死ぬには良い日だな」
「ざけんな!!」
操縦手は軍服の下に着ている前後ろ逆なシャツを気にして、襟を開いていた。そのネタ、まだ引っ張ってたのか!?
そして、横の補填手は既に諦めたのか、両手を組んで目を閉じていた。祈る前に弾を補填しろ!!
絶体絶命の危機に、一か八かM240機関銃で撃とうとした直後、そのヘビータンクが横からの砲弾を受けて再び爆発した。
ミケ 『……へ?』
すぴねこ 『あれ? まだ撃ってないぞ』
驚く俺達のインカムに、ねえさんの声が入ってきた。
ねえさん 『本当にギリギリだったわね……』
ミケ 『ねえさん!!』
どうやら、ねえさんの戦車の補填が間に合っていたらしい。
俺達と同じ様に敵の動きが止まるのを待っていたねえさんが主砲を発射して、ヘビータンクにトドメの一撃を刺していた。
ボス 『こっちの修理も完了だ。攻撃はできないが、移動はできるぞ』
チビちゃん『ミケちゃん、すぴねこ君、お疲れ様』
すぴねこ 『疲れた……』
ミケ 『本当ね……』
ドラ 『後は敵がもう居ない事を祈るしかねえな』
ねえさん 『ドラ、余計なフラグを建てるのはやめなさい』
ドラ 『へいへい』
チビちゃん『もうボロボロだけど、後はタワーに向かうだけ。皆、パンツァーフォー!!』
『『『『『パンツァーフォー!!』』』』』
元気なチビちゃんの後に俺達も笑って叫ぶ。
そして、戦車とEMP爆弾を積んだトラックは一路、タワーへと向かった。
俺達は倒れた巨大蜘蛛の脇を通り抜け、タワーに到着した。
そして、到着と同時にミッション完了のインフォメーションが流れる。
今回もシークレットミッションを含めてのSランククリアで全員が喜んだ。
「ヘイ!」
俺が安堵のため息を吐いていると、操縦手が話し掛けて来た。
「何だ?」
「結構ヤバかったけど、楽しかったぜ」
そう言ってニヤリと笑うと、俺に向かって手を差し出した。
「……俺も楽しかったぜ、アベンジャーズ。映画に出たら見に行ってやるよ」
操縦手と握手をした後、補填手に向かってサムズアップをすれば、補填手もサムズアップを返してきた。
「じゃあな」
俺は2人に別れを言って戦車から出る。
久々の空気を吸って伸びをした後、ミッションから抜け出した。
結果
クリアタイム 87分11秒
死亡者数 0人
シークレットミッション オールクリア
判定
Sランククリア
報酬
クリアボーナス Sランク 20000D
取得スキルポイント Sランク 5ポイント(MAX)




